にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

父がすい臓がんになってしまった。

 父が膵臓がんであると告知された。と書き出すと重たい話になってしまいそうだけども、実際になってしまったそうなので、この重さからは逃げることはできない。しかし最初に結論めいたことを書いてしまうけども、父ががん告知されてしまっても日常は続いていくし、やらなきゃいけないことはやらなきゃいけないし、腹減ったら飯を食べるしかない。というわけで僕がやらなきゃいけないことはハローワークに行って、雇用保険に延長を頼むことであったり、父が手術の日に立ち会うことであったり、その他もろもろで、逆に言えば当面の間は何にも出来ない。

 がん告知を聞いた日は僕も一念発起して「やることをやろう!」という気になったけども、ダメージは大きかったらしく、次の日は1日寝込んでしまったし、その次の日も半日寝込んでしまった。両目洞窟人間は寝込みのプロであるので、とにかく何かあると寝込んでしまうし、何にもなくても寝込んでしまう。ぐーすかぴーと寝込んでしまう。その様はまるでピンクまんじゅうa.k.a星のカービィのようであるけども、鏡に映る僕はピンクまんじゅうほどかわいげがあるわけでもなく、2日も寝込むとひげ面のNEET

 とりあえず髭をそり、ハローワークに行って雇用保険の延長を申し込むも、住んでる市ではないハローワークに行ってしまったので、住んでる市で申し込んでくださいと門前払いを食らい、今はそのハローワークのビルの一階にあるミスタードーナツでドーナツをもさもさと食べながら、そして煙草をすぱすぱ吸いながらこの文章を書いている。

 


 父は63歳で膵臓がんになるには早すぎる気がするが、そんなことを言ってられない。なる人はなるし、ならない人はならないというだけである。父と関係がよかったかと言われればそんなことはなかった。父はとにかくデリカシーの無い人である。嫌なことを散々言われたこともあったし、それでもめたこともやまほどあった。

 今、実家を離れる選択をしたのも父と一緒に暮らすことに限界を感じたというのもある。とにかくまあ、一緒に暮らすには難しい人なのだ。

 しかし、そんな人が膵臓がんになってしまったということで見捨てるという選択肢ははなからはなくて、僕はできることをやろうという気にはなっている。なんといっても父なのだ。

 父から教えてもらったものも多い。音楽と映画は父の影響が強い。5歳の頃に聞かせてもらったYMOとディープパープル。小学2年生の頃に連れて行かれたタイタニックのせいで、今の自分がいるようなものだ。その他にも多分もらったものは多く、そして多分そのもらったものの多くは今の自分になっている。

 というわけで父には長生きしてほしい。膵臓がんなんかに負けないで欲しい。その気持ちを父に伝えようと思ったが、どんなことを言えばいいかわからなかったので電話をかけて映画『クリード』をとりあえず勧めた。あの映画に出てくるロッキーの姿は父の背中を押すのではないかと思ったのだ。僕は映画を教えてもらった。今度はこういうことで父にお返しをする番だと思った。まあ、あってるのかどうかわからないけども。

 生存率の話も聞いた。5年以内が50%で10年以内が30%だそうだ。それがどれだけの確立なのかわからない。自分があと10年生きれるかどうかが30%だと言われたら、多分目の前が真っ暗になるだろう。父も相当狼狽したと聞いた。

 どれだけの時間がこれからあるのだろうか。10年もあるのだろうか。それとも長生きをして30年くらいあったりするのだろうか。わからない。とにかくわからない。しかし、1つ言えるのは僕にも「父がいつか死ぬ」ということがはっきりとわかってしまったことだった。永遠に続くものなんてない。わかっていたつもりだったけども、わかっていなかった。

 とりあえずできることをしようと思う。村上春樹のエッセイ『村上ラヂオ3』を読んでいたらカート・ヴォガネットの言葉が引用されていた。「愛は無くなっても親切は残る」と。僕は父に親切でありたいと思う。だからできることをしよう。何かなんてまだわからないけども、1つ1つ。もしかしたら今の自分が無職で動きやすい状態ってのはこのためにあったのかもしれないから。有限である時間を、後から振り返った時に後悔にならないように、親切でありたいと思う。

 にしても可哀想だ。なんで父がという思いもある。くやしいという思いもある。でもそれに飲み込まれてしまってはだめだと思う。僕は僕で自分を保ち続けなきゃいけない。

 だから精一杯くだらないことをこれからも考えようと思う。くだらないことを考えよう。どてらを着た猫が歩き回る話や魔法少女になってしまったOLの話みたいなものをこれからも作り続けよう。それが自分にできるプロテストだ。それが現実に抗う方法だ。

 最終的にはこういうことしかできない。頑張ろうと。とにかく日々を頑張るのだ。頑張れなくなった日は寝込んでしまうだろうけども。それ以外の日を頑張るのだ。それだけだ。それだけしか今はできることがないのだ。

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