にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』を見た!!

『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』を見た!!

 あの『コワすぎ!』が帰ってくるというニュースを知ったとき、もうそりゃ飛び上がらん勢いで私は興奮してしまった。あの『コワすぎ!』の新作!?しかも映画!?『戦慄怪奇ファイル』じゃなくて『戦慄怪奇ワールド』!?飛び込む様々な情報に翻弄されつつも、『コワすぎ』が帰ってくる、そのことがたまらなく嬉しかった。
 2012年に始まった『コワすぎ!』。私はそのファンだった。
 その頃、私は大学生で『ノロイ』や『オカルト』でファンになっていた白石晃士監督の新作がどうやらTSUTAYAでレンタル開始になったらしい、で、それがどうやら面白いらしいとTwitterで流れてきて、早速借りたFile-1の『口裂け女捕獲作戦』の衝撃ったら。
 口裂け女を車で轢き、鉄バットを片手に「どこだー!!」と追いかけ回す、そんなホラーなんて見たこと無かった。
 その後も、シリーズを続けて見ていきFile-4の『真相!トイレの花子さん』ではあまりの面白さに「すげえ~」と頭をかきむしり、劇場版が公開されれば見に行って衝撃を受け、サイン会があれば就活帰りに行き、工藤さん役の大迫さんに「恫喝してくれませんか・・・」と頼み「馬鹿野郎!」と恫喝されて「ありがとうございます~!」と感謝し、最終章では『オカルト』から続く白石ユニバースに涙をし、超コワすぎは蛇女と人間の恋に感動を覚えつつ、エンディングで語られた「コワすぎ音頭」を楽しみに待ってたりしたのだった・・・・・・。
 その間の『カルト』や『ある優しき殺人者の記録』にも夢中になったことを含めて、2012年から2015年の間、大学生から社会人なりたてまでのその期間、『コワすぎ!』を中心とした白石晃士監督作品は私にとって青春だったのでした。



 時が経ち、白石監督もメジャーな作品を手がける監督になりました。
 ファンとしては嬉しいものの、またフェイクドキュメンタリーを手がけてくれないかなあと思っていた矢先の2022年に『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』が公開されました。WOWOWで放送されたドラマ『オカルトの森へようこそ』を再編集したその映画は、まさに白石晃士作品ベスト盤でした。
 投稿映像。キチガイ。霊体ミミズ。なんか強い宇野祥平。なんか強くてイケメンの霊能者。すぐに死ぬ普通の霊能者。妙に強い助監督。怯える白石晃士。と『オカルト』や『カルト』そしてなにより『コワすぎ!』を感じさせる白石作品でした。
 しかし、同時にあまりにベスト盤だったため、もっとその先を見たいと思ったのも事実でした。
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は白石晃士のベスト盤として文句の無い出来です。でも、それ以上のもの、あの頃の白石晃士の先が見たくなるのも勝手ながらファン心理というものでした。

 そこに来ての今回の『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』。私は公開初日にどきどきしながら見に行きました。本当に面白いだろうか・・・と。
 結論から言えば超面白くて、私があの頃愛したものはそのままで、それでいて新しい最新系の『コワすぎ!』がそこにはありました。


『コワすぎ!』の何に夢中になっていたか。『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』にはその全てがありました。
 一見して異常なことが起きている投稿映像。その動画の調査を行うキャラの立ったスタッフ陣(工藤と市川と田代ですね)。そしてその調査の過程で、思いも寄らぬことに巻き込まれていき、事態と映像が共に凄まじいことになっていく・・・!
 この異常に上がっていくテンションこそ、私が夢中になった『コワすぎ!』でした。
 『File4』を見たとき、面白くて頭をかきむしったと言いましたが、『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』でも「ここからはノーカットでお送りします」とテロップが出たとき、その気配を感じて「うわわ!」と嬉しくなり、そこからラストまで上り調子で上がっていくテンションに「面白え!面白え!!面白えよ!!!」とこちらのテンションまで上がったのでした。

 初見はあの「コワすぎ!」が帰ってきたこと。それがあまりに面白い形であったことが嬉しくて、しばらく映画館のロビーのソファーで動けなくなっていました。
 パンフレットのインタビューを読みながら、作品の衝撃を言語化しつつ、それでも見た物があまりに面白かったことを何よりも感謝していました。



 先日、弟が見に行くということで、私も付いていくことにしました。弟は初コワすぎ!どころか、初白石晃士作品です。これが初だなんて、なんていいのだろうと思いました。
 終わったあと、あそこが良かった、ここが良かった。と話し合う内に、『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』が本当に面白くて、本当に良かったなと私は物凄く感動したのでした。 さて、ここまでの感想で面白え!としか言ってないのはネタバレ要素があるからで、またそれが今作はテーマ性と物凄く結びついているというのがあります。
 なので、あまりに面白い作品だというのは伝えることができたと思う。だからあとは見て欲しい。その一点だけです。
 私はネタバレ込みの感想も書いておくべきだと思う。 
 というわけでここからはネタバレ。



 『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』の何に一番感動したかといえば、工藤のけじめの付け方でした。
 工藤は別の世界の自分が性加害を行っていることを知ります。
 そして何より、それは自分自身から生まれる感情だとも言われます。
 前の『コワすぎ!』から8年。前も工藤さんは酷い人間だったけども、8年の月日は、工藤さんをより時代遅れの人間として描く。
 有害な男性性の塊のような工藤さんは映画冒頭では相変わらずどころか何も変わらない。
 だけども、今回の出来事が、他の世界とはいえ「自分の有害な部分」から生まれたと知る。そして屋上で己と対峙した時に、工藤さんはこう言います。
「俺の中から何度も生まれてきても、その度に何度も殺してやるよ!」そう言って、鉄バッドを自分自身に振り下ろします。


 私は33歳男性です。正直なことを言えば、あまり良い状況の人生だなんて言えません。
 人生の状況が良くない男性が加害的になる、それも異性に、ということ山ほどありふれているじゃないですか。
 私自身は抗っているつもりです。けども、20代前半の自分が今思うと異性に対して酷いことを言っていたなと思うように、いつだって酷い自分になることはあるはずなのです。
 私がいつ自分の人生の状況の悪さを、そうじゃないのに、異性のせいにして、加害し始めることだってあるはずなのです。
 だからこそ、私はその「自分」が生まれてこようとも、殺せばいいんだというメッセージにぐっときてしまったのです。
 気に入らねえそんなくそみたいな自分が生まれてこれば、何度も殺せばいい。
 そうやって自分の「邪悪」の部分と向き合えばいいんだと。


 また中盤、ハルカが忌まわしき過去に向かって鉄バットを振るうシーンも私は泣いてしまいました。
 霊能者の鬼村が過去に干渉してはならないと言う中、市川が「やっていい」と言うのに泣いてしまった。
 そんな過去あっていいわけないから。そんな過去、なんて殺してしまった方がいいのです。
『コワすぎ!』を見て「性加害、まじで許せねえ」って気持ちになるなんて思わなかったな。
(『オカルトの森へようこそ』でも性加害は描かれていたのですが、今作の方が直接的にそれと戦う姿勢を見せている上に『オカルトの森へようこそ』はその被害者が怪異に取り込まれてしまうという展開が危うさをはらんでいるとも思いました)

 それにしても、玉緒師匠めっちゃ良くないですか。
 白石晃士作品お得意の強い霊能者の系譜ですけども、今回はギャルヤンキーにしか見えないんだけどもめっちゃ最強の霊能者っていう玉緒師匠。
 もう見ながら「ついていくよ玉緒師匠!!」って私は何度もなった。
 最強だし、柄悪いんだけども、チャームさもめっちゃある玉緒師匠。
 X(旧Twitter)に上がる玉緒師匠ファンアートをついついいいねしちゃう。
 玉緒師匠といえば、第4の壁を超えて観客の私たちに語りかけてくるシーンの良さったら!
 プリキュア映画的(白石晃士監督は『しまじろう』の映画から着想を得たとツイートしていました)な観客巻き込み型スタイルに私はここでも泣いてしまったのを告白したい。
 なんて熱い映画なんだって思ったし、玉緒師匠の思いに応えられるような人間であり続けたいですよね。



 『File4』の手法をさらに推し進めたような、ワンカット風で時間と場所をあちこち飛び回る映像の興奮ったら。
 昼間、走っているバスが気がついたら夜の廃墟の前へ。
 夜の廃墟にいたと思ったら、昼間の別建物へ。
 そして地下へ、夜へ、昼へ、過去へ、別世界へ。と次々と飛んでいく。
 無限回廊のような階段、無限回廊のような廊下。
 だいたいここでカット切り替わっているんだろうなと思うけども、あまりにスムーズだし、テンションが切れないし、だいたいどうやってこの数の時空の切り替わりを撮ったんだと思う。
 終盤なんて、無限に続くかのような廃墟を走っているだけといえば、そうなんだけども、私たちにはそれが異界にちゃんと見えている。
 それが凄いと思うし、異界に見えるその廃墟を走っているシーンってのがとにかく面白いと思ってしまう。
 だってよくよく考えたら人が走っているだけなんですよ。
 けども、物凄い映画としての興奮がそこにはある。
 ゴダールは「男と女と車と拳銃があれば映画が作れる」って言ったとか言ってないとか。
 けども白石晃士は「廃墟と役者とカメラがあればマルチバースを飛び回るホラーが撮れる」んですよ。これはめっちゃ凄いことじゃないですか。
 二回目見ているときは、廃墟を走り回るその映像に私は泣いていました。
 なんて面白いんだ。なんてこんな限定的な映像に面白いんだろうって。



 夏に『ちゃん呪』っていう短編小説を書きました。

gachahori.hatenadiary.jp


 それは『コワすぎFile4』の影響受けまくった小説でした。
 とにかくあの、ワンカットであちこちに飛び回る感覚を文章に落とし込めないかと思い、書いた物でした。
 けども『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』を見たら、本家はやっぱ段違いだな!って呆然としちゃった。悔しくもあったけども、やるならこれくらいやるんだ!という強さを見せつけられた気もします。



 白石監督いわく「コワすぎ!はこれが最終作」とのこと(とはいえ映画の興行収入がよければ続編あるかもとも言ってましたが、映画作るのって難しいだろうからリップサービスだと思っておきます・・・。)
 私にとって『コワすぎ!』は青春でした。
『コワすぎ!』の最新作かつ最終作はあの頃と同じくらい、いやそれ以上に楽しく、面白く、でもそれ以上に大人になった作品でした。
 私もそんな『コワすぎ!』の背中を追うように、生きて行けたらいいなと、ちょっと思ったりしたのでした。



 にしても、玉緒師匠の魔法のステッキ的なものが鉄パイプだったの、本当良かった。
 書ける気がしないからあれだけど、玉緒師匠二次創作はめっちゃ読みたい。
 玉緒師匠が色んな怪異と戦う話が読みてえ・・・・・・。


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