にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

虚構日記 2020年8月31日

虚構日記 2020年8月31日

3年半使っていた携帯電話が使い物にならなくなってきた。
私が使っている携帯電話は当時としては最新機種であった肩からベルトでぶら下げて、受話器をとって「もしもし」なんて言えるモデルである。
それを使ってSNSソーシャル・ネットワーク・サーヴィス)を使いまくっていたのだ。
Twitterに書き込むときは受話器を耳に当てて、マイクに向かってその都度、呟いていた。
難しいのがアドレスを送付してつぶやくときだ。いちいちアドレスを間違えないように呟くのは骨が折れた。
画像を添付するときは、画像を2400分割して、一行ごと色の配列をその都度呟いてた。
そうやって私はTwitterと向き合ってきたのだった。
しかし、ここ一年くらいは携帯電話は熱を放出するようになってきた。
冬ならば暖房として使うことができるが、夏になるとそれは殺人的な暑さになってしまう。
その上、数年に渡り肩からぶら下げていたせいもあって、私は左と右の肩のいちがずれてしまっていた。
常に身体を斜めに歪ませながら生活をし続けているうちに、平衡感覚を失い、そして気分が悪くなって横になる日々ばかりになっている。


しかしそんな日々ももう終わりである。なんせ携帯電話を機種変更するのだから。
私は携帯ショップに行き、機種変更の旨を伝えた。
店員は鉄製のドアを開くと、薄ぼんやりとした廊下を進んでいった。店員の姿は暗闇に包まれて、それから見えなくなった。
足音もしばらくは聞こえていたが、暗闇が思ったよりも深くてその音もマットにボールを落としたような音に変わっていき、そして聞こえなくなった。
半時間ほど経つと店員が戻ってきた。
店員の手には黒い物体があった。テープだった。
私はTシャツをまくりあげて腰にあるテープ挿入口を外気に触れさせた。
「失礼しますね」と店員が私のリジェクトボタンを押して、テープ挿入口からこれまで使っていたテープが吐き出された。
そのテープには「エンヤベスト」と書かれていた。
次に入るテープはなんですか?と聞くと「ストップ・メイキング・センスです」と言われた。


テープを入れ替えて、そして携帯電話をまた肩からぶら下げた。
「ありがとうございました」と店員の声が背後から聞こえた。
帰りに鶏のもも肉を買った。
明日はクリームシチューを作る予定だ。