にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

短編小説『隣の住人』

 二階建てのアパートの二階に住んでるのに天井からどすどす聞こえるから超怖え。おばけかなって思ってたら、どうやら隣の住人の足音が響いていて、天井から鳴っているように聞こえているみたいだった。

 なんだーと生きてる人間か、ほな安心やわー思ったけども、いや隣の住人の足音かい、お前がうるさいんかい、と怒りが込み上げてくる。

それにやっぱ、普通に生活しているだけで、隣の住人の足音がどすどすどすどすと絶えず響いているのは、なんていうか、心が落ち着かない。

 どすどすどすどす、と足音が聴こえてくる。それは私がご飯を晩ご飯を食べている時、食べ終わってお皿を台所に置きに行った時、それからテレビだったりスマホを見ている時、そんで寝ようとしてる時もどすどす聞こえていてうるさいなーと思う。

 それが毎日、毎日続く。

 で、ようやく気がついたんだけども、隣の住人ってどうやらずっと歩き回っているみたいなのだ。

 部屋の中をずっとずっと歩き回っている。

 じっとせず、立ち止まりもせず。

 どすどすどすどす、足音を立てて。

 うわ、やばって思い、私は引っ越したいと思うけども、仕事が忙しく当分はそんな準備もできそうにない。

 だから、仕事が落ち着くまでは私の足音が隣の住人に聞こえないようにそーっと静かに生活する様に心がける。

 隣の住人の足音がこれだけ聞こえるってことは、私の足音も隣の住人に届いているかもしれないし。私の生活音がきっかけで、隣の住人の感情を刺激してしまうかもしれないし。

 だから私は家に帰るとドアの鍵をちゃんと閉め、チェーンをかかっていることを確認する。どすどすどすどす。そしてそーっと生活をする。どすどすどすどす。テレビも大きな音では見ない。どすどすどすどす。イヤホンをつけたり、字幕をつけたりして見る。どすどすどすどす。スマホも勿論で、マナーモードつけたままだし、こっちはこっちでイヤホンを挿している。どすどすどすどす。

 寝る前にはもう一度、ドアのロックとチェーンを確認する。どすどすどすどす。眠るためにベッドに入り、どすどすどすどすと響く音を遮断するため、私は耳栓をつけて目をつむり、早くここから引っ越さないと、と思いながら寝る。毎日、毎日。どすどすどすどす。

 

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