にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

『聖なる地獄』を観た!

27歳男性になってしまった。

先日、誕生日を迎え私は27歳男性になってしまった。
もうおじさんな歳になっている。
私の父親は27歳で結婚したそうだ。
私にそんな予定はない。
そして、私は現在どうやら適応障害らしく(前回心の風邪って書いたけども、抑鬱状態なだけで鬱病まではまだなってなかったみたいです。まだよかった。よかった)会社に行くことができず今は日々をぼんやりと過ごしています。
そんな27歳になってしまいました。

 


自分のこともままならない27歳男性だけども、世界のことをもっと知りたいと思い、最近はNetflixでドキュメンタリーを見るようにしている。
ちょっとでも世界のいろんな顔が見たくて、見始めました。
今回見たのは「聖なる地獄」というドキュメンタリー映画

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なんとニュースで有名なCNNが製作。監督はウィル・アレン。プロデューサーの1人には俳優のジャレッド・レトも参加しています。

これがちょっと想像以上にハードパンチャーで面白い映画だったので感想を書きたい。

まずこれがどういうドキュメンタリーなのかと言いますと、ブッダフィールドというカルト教団の22年の繁栄と崩壊の話なんですね。
で、監督のウィル・アレンさんはこの教団での映像担当だったのです。
なのでこのドキュメンタリーの大半の映像はこのウィル・アレンさんが撮影した映像になっています。
それと同時並行でこの教団に元いた人々のインタビューも差し込まれていきます。

みんな始まった頃のことを話すのはとても楽しそうなんですね。
森の中でダンスをしたり、海に入ったり、歌ったり。
1人がこう言います。「カルトはカルトかもしれないけども、これはいいカルトだよね」と。
この教団の中心になる教祖がいます。
彼は圧倒的なカリスマ性と心理療法を用いたセラピーで人気を博していきます。
当初は小さなコミュニティであったこのブッダフィールドも徐々に大きくなっていきます。
そのうち、仲間内だけの楽しい楽しい共同生活の場であったはずのこの教団は、この教祖の強固な帝国に変わっていくのです。

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途中、この教祖の正体が売れなかった元俳優だということが判明します。
その演技のワークショップを用いて洗脳を行っていたことも。
彼はかつての世間に認められなかったことをコンプレックスとして根に持ち続けているのか、それとも自分もあがめるものだけで構成されるこの教団という帝国を強大なものにするのか、真意のほどはわかりませんが、教団は徐々に暴走していきます。

当初からいた皆も「はじめは皆で楽しむ場所であったのに、いつから彼を崇拝する場になってしまったのか?」と疑問に思う。
しかし、もうそのときには十数年経っていた。
彼らは家族を捨て、これまでの生活を捨て、そして社会を捨て、この教団に入ってしまっている。
そして今の彼らにとってはその教団こそが居場所であり、そして家族であるので、おかしいと思いつつも抜け出すことができない。
そんな中、1通のメールがすべてを変えることになったのです。

 

とまあ、こんなつたない説明でそそられた人がいるのかわかんないけども、ここから本編は怒濤の展開になるので、未見かつNetflix加入者はぜひ見てほしい。
そして私はこの後、ネタバレをするので、注意してほしい。

 

ネタバレありの感想。

そのメールの内容というのは教祖が男性信者に性的暴行を行っていたというものであった。
そしてそれは1人、2人のみならず多くの男性信者が彼にセラピーと称した性的暴行を行われていた。
そう、この映画の監督であるウィル・アレン氏も性的暴行を受けた1人であった。
このことが発覚し、教団は崩壊に向かう。
教祖はそれでも残留する取り巻きを連れてハワイへ行った。
それをウィル・アレン監督はついて行く。しかしその場所こそ、教祖が監督に性的暴行を行った初めての地であった。
ハワイについた後、ウィル・アレン監督は教祖に何も言わず離れる。
そうして彼は教団から姿を消した。
ブッダフィールドに入ってから22年の年月が経っていた。


もうここまでで、僕は胸が痛くて仕方なかった。
ずっと見ていたこれまでの映像はどんな気持ちで撮られていたのか?
この映像をどんな気持ちで編集したのか?
それは見たくない傷口をもう一度自らこじ開けるように作られていたこの映画に対して背筋が凍る思いだった。
しかし、まだ映画は終わらない。
監督は現在の教祖に会いに行く。
教祖はハワイで新たな教団を作ったのだった。
そしてその教団には100人あまりの人が入団していることを知る。
そこにはブッダフィールド時代からの信者の姿もいた。

監督は隠しカメラをつけて、砂浜にいる教祖に会いに行く。
現在の教祖の姿だ。
教祖はナルシズムに満ちた男だった。
ブッダフィールドの頃から、多くの化粧品を使っていること、そして整形をしていることが判明していた。
現在の姿は整形で顔はまだ若いままだが、全身は老いのためよぼよぼになっている。老人なのに顔のパーツだけが若く、それはひどくおぞましいものに見えた。

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この映画の最後は、ブッダフィールドから監督が抜ける前に作った短編映画で終わる。
その映画には多くの当時の信者が映る。
そして彼ら1人1人映るたびに字幕が入る。

「脱退」

そして

「残留」

エンドクレジットではインタビューに答えてくれた元信者たちの今何をしているかが語られる。
全く異なる仕事をしているものもいれば、その教団時代に培った知識やスキルを仕事に生かしているものもいる。
彼らは言う「あの頃が懐かしいと思うこともある」と。
森の中でのダンスする映像が差し込まれる。
それは桃源郷のように見える。
しかしその後で脱退した元信者は泣きながら言う
「あの頃にも意味はあったんだ。そう、意味があったんだ。そう考えている」
そう思うしかないと、言い聞かせるように。

 

人は何かにすがりつかないと生きていけない。
これは宗教のみならず、ある種共同体や居場所も含む。
そのすがりついている居場所が狂っていることに気がついた時、抜け出すことができるだろうか。
22年かかってしまった彼らを私は笑うことはできない。そして今も「残留」し続けるものもことも。
私の心は強くない。
もし人心掌握術に長けたものが私を狙ったら一発でおしまいだと思う。
だからこそ、逃げていたいと思う。
人生を失う前に。
心が傷つけられる前に。