にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

『きみの色』の感想

『きみの色』の感想。

 

 

以下はなんの推敲もせずに、ただ感情の赴くままに書き殴った感想です。

ただ映画を見て思ったことを忘れる前に書きたかった。

もしかしたらちゃんと書くかもしれないけども、それもしないかもしれない。

とにかくただ書きたかった。

この繊細な映画に向き合いたかった。

 

 

・あまりにも禁欲的な作品だとまずは思った。

・直前の予告、岡田麿里脚本の映画が、人間関係の軋轢をもう既に描きまくっていたのに対して『きみの色』は一切そういうものがない。

・あるとすれば「嘘をついている」という状況。

・一種のサスペンス的にもなるけども、そこすら盛り上げすぎない。

・こうすれば面白くなる!みたいな本が山ほどあるけども、そういう作品ではなく、ひたすらドラマを作らないようにしている。

・そういう葛藤だとか、わかりやすい成長だとか、そういうのを外れて、感受性豊かな女の子を中心として、少し傷ついた女の子と、友達のいない男の子がバンドを組む話だ。

・廃教会でバンドの練習をする。

・そのエピソードで思い出したのはアーケイド・ファイアのことだった。

・いつかのアルバムを制作する時(1stか2ndだった気がする)教会で製作をしたというのを聴いた。

・その音楽の記憶が接続して、廃教会でテルミンが鳴り響く(このシーンの細やかな動きの作画よ!)

・その時点でこの映画が目指す音楽が聴こえる。

・『けいおん!』とも『ぼっち・ざ・ろっく!』とも違う音楽。

・上手く説明できないけども、その音楽の香りがする。

・音楽の映画だった。

・改めて音楽ってのはなんだろうと思う。

・すごく恥ずかしいことを書くと、音楽は魔法なのだと思う。

・録音音楽が主流となって何十年。いまや、スマホで数タッチで、何万曲の音楽にアクセスできる。

・大好きな曲。大好きな曲はあるけども、そのアルバムは聞いたことないとか。

・生まれてない時代だけども、とにかくかっこいい曲。

・それを私はイヤホンを通して聴く。いつ、どこで、どれだけの苦労をして作られたかはわからない音楽。

・その音楽に私は高揚感を覚える。

・何にもない日々に彩りを与える。

・そんなことをアジカンも歌ってた気がする。

・大袈裟なことを言えば、私は、何にもない日々を音楽に救われてきたのだ。

・多分、製作陣も、何にもない日々を音楽に救われてきたんじゃないだろうか。

・それはクライマックスの高揚感につながる。

・音楽が鳴って、なんでもない日が祝祭になって、私たちは踊る。

・身体を社会的役割から解き放つ。

・音楽はその力がある。

 


・けれども、音楽が鳴っていないその瞬間、なんでもない日々でも、世界は決して色がないわけではない。

・世界は絶えず美しい。

・気がついていないだけで、世界は美しいものに満ちている。

・どれだけ、それを知らなくても、どれだけ傷ついていようと世界は美しいものに満ちている。

・それは私たちの身体の動き。

・はしゃぐ私たちの身体の動き。

・降り注ぐ光。その中を飛び回る虫の動き。

・世界は色に溢れている。

・トツ子は、色を見ることができる。むしろ世界を色で見ている。

・つまりは共感覚ということなんだろうけども、そこを強く掘り下げることはない。

・「共感覚」と定義づけることはなく、そのトツ子は、そう見えているとの距離感。

・青色に見える女の子がいる。

・きみちゃん。それはとても素敵な色で追いかけてしまう。

・どうしても目で追いかけてしまう人のことを思い出してしまう。

・もう34歳だから、そんなことも無くなっちゃったけども、10代のころはそんなことがとてもあった気がする。

・目で追いかけてしまう人。憧れというには恥ずかしいけども、その感情。

・けども憧れているその子は、その子で傷ついて疲れ果ててるかもしれない。

・行き場をなくして、たまたま家にあったギターを弾いてるかもしれない。

・その頃、離島から船に乗って塾に通ってる男の子はリサイクルショップで音楽の機材を買っている。

・男の子は音楽の打ち込みをしている。

・音楽が大好きだけども、それは一人だけの世界だ。

・作った音楽はパソコンのフォルダに沢山あるのかもしれない。

・けれども、SoundCloudにアップするのは勇気がないのかもしれない。

・それよりも誰かと音楽を作りたいと思ってるかもしれない。

・けれども友達もいないその男の子はどうしたら誰かとバンドを組むのかわからない。

・けども、いつだって世界を変えるのは、行動力のある子だ。

・憧れの子を探して、やっとことで古本屋にたどり着く。

・憧れの子とあわてて音楽の話なんかしたりしてさ。どうしたらいいかわかんないから、手元にあったものの話をして

・男の子はそれを聞いて、勇気を出して、話しかけて。

・行動力のある、感情で動きがちの子は、自分でも気がつかないうちにバンドを組みませんかと言ってしまう。

 


・バンド。

・バンドは10代、そして20代前半までしかできない。

・できないと言うと、あまりにも暴力的だけども、誰かと音楽をやり続けるのはとても難しい。

・共に有り余る時間があるからこそできることなのだと、今になったら思ったりする。

・バンドを初めて世界がまた変わり始める。

・オリジナル曲を作ろうと思う。

・どんな曲がいいだろう

・ふいにアイデアが降ってくる。

・それでまた世界が変わって見える。

・それは今でも私もわかる。小説のアイデアが降ってくる瞬間。そしてアイデア同士が繋がる瞬間、世界が変わる感覚がある。

・楽しくて歌って踊りたくなる。

・いつだってオリジナルを作るのは楽しい。オリジナルを生み出す瞬間の高揚感はなんとも言い難い。

・オリジナルなんてない、全ては何かの影響だ。エブリシングイズリミックスって言葉があるけども、それでも私はオリジナルを生み出す瞬間の高揚感を否定したくない。それでも生み出した瞬間は踊りだし歌いたくなるものだ。

・トツ子は歌って踊る。私はそれを羨ましいと思う。

・トツ子のような本当に屈託のない主人公に出会ったのはいつぶりなんだろう。

・影のない主人公。世界をありのまま受け止めれる女の子。

・トツ子ときみちゃんが、夜の寮で、二人ではしゃぐ瞬間、世界で一番美しい3コードが鳴り響く。

・Born Silppy NUXX

・アニメや邦画にありがちなそれっぽい曲じゃない。本当にその3コードだ。

・だから私は泣いている。その3コードでしか鳴らせない高揚感があるから。

・そしてそれは夜が楽しかった思い出と繋がるから。

・夜が楽しかったことを覚えてる?

・その夜が忘れてしまったことを悲しいと思う?

・遠くなった記憶の中で、楽しかった夜があったことを思い出す。それも私がバンドをやってた時の夜だったような気がする。

・友達の家で、バカみたいな量のフルーチェを作って、飲んだことないのにお酒を飲んで頭を痛くして、落語家のていでラジオを録って。

・いま、この瞬間まで、そんなことがあったのを忘れていた。

・楽しかった瞬間は確かにあったなんて思い出してる。

・いくつもの忘られない瞬間。

・雪が降りしきる夜、廃教会で喋り明かしたことのこと。

・私たちは心のうちを話し合う。

・子供の時に親に隠し事を伝えるのがどれだけ怖かったか、それも思い出してる。

・私はたくさんのことを思い出してる。

・たくさんのことを

 


・ライブが始まった瞬間、聞こえてくる16分のキック。

ニューオーダーのBlue Modayだ。

・そこから始まる80's ニューウェーブのような曲。

・荒いギター。ぶんぶん鳴るシンセ。

・私はぼろぼろと泣いてる。

・なんでかわからないけども泣いてる。

・それは90分近く寄り添ってきた、この三人が鳴らした音楽が、そうだったらいいなと思った音楽だったからかもしれない。

・三人なら鳴らすかもしれないと思った音楽が本当に鳴ったからかもしれない。

・その音楽の距離感に、製作陣の嘘のない音楽への距離感に泣いてしまったのかもしれない。

・二曲目の『あるく』も、オルガンとテルミンが印象的だ。

・00年代オルタナティブ、それこそアーケイド・ファイアシガーロスが全盛期だったあの頃を思い出させるその音像に私は本当にその音楽が鳴っているんだ!と思う。

・TOHOシネマズなんばで、東宝が配給している映画で、こんな音楽が鳴ってるのが幸せだと思う。

・それは、イヤホンで聴いてた音楽を誰かと共有している嬉しさだったのかもしれないし、映画館で大音量で聴くギターのハウリングの気持ちよさからだったかもしれない。

・そして『水金地火木土天アーメン』!!

・イントロから聴こえる『相対性理論』としか言いようのない、しかもTOWN AGE以降的な相対性理論な音楽に私はぼろぼろと泣いてる。

・ギターは永井聖一を呼んできてる時点で、製作陣はまじだ。

・今は作られていない相対性理論の新曲を作ろうとしている!!

・そして、それは物語から乖離していない。

・三人が鳴らそうとしている曲がまさに相対性理論が鳴らしていた奇妙な、けども弾けるポップ性と合致している。

・だから、私は嬉しくて、ぼろぼろと泣いていて、画面の中でも誰かが踊っていて、シスターも誰もいない廊下で身体を回転させる。

 


・けれども、この映画はその先がある。

・花園としか言いようのない場所でトツ子はバレエを踊る。

・断念したバレエを心から踊る。

・その音はいつかのテルミンで、いつかのギターだ。

・踊る。心から踊る。

・その瞬間、自分の色が見える。それは太陽の光に透けて見える。

・赤色だ。

・きみちゃんは青色。ルイくんは緑色。トツ子は赤色。

・ルイくんが離島を離れて、どこか遠くの大学に行く時、きみちゃんとトツ子は走る。

・そういえばきみちゃんはルイくんのこと好きだったのだろうか

・それもわからない。

・誰も彼も、恋愛関係にならなくたっていい。

・叶わない恋心があってもいいし、恋心に成り切る前の感情があったっていい。

・それがどうだかわからないけども、きみちゃんは叫んで「がんばれ」とさけんで、それに応えるように虹色のテープをルイくんは振る。

・その色とりどりのテープは飛んでいく。

・光の三原色は赤と青と緑で、その色が混ざる時、白が生まれる。

・色とりどりのテープが飛んでいった先には太陽の光が注ぎ、それは紛れもない白で表現されている。

 


・光は降り注ぐ。

・私たちに降り注ぐ。

・世界は光り輝いている。

・私たちは光り輝いている。

・光り輝く中で私たちは生きている

 

 

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