にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

布団に寝転びながら、SAKEROCK聞いては、むふむふ。

二万歩も歩いたら一日寝込んでしまったので、家族から「二万歩も歩いたらだめ」って怒られてしまい、わかりました、ちゃんと自制するよ、って言って一万二千歩でとどめたけどもしんどくなって、帰ってご飯を食べてすぐに寝てしまった。

相変わらず体力の限界値を把握していない説があるし、限界かもしれないって思いつつ、行動しなきゃ、と突き動かされている気もする。実際、歩かないと太っちゃうとか、病気も悪くなりそうとか、実際に起きてしまう不具合もあって、行動しなきゃいけない、って強い衝動に巻き込まれてるわけです。

それで、寝て、夜中に起きたら『SAKEROCKがサブスク解禁』ってニュースが流れて、あまりに嬉しくて私は布団に横になりながら好きなSAKEROCKの楽曲を聴きあさった。

高校ニ年の時に、なんか良さそうって思って、梅田のタワーレコードで『songs of instrumental』を、お小遣いの中から買って、聞いて、ありゃこれはめっちゃええやんか、ってなってそれからずっと好きだったわけですが、解散から6年経って、サブスクでいつでも聴けるようになるのはとても嬉しい。

CDも解散ライブのBlu-rayも家にあるけども、あ、今聞きたいって瞬間に、サブスクだと聴ける、それって本当嬉しい、めっちゃ嬉しい。

ってことを布団の中でずっと思っていました。布団の中で寝ながらずっと思ってました。

それで私が一番好きなSAKEROCKの曲は『ラディカル・ホリデー』です。『ラディカル・ホリデー』を聞いて、SAKEROCKを好きになったので、初めて見たのを親と思う雛鳥の如く、私は『ラディカル・ホリデー』を親と思ってる。

解散ライブの『ARIGATO!』では『ラディカル・ホリデー』が演奏された際、終盤のブレイクで感極まった観客が両腕を天に突き上げるカットが入るんですけども、それを見た時に「わかるやんか」って思ったよ。ほんまに思ったよ。

ってことを思い出したり、しつつ、前に好きだった曲も聞いたり、改めて聞いて「これいい曲やなー」って気がついたりしてる。

そういうわけで、SAKEROCKのサブスク解禁がとても嬉しくて、横になりながら、聴きながら、むふむふ〜と喜んでいました。

それにしても『千のナイフ妖怪道中記』はめっちゃかっこいいですね。人力マッシュアップの極北だよ。

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ヘッドスパが上手なイイダさん

日曜日に図書館に行ったってだけで、二万歩も歩いてしまったからだと思うけども、一日寝てしまったのよ。ぐでーんと、もう、寝続けていました。

とはいえ、二万歩歩いてないときも、めっちゃ寝ちゃう日がある。よく書いたり言ってるけども、過眠気味で、過眠の基準は10時間以上寝ちゃうってことらしいんすけど、10時間以上どころか、12時間、15時間、17時間くらい寝続けてしまうこともある。

なんやこれ、って数年単位で悩んでるわけですけども、図書館に行って精神疾患的なものに関する本をペラペラと見ていたら「非定型うつ病にはそういった症状が出るよ〜」って書いてあって、なるほどねえ〜と思う。

とはいえ、非定型うつ病の本を読むのをなんとなく怖かったりした。それこそ、この病名とあうか、言葉は「新型うつ」として最初出回りはじめて、その列挙されてる症状について「なまけているだけじゃん」とか「弱いだけ」とか「詐病」って言葉が投げかけられていて、私はその時の印象が未だに強くて、なんか怖いなあって思ってしまう。

5年もこういった精神疾患に悩んでいて、発達障害も入れると人生単位で悩んではいることですけども、なんとなく「詐病」とか「アピール」みたいなことを思われてるんじゃないか?って不安がいつもつきまとっているような気がしてるわけです。

変な話ですけども病気だということに自信がない。とはいえ、ちゃんとあかんから、これくらい長引いてるし、私も私自身を5年近く騙せるほど上手い人間じゃないですし。

でも、どこかで全員が全員納得するような状態じゃないとだめなんじゃないかって恐怖があったりして、それはやっかいな思い込みねって思ったりする。思い込みだけじゃなく、たまにそう言った考えの人に出くわして、めちゃくちゃなことを言われて、そして私はまたその思い込みを強くしたり、っていうあかんループに入ったり。

あかん感じの文章になっている。どよんとした感情が満ちているやんか。

図書館でそういった精神疾患の本をちゃんと探そうって思ったのは荻上チキさんからの影響で荻上チキさんもうつ病だそうで、かなりやばかった頃にそういう本をたくさん読んで、そうすることで治癒したっていう、読書療法を試したって言っていたので、それを真似してみようと思ったからです。

私が荻上チキさんの影響を受けるのは二度目で、一度目は荻上チキさんがラジオで話しているのがきっかけで「スプラトゥーン2」を始めました。

弟がスプラトゥーン2を持っていたので、最近ちょっとずつやってる。イイダってキャラがいるんだけども、母が通ってる美容院にはイイダに似た人がいるらしく、そのイイダは「ヘッドスパ」がめっちゃ上手いんだって。へーって思った。

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徒歩二駅図書館。

駅前に図書館ができたんですよ。駅前って言っても、二駅先の駅前なんですけども。でも駅前に図書館あるのって、めっちゃ最高じゃないっすか、そんで新しい図書館って気になるじゃないっすか。ってわけで、行ってきたんですよ。二駅分、歩いて。徒歩で行ってきました。二駅って歩くと一時間半かかるんですね。でも、これって駅によって距離違うから、あんまりあてにならない言葉ですよね。二駅が30分もあれば、二駅が二時間ってこともあるだろうし。とりあえずその図書館がある駅までは一時間半かかったんですよ。一時間半歩くと、いくら涼しくなってきたって言っても汗かいちゃうね。汗をかくと自分がとても汚い存在になったようでとても嫌なんだけども、そうなると年中汗かいてるから、私は年中自分のことを汚い存在だって思ってるみたいで、実際そうなんだけども、そういうところに認知の歪みとか、自尊心の低さを見出してしまいますね。

 

 

その駅前の図書館は、商業ビルの途中の階にあって、下のフロアは婦人服売り場で、上の階は多分塾かジムだったと思う。その間に図書館。

もし仮に上のフロアがジムだったらバーベルをあげたあとに本を借りるのもできるからいいよね。でもジムかどうか覚えたいない。チラッとフロアマップを見たのを思い出そうとしてるけども、すでに朧げな記憶だからねえ。よく全てを覚えているっていう、全てを画像で覚えてるって人の話ってでるじゃないですか、サヴァン症候群でしたっけ、それって全部を覚えちゃうんだろうか。全部だったら苦しいですよね。嫌な瞬間もはっきりとくっきりと画像で覚えていたら最悪だろうなって思う。そうでなくても、結構過去の嫌な瞬間をフラッシュバック、ブラバっちゃうから、嫌だなあって思ってる。

それで図書館は凄く綺麗だった。雰囲気もよくて、蔵書も多くて、座る場所も多くて、そんで駅前で。いろんな意味で理想的な図書館だった。

前に見たドキュメンタリー映画ニューヨーク市立図書館』を思い出した。ニューヨークの図書館じゃんって思ったし、それを弟に言った。「もはやニューヨークだったよ」って言ったら「それは違うよ」っていなされたんだけども。

で、一時間半歩いて図書館に行って、疲れてるはずなんだけども、あまりの蔵書に興奮しちゃって、そこから二時間以上また歩き回って本を探し回った。読みたかった本、知らなかった本、知らなくて読みたいなって思った本、今の自分に役立ちそうな本、役に立たないけども絶対に読みたい本、とにかく私は本しかないその空間に簡単に溺れてしまって、あぶぶぶぶ、と本の海で溺死死体でした。

 

 

で、結局、5冊借りまして、リュックの中に入れたら、結構重たくなってしまって、うわ肩が痛い痛いって思ったんですけども、また二駅を歩いて帰ってしまった。なんかそれをしなきゃいけないって思い込むと変更ができなくて困ってしまう。不合理な方を優先してしまう。

また二駅分を歩いて、お昼ご飯も食べてなかったから、すげー腹も減ってて、なんか食べなきゃって思うんだけども、家を出る前に見たすき家のCMで「豚丼はじめたよー」って言ってて、それが食べたくてひたすらすき家まで歩いてしまった。もう異常じゃん。全然、取捨選択できてないじゃん。結局、二駅先のすき家に入って「豚丼」を食べておいしかったです〜ってなって、ぼちぼちと家に帰った。六時間くらい外に出てたんだけども、すき家にいた時以外、ずっと立ってたから、めっちゃ疲れてて、すぐに寝てしまった。気がついたら21時で、弟が作ってくれたカレーを食べました。とてもおいしかったです。

 

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平山夢明『異常快楽殺人』を読んだ!

平山夢明『異常快楽殺人』を読みました。


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もう二度と読み返したくない本です。
エドワード・ゲイン、アルバート・フィッシュ、ヘンリー・リー・ルーカス、アーサー・シャウクロス、アンドレイ・チカチロ、ジョン・ウェイン・ゲーシー、ジェフリー・ダーマー。
名前を聞いただけでも震え上がる人もいるでしょう。本書にも描かれているようにこれら7人が行ったことの恐ろしさ、おぞましさはここには書けないほどです。
私も読みながら、いくつかの文章は「情報」として受け取ることしかできませんでした。この状況を「想像」してしまうと心に大きなダメージを負ってしまう。そう感じてしまうほど、凄惨で残酷な場面がいくつもあります。
これら7人の殺人鬼による残忍で残酷な犯行の数々が詳細に至るまで書き記されています。一切の容赦もなく。その場に作者がいたかのような筆致で。
エド・ゲインが死体で家具を作っていたという話は知っていました。『サイコ』や『悪魔のいけにえ』のモデルにもなったことも。
でも"どんな家具"を作っていたか、もっと言うならば"人の身体をどんな風に解体し、どう加工をして、それを家具等にしていたか?”
この本にはそれが詳細に描かれています。そしてそれを知ることは、もう知らなかった過去には戻れないほど恐ろしいことなのです。


何度も、読むのをストップし、数日かけて読み終えた頃には体力ががっつりと持っていかれて、少しばかり寝込んでしまいました。
人はここまで残酷になれるのかと思うのと同時に今まで「残酷」だと思っていたことは、そこが終着点ではなかったこと。もっと恐ろしいものがこの世にはあるのだ。そして人はそこまでなってしまうのだ。文字通り、鬼と呼ばれるものに。
しかしそれでも、殺人鬼と呼ばれる鬼は何もないところから生まれたわけではない、ってことをこの本を読んで強く思うのです。
この本に出てくる7人は全員が漏れなく幼年期に虐待を受けていたことや、もしくはひどい環境に置かれていたことが書かれています。
300人を殺したと言われるヘンリー・リー・ルーカスは幼少期から青年期に至るまで母親の酷い虐待を受けていました。
その虐待による心の傷は、実の母親に手をかけるだけではなく、関係のない人にまで向けられることになります。
親や環境への恨みや痛みを世界に復讐しようとするのです。

また世界そのものが、一人の人間の心を破壊することも何度も書かれています。
アーサー・シャウクロスはベトナム戦争が彼の殺人鬼としての才能を開花させてしまい、そして帰還後はその開花した才能と衝動をコントロールできなかったことが書かれています。
世界や社会が一人の人間を鬼に変容させることもあるのです。
旧ソ連下での連続殺人鬼であったアンドレイ・チカチロは社会情勢やコミュニティに養育、そしてコンプレックスが合わさり、一人の男の中に異常なものが徐々に徐々に育まれていったことが描かれています。
読むにつけ「どこかで回避することはできなかったのか?」と何度も思います。どこかで鬼に変容することのないタイミングはあったのではないかと。
この本にはそのタイミングが見つからず、殺人を犯し、殺人を重ね、殺人に溺れていった人々の姿が記録されています。
読むのもおぞましいですが、だからこそ、この本は重要だと思われます。
人を殺さないために、人を殺すものを生みださないために、そして人を救うために。

著者平山夢明はあとがきでこのように書いています。

そして、国内外の重要な資料を発表された人々にも同様の敬意を表したい。起きてしまった犯罪に対してわれわれは無力かもしれないが、未来の犯罪についてはなすべき方法はあるはずであり、その際、もっとも有効に働かせる武器が"知識"であると信ずる。彼らは、そのために貴重な教科書を血の滲むような努力の末に、世の中に押し出したのだ。


もう二度と読み返したくない本です。ですが、この本に書かれたこと、それがいくら正視に耐えなくとも、我々は見なければいけない、知らなければいけない、我々人間のある種の姿を記録したものです。それを知ることはいくら辛くとも大事なことです。ましては知ることが辛いからと言って無いものとするのは断じて違います。
二度と読み返したくありません。しかし、また読まねばならないときもくる。何度も読まねばならないかもしれない。
恐ろしくおぞましいからこそ、読まれなければいけない、そして読んでよかった名著だと思いました。

マーク・ウィーデンバウム『エイフェックス・ツイン、自分だけのチルアウト・ルーム――セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』を読んだ!

マーク・ウィーデンバウム『エイフェックス・ツイン、自分だけのチルアウト・ルーム―セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』を読んだ!



タイトルが示す通り、エイフェックス・ツインが1994年に発表したアルバム『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』についての本です。
『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』の本と聞けば、おおっと前のめりになる人も多くいるでしょう。
エイフェックス・ツインが1994年に発表した、とても奇妙で、形容し難く、そして心地の良い音楽。
私自身とても好きな音楽であり、それでいて「全てを聞いたことがない」アルバムです。
というのも聞いているといつも眠ってしまうのです。
それは初めて聞いた10代の頃もそうでしたし、31歳になった今もそうです。
むしろ、最近では眠る前にこのアルバムをApplemusicで再生します。いつも3曲目で、無題と呼ばれたり、#3と呼ばれたり、もしくは"Rhubarb"と呼ばれたりするその曲で眠りに落ちてしまいます。
昔、2ちゃんねるエイフェックス・ツインのスレッドにかかれていたことをふと思い出してしまいます。
不眠症の友人がセレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2を聞きながらだったら眠れるって言ってた」
そんなことを私は遠い昔に目にしたなと思いながら眠ります。


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マーク・ウィーデンバウムさんが書いたこの『『エイフェックス・ツイン、自分だけのチルアウト・ルーム』という本はエイフェックス・ツインの『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』についての本です。
しかしエイフェックス・ツインがいかにしてこのアルバムを作り上げたか?という本ではありません。
そういうメイキング的な本ではないです。
一応、エイフェックス・ツインがこれらの音楽を明晰夢に頼りながら作っていった……という逸話が出てきますが、その逸話程度で、その逸話も『ニューロマンサー』のウィリアム・ギブスン明晰夢を頼りに物語を描いているということに接続されていきます。
その他、エイフェックス・ツインについてまわる、伝説や噂についての本でもありません。
アメリカでのレーベル契約時の話や、周囲にいた人の話も出てくるのですが、そこについての本ではありません。
ではなんの本かと言えば『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』じゃないかなと思います。
この本の原題も『Selected Ambient Works Volume II』です。
そして本の冒頭では「セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2にはヴォリューム1が存在しない」という話から始まります。『セレクテッド・アンビエント・ワークス85-92』はあれども、ヴォリューム1と呼ばれるアルバムはない。
この本はそこから始まります。
そしてこの本はこの『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』についての全てをなるべく書き記そうとしているのです。
このアルバムがいかにして聞かれていったかを「ビートに欠けた」という言葉から辿っていきます。
多くの評論家やカタログで「ビートに欠けた(beatless)」とこの音楽を形容していたこと。そしてそのようなアルバムだということを聞いたことのないリスナーに宣伝していたこと。SNSSpotifyyoutubeもなく、インターネットよりもまだワールド・ワイド・ウェブだと呼ばれていた時代、音楽が容易に聞くことができない時代でリスナーに想像をさせる言葉として使われていたこと。
現在、映画音楽としてアンビエント音楽的なものが増えていること。それらはアンダースコアリングとよばれていて、当時でいう「ビートレス」な音楽だということ。ビートレスだと言われていた「セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2」にビートを見出す人々が現れたこと。
アンビエント音楽の始祖であるブライアン・イーノのこと。事故に会い入院中、やっと思いでレコードを流したこと。そのレコードの音が小さく周りの環境音に混じって聞こえたこと。その経験からアンビエントミュージックのアイデアを思いついたこと。
それから後にレイヴの会場で何時間も踊り続けた人々が疲れた身体を癒やすための部屋で「チルアウト」と呼ばれる音楽が流れていたこと。治癒中に生まれた音楽のアイデアが実際に人々の治癒に使われていったこと。
エイフェックス・ツインが『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』の前に発表した楽曲が「ON」で、当初はそれが次のアルバムの先行曲だと思われていたこと。そうじゃなくて、人々を騒然とさせたこと。
『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』は一曲を除き全てのタイトルが無題(untitled)なこと。無題なはずなのに、多くの人が呼ぶ曲名が存在していること。その曲名がもともとオフィシャルなものではなかったこと。その曲名をつけた人物はレーベル「ワープ」のディスコグラフィを自分のためにまとめている作業をしていた当時大学生だったこと。曲名もリサーチなど特にせず、ブックレットの写真を見て直感的につけたものであること。後にその大学生は10年ほどワープで働いていたこと。勝手に名前をつけるという行為は今に始まったことではなく、クラシックの音楽がそのままでは呼びづらいために「月光」や「悲愴」と呼ばれたり、ビートルズのアルバムが「ホワイトアルバム」と呼ばれていったこと。
データベース化する中で、無題では登録できず「#1」といった通名がつけられていったこと。
エイフェックス・ツインの音楽をクラシックに置き換える作業のこと。エイフェックス・ツインとクラシック業界の交流のこと。
『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』の楽曲を用いた映画のこと。映画の中で流れるその音楽の役割のこと。
『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』の楽曲で踊った人々のこと。振り付けと音楽の関係性のこと。
そして『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム3』のこと。

この本は『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』についての、その音楽とその周辺についての、そして人々の中で、どのように流れ、どのように聞かれたかについて、書かれた本です。
つまりはある部分の歴史を『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』から切り取った一冊とも言えます。
そしてそういった歴史は忘れ去られてしまう。その空気や、その気配、その感情を。
大きな歴史からは見えないけども、残されるべき歴史です。これもまた。



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この本が書かれたのは2014年の頃。ヴォリューム1が存在しないように今はまだ『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム3』は存在していない。しかし多くの未発表音源があるのではないか。もしかしたら匿名の人物として発表しているのではないか?と作者は思索に及んだりしています。その同じ年の9月にエイフェックス・ツインは13年ぶりとなるアルバム『syro』を発表します。
そしてその翌年2015年の初めにはsoundcloudでuser18081971というユーザーが100曲以上の音楽を投稿します。
もうお察しの通り、そのユーザーはエイフェックス・ツインだったわけで、彼は最終的に200曲以上soundcloud上にアップしたと言われています。
存在しなかったはずのセレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム3は存在するようになりました。
それはyoutube上に、そしてアンオフィシャルにですが。
ファンはその中から、アンビエント的な楽曲を見つけて、その200曲以上もの未発表音源からなかったはずのセレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム3を作り出したのです。セレクテッドをしているのがエイフェックス・ツインか、1ファンかという大きな違いはあれども、なかったヴォリューム3はもう存在しているのです。


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ブライアン・イーノが入院中、思いついたアンビエントミュージックというアイデア。それが1994年、2枚組の奇妙な音楽として発表されました。その背景にはレイブの中で、踊り疲れた身体を癒やすチルアウトミュージックだけが流れるチルアウトルームがありました。
Applemusicには音楽のジャンル一覧に「チル」があります。踊り疲れていなくても、日常の中で疲れていく心や身体を、人々は音で治癒したいと思うのかもしれません。
私はこのアルバムを聞くたびに眠ってしまうといいました。だから全部はわかっていない。サブスクで二枚組のCDを入れ替えずに、延々とつなぎ目もなく流すこともリピートすることも可能になりました。だからこそ無題で、分け目のない、その音楽は空気のように漂い続けるのです。
『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』は今もなおどこかのベッドルームで流れているのです。