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にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

舞台美術は「時間の経過」―mama!milkさんの「ときのあとさき」を見に法然院に行ってきたよ。

音楽

一ヶ月前のことだけども、法然院に行ったんですよ。
 法然院は京都の銀閣寺近くにある寺院なんですけども、そこに参拝しに来たわけじゃなくてライブを見に来たのでした。
 お寺でライブ!?東大寺なのか。東大寺ならばわかる。布袋寅泰がライブをしていたはずだ。ライトアップされる仏像をバックにライブをしていた。だが布袋寅泰のライブを見に来たわけではない。関係ないけどもBOOWYのMarionetteのPVって実はダサいんじゃないのだろうか。こういう話をしたら年配の人に怒られるんではないのだろうか。
 全く関係ない話を冒頭から申し訳ないですね。
 その日は法然院でライブを行うバンドの名前はmama!milk。男女二人組、コントラバスとアコーディオンのデュオ。
 僕はずっとずっと彼らのライブが見たかったのです。ずっとずっとって小学生の頃から。


 mama!milkさんの音楽を初めて聞いたのは確か小学生6年生の頃でした。
 深夜たまたま目撃してしまったマネキンコメディ「オーマイキー」に出会ったのが始まり。
 マネキン達がマネキンのまま妙な会話をして、笑って終わる。そんな狂気に満ちた映像に心奪われ、衝動に突き動かされるまま調べていくうちにその作品がバミリオン・プレジャー・ナイトという番組が元になっていることを知った。
 その時点で「バミリオン・プレジャー・ナイト超見てえ!」ってなったんだけども、残念ながら放送は終わっていたし、財力の無い小学生には発売されているDVDを買うことは叶わなかった。
 悔しさ故にうぐぐぐと下唇を噛み、噛み続け、溢れでた血が地面に滴り落ち、そしてその血が乾ききったある年の元旦。テレビ大阪バミリオン・プレジャー・ナイトが突如放送されたのです。
 正確にはバミリオン・プレジャー・ナイトを再編集した映画版のカラーオブライフでしたが、これは見る機会だと正座待機をしてビデオ録画予約もして待ったのを今でも憶えています。
 そして見たカラーオブライフに甚く衝撃を受け、笑い、またもや心を奪われてしまった。
 アナーキーでナンセンスなのに美意識が貫かれたコント。そしてその美意識の部分を強く意識させられたものこそ音楽でした。
 そしてその音楽担当していたのがmama!milkさんだったのです。
 
 
 ↑バミリオン・プレジャー・ナイトのOP曲のmama!milk/鏡楼の饗宴
 この曲があまりにも好きで劇団の公演にねじ込んだのもいい思い出。


 バミリオン・プレジャー・ナイトから入り次第に興味を募らせるいった私はタワーレコードで当時入手可能だった最新アルバムのLumb and Muttonを購入したのでした。

Lamb and Mutton

Lamb and Mutton


これがなんと大名盤。
貪るように聴き倒していました。
中学の時、放送委員長権限で放課後こっそり流したなあ…。
 

 しかしあんまりCDが入手できなかったこと、そして情報が入ってこなかったことからそれからしばらくmama!milkさんの音楽を追うことはできなくなりました。


 気がつけば大学生。
 大学に入り演劇の音響に関わる中でmama!milkさんの音楽に触れ直したことがきっかけとなって今どんな活動をしているのか調べたのでした。
 そこで知ったのが今回行きました「ときのあとさき」というイベント。
 毎年、法然院で秋の始めに行っているものだそうとしって、こりゃ行かねば!となったのでした。
 
august / mama!milk - YouTube
↑こちらがその「ときのあとさき」のライブ映像。

 
 バイトを昼間で切り上げて向かうは京都「法然院」
 電車からバスへと乗り継ぎ、雨がパラパラと降る中歩いて行くと次第に山へ近づいていき、空気も妙に澄んでいくかのような感覚に襲われました。
 法然院に入りますと、ちょっとした行列ができていました。客層も幅広い。僕のような大学生っぽい人から、初老の夫婦まで、小さな女の子を連れた家族連れも来ていました。
 法然院内に入りますと100人ほどの人々がひしめき合っていました。おお!人が!人が来ておる!
 僕はそうっと邪魔にならないようにあちらこちらと移動しながら法然院内をiPhoneで写真を撮りまくったり、サービスのお茶をお呼ばれされたりました。
 そして会場に。会場の広さはそれこそ子ども会の合宿で使われていそうな大きな部屋を2つ~3つ開放しておりなかなか広い。前方にはmama!milkさんのお二人が使う椅子と楽器。そしてその後ろが庭になっており、その庭からはししおどしの音がこーん、こーんとなっていました。
 またお茶を飲みに行ったり、会場に入り貰った手紙を読んで待っていると次第に開演の時間へ。


 18時。少し陽が沈みかけた頃、mama!milkのお二人が会場に入ってこられました。
 一曲目はaugustから。
 一音目がなった瞬間、さぁーっと鳥肌が立ったのを憶えています。
 それはずっと好きだった人たちの音楽(アルバム追えていないのにずっと好きというのもおこがましいですが)を今、生で聞いている、生で演奏しているという感動からくるものでした。
 そしてその感動は次第に変化していきました。
 感動から圧倒へ。
 陽が沈んで行く中、開演当初は見えていたmama!milkさんの姿も次第に暗闇と混じっていきました。
 そして青紫色の暗闇の中、庭からは虫の音が次第に主張を強くしていきます。
 目に映るものが青紫の暗闇と影だけになっていく中、演奏もその空間に寄り添うものへゆっくりとシフトしていきました。
 次第に時間がねりあめのようにゆっくりと引き伸ばされているような、それとも高密度に圧縮されているかのような味わったことのない感覚になっていきます。
 何度かするすると睡魔に引きこまれていきますと、さらに演奏がそして時間間隔が伸びていく。
 ふわーと半ばトリップ状態になっていますと、第一部が終了して現実に引き戻されました。
 

 休憩時間は30分。それから第二部が始まるとアナウンスされました。


 僕は妙にドギマギしてしまい、サービスのお茶をまた貰いに行きました。
 そしてドギマギしながら飲んでいました。お茶の冷たさが心地いい。
 
 結構たっぷり休憩時間をとって第二部。mama!milkの2人がまた会場に入ってきた頃には、陽はすっかり沈んでおりもうすでに夜になっていました。
 心なしか庭の虫の音も先程よりも強く聞こえてきます。
 そんな中始まった第二部は第一部とはまた雰囲気を大きく変えてきたのでした。
 設置された照明が、虫やししおどしがある庭を鮮やかに照らす中、mama!milkの2人は演奏の熱を強めていきます。
 時に荒々しく情熱的な、狂おしいほど官能的な演奏な、壊れそうなほど繊細な演奏に僕は何度もため息が出てしまいました。
 一度、演奏の終わりのタイミングがししおどしの音と重なった時、耐え切れないほどの感動を覚えました。この2人は空間を支配している!
 夜に抗うように、夜に寄り添うように、空間に抗うように、空間に寄り添うように、利用するようにされるように、全ての状況を味方にした演奏が続きます。
 空間や時間や音が全てが重なりここでしか聞けない演奏にもうどうしようもなく興奮していると、流れてきたのはLumb and Muttonに収録されている大好きな曲の「ao」でした。


 哀しくも、ずっと聞きたくなるようなメロディにすっかり心は奪われていました。
 2人の身体が大きく動く度に、ああ!本当に音楽がここから演奏されているんだ!と当たり前のことに気が付き少年のように心が踊ったのです。
 それは初めて音楽に触れた時のような感覚にも似ていたのかもしれません。
 楽器というものから音楽が作り出されていることを知った時以来の楽器の素晴らしさに気がついた瞬間だったのかもしれません。

第二部の演奏が終わり、そしてアンコールとして演奏された曲はwaltz,waltz。

walz,walz - mama!milk - YouTube大好きな曲です。

 最後の一瞬まで大事にするような演奏が終わり、そしてライブは終わりました。
 会場には割れんばかりの拍手。素晴らしい演奏をしてくださったmama!milkさん。そしてにこやかな僕。
 

 帰り道、この二時間ばかりの体験がどういった体験がまとめることが出来ませんでした。
 mama!milkさんのライブでもあったし、二時間ばかりの時間と空間に対する新たな目線の講義を受けてきたようでもあったし、そして上質な映画を見てきたようでもあったし、どこか異国へ旅行してきたようでもありました。
 そして大事にそっと心に仕舞いたくなるような素晴らしい時間でもありました。
 とてもいいライブでした。