にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

どてらねこのまち子さん『Loveland,lsland』

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 山下達郎のカッティングギターが街を切り裂く。

 「うぉ~」とハイトーンボイスがビルをなぎ倒す。

 凶暴化した山下達郎は手がつけられない。

 CDを棚から人つかみするように人々を掴んでは精神のイコライザーをかけて廃人に仕立て上げていた。

 「うにゃにゃにゃにゃにゃ・・・」

 そんな情景にどてら猫のまち子さんはどうにかせねばと憤っていた。しかしただ二本足で立って歩くだけの猫のまち子さんに何ができるわけではなかった。

 そのうちに、自衛隊がやってきて、自衛隊の戦車群が山下達郎に砲撃をし始めた。

 「お~お~ラブランド~アイラビュ~」

 とハイトーンボイスで自衛隊の砲撃を無力化していく山下達郎

 戦車群は爆散した。山下達郎のカッティングギターに敵う者など誰もいないのだ。

 街に絶望感がひろがっていく。

 そのときだった!

 「まち子く~ん!」

 その声は、街一番の博士の声だった。

 「博士!」

 「まち子くん!これを飲むのじゃ!」

 そう渡されたのは赤色のカプセル。

 まち子さんは即座に飲む。なぜなら博士をめっちゃ信頼しているからだった。

 するとみるみるうちにまち子さんは巨大化した。

 「うわあ~」

 巨大化したまち子さんは街をすっぽり覆うほどの大きさになった。 「お~」

 とさすがの大きさに山下達郎も恐れおののいた。

 「山下さん!もう悪さはやめるのです!」

 とまち子さんが叫んで、山下達郎を掴もうとしたら、足を滑らせてしまって、そのまま山下達郎と博士、そして街もろともこけた勢いで潰してしまった。

  

やがて離れ離れになる二人に。/『リズと青い鳥』を見た!

 リズと青い鳥を見た!

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 いや!緊張感!!!このポスターからは想像できないほどの緊張感!!!

 直前にアベンジャーズ/インフィニティウォーを見ましたけども、それに匹敵するかもしくはそれ以上の緊張感で迫り食ってくるのは、青春期のほんのちょっとした不和の物語って山田尚子監督が全力で殴りかかってくるよ姉さん!

 というわけで、内容はほんのすこしの不和な話なわけです。でも、90分間絶えずひび割れた氷の上を歩かされているような気分になるのはなんでしょうか。

 青春時代の危うさを覚えているからでしょうか。いや、そんなノスタルジーに頼った作品ではありません。

  とにかく雄弁な映画です。でもセリフ量は通常の映画の三分の一くらいなのではないかというほど、少ない。

 そのかわり、登場人物たちが雄弁に自分たちの気持ちを語る以上に、観客に語りかけてくるのは、腕の動き、足の動き、人と人の距離感、光の動き、朝の空気、足音、フグ、そして楽器の音色です。

 それはどんな言葉よりも雄弁に、そして緊張感を持って迫ってきたのです。

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 青春時代が残酷なのは才能の有無を初めて知らされる時期だからでしょう。

 才能がないことを初めて知って絶望する時期です。

 でも、それ以上に才能があるから一番好きな人と離れないといけないと、才能があるからこその残酷な別れをも告げられる時期なのです。

 才能の有無って残酷っすよ。友人同士でわいわいきゃっきゃやっていたいのに、それを許さないような才能があって、それを使えば遠くまで飛べるって知ったらそりゃ送り出さなきゃいけないじゃないか!

 そして、その飛び立つのを阻害しているのは誰なのかって気がついた瞬間の悲しみったら。

 ああ、気がつきたくなかった。気がついたらもう元には戻れないのに。

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 『リズと青い鳥』は始まりと終わりで関係性は全く変わってないような見えるけども、本当のところでは決定的に変わってしまったことを告げるあまりにも残酷な物語といえます。

 クライマックスの理科室での告白は、二人の好きが全く異なっているという残酷な真実も炙り出してしまいます。

 そして、もう二度と訪れないような本音をさらけ出す、そんな時にでさえ正直になれなかった人間の姿も。

 二人は友達で、確実に親友と言えます。

 でも、もう二人は一緒の人間ではないのです。

 いや、最初から違う人間だった。 

 それが表面に出てきてしまった。

 友人関係なんてそんなものかもしれないけども、それでもそんなことに気がつくのはとても辛いことです。

 オザケンの「さよならなんて云えないよ」で「嫌になる程お互いのことをわかり合う時間」みたいな歌詞がありましたけども、これはそんな時間の果てに違う人間だって知ってしまった人々の話です。

 でも、そうわかったからこそ、決意が生まれます。

 「あなたのソロを支えれるように頑張るからね」はとても悲痛な叫びのように聞こえました。でも、遠くへ行ってしまう友人をさらに遠くへ飛んでもらうためには頑張るしかないのです。

 映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』で、主人公の男の子が最後、自分はそのまま地元で埋没していくこと、そしていっしょにバンドを組んでいた女の子は才能を開花させて遠くへ飛んでいくことを悟ります。でもそれでも、その一緒にバンドを組んでいた時期を自分にとっての最高傑作だというのです。

 そしてそれはまぎれもない真実です。

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 冒頭から流れている緊張感がついに溶ける終わり側、それは冒頭から流れていた二人の不和がなくなったことを意味していると思いました。

 それと同時に、やってくる終わりを二人は認識したのだとも。

 だから「コンクール頑張ろうね」に涙せずにはいられませんでした。

 その最後のコンクールが彼女たちにとっての最高傑作になればいいなと思いました。

 やがて離れ離れになる彼女たちの最後の最高傑作になればいいなと思いました。

 

 とても小さな話だけども、スタイリッシュかつ繊細な演出がダイナミックに感情を揺さぶってくる青春映画の大傑作。

 とても大好きな映画になりました。

どてらねこのまち子さん『Stayin' Alive』

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 ビージーズのステイン・アライブのBPMは103で、このリズムは心臓マッサージのリズムと同じだそうだ。

 というわけで、今、私は頭の中で、ステイン・アライブを流しながら、道端で倒れた太った男に心臓マッサージをしている。

 ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 繰り返す。このステイン・アライブ。

 突然街角で「うおおおおおおお」とよだれを垂らして倒れた太った男。

 この男を救えるのはステイン・アライブのBPMが心臓マッサージであるとわかっている私だけだ。

 このことを知っているのは沢山いるだろうけども、今、この街角では私だけで、だから私はステイン・アライブを繰り返して心臓マッサージをしなきゃいけない。

 ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 ふんにゃかんふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。

 すると太った男がかっと目を開いた。

 蘇生したか。

 すると「ぐろおおおおおおお」と大きな声で叫び始めた。

 その声は大きくとどろく。

 腹からぴりぴりぴりと音が響く。

 「ぐろおおおおおおおお」

 ぴりぴりぴりぴり。

 腹が割れる。

 血しぶきが間欠泉のように吹き出す。

 私は太った男の血を大量に浴びる。

 間欠泉から黒い影が飛び出した。

 その影が着地して私を見る。

 「あ、山本さん」

 その影はまち子さんだった。

 どてらを着て二本足で歩く猫のまち子さんだった。

 「私は岸本です。まち子さんなぜそこに」

 「うにゃにゃにゃにゃ。散歩していたら、太った男に食べられてしまったのです」

 「おやや」

 「助かりました」

 「それは良かったです」

 足下では、太った男が間欠泉のように血を吹き出し続けています。 その血で、虹ができていました。

 「あっきれい」 

 まち子さんはそうつぶやきました。

Thank you for playing!! /映画『レディ・プレイヤー1』を見た!

レディ・プレイヤー1』を見た!

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 ゲームをやったことがある人なら「Thank You For Playing!」という文字面を見たことを見たことがあるかもしれない。

 ゲームだけでなく映画、音楽、小説、アクセサリー、とにかく世の中の創作物は実際に見てくれる、触れてくれる、そんなあなたがいてなりたつものだ。

 そして世の中の創作物は0から生まれることは無い。

 多くの創作物の影響から生まれる。

 誰かが作った物をあなたが受け取って、それをまた誰か別のあなたに届く。

 それが世の創作物というものかもしれない。

 


 アーネスト・クラインが書いた原作『ゲームウォーズ』はおびただしい量のサブカルチャーの引用で描かれた原作だった。

 ハリデーという男がOASISというVR空間に残したイースターエッグを見つけるために様々なサブカルチャー(主に80’s)を調べ尽くして発見していくという内容だった。

 巨匠スピルバーグ監督はどう料理したか。

 映画化に際して『レディ・プレイヤー1』おびただしい量の、本当におびただしい量のサブカルチャーの引用を入れ込んだ。

 映画、音楽、ゲーム、小説。

 初見でそれを網羅することは不可能なほどの引用。

 しかし、それはあくまでもイースターエッグと言う扱いにしている。

 気がついた人だけがより楽しめればいいという風に。

 冒頭のカーチェイスだけでも網羅不可能なほど情報が詰め込まれている。

 クライマックスの大乱戦なんて、なんどここを見れば全ての情報がわかるのだろうというほど詰め込まれている。

 でも、それはBlu-rayで繰り返し見てくれと言わんばかりに通りすぎていく。

 一つ一つを、まるでコレクションを見せびらかすようには見せない。

 一つ一つ、権利を許諾してもらっているにも関わらずだ。

 秒単位で過ぎ去っていく引用元。

 それ以上に、1本の映画として見終わった時に心に刺さるメッセージは二つだ。

 それは大きなメッセージである『現実を大事にしよう』というもの。

 そして3つ目のキーになる『イースターエッグ』探しである。

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 3つ目のキーになるイースターエッグはアタリのゲーム「アドベンチャー」のイースターエッグを見つけることだった。

 そのイースターエッグは世界で初めて仕込まれたイースターエッグ

 画面上の見えないドットを見つけることで制作者の名前が現れるというものだった。

 それを見つけ出した主人公はOASISイースターエッグを仕込んだ張本人であるハリデーにこう言われる。

 「私のゲームを遊んでくれてありがとう」と。

 


 隅々まで探さなければ見つからないイースターエッグ

 それはすなわちそのゲームを隅々まで遊び尽くすことである。

 そうして初めて現れるメッセージ。

 それが「私のゲームを遊んでくれてありがとう」だということを考えると、不意にこの映画の制作者達が込めたメッセージが浮かび上がってくる気がする。

 ゲームをプレイしてくれてありがとう。

 小説を読んでくれてありがとう。

 音楽を聞いてくれてありがとう。

 映画を見てくれてありがとう。

 そんなメッセージが立ち上がってくる気がするのだ。

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 多くの引用で作られたこの作品はまるでこれまでのサブカルチャーの祝祭でもようであり、そしてサブカルチャーたちからの感謝の念のようでもある。

 冒頭から終わりまでそれがつきることはない。

 作品は0から生まれることはない。

 だからこそ引用というわかりやすい形で見せるのは多くの作品によって救われてきた人々の姿と、制作者の姿だ。

 VR世界を支配しようとする者を止めようとするのはおびただしい量のサブカルチャー達だ。

 そのサブカルチャー達にも制作者がいて、それに救われたものがいて、そしてそれが一同に介する。

 一同に介するのはサブカルチャーを支配しようとする人々の陰謀を止める時だなんて素敵じゃないか。

 

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 創作物が真に命を与えられる瞬間は、誰かがそれを受け取った瞬間だ。

 それまでは死んでいるに等しい。でも、誰かが受け止め続ける限り生き続ける。

 誰かが遊び続ける限り生きている。

 誰かが聞き続けている限り生きている。

 誰かが見続けている限り生きている。

 だからこその『Thank You For Playing』なのだと思う。

 命を与えてくれてありがとうと。

 

 長年映画界で作品を作り続けたスピルバーグ監督からの『Thank You For Playing』が詰まった1本の映画。

 もう二度とこんな映画が作られることはないかもしれない。

 こんな祝祭は二度と開かれるかもしれない。

 でも、それでも大丈夫。

 そんなときはまたこの映画を見ればいい。

 おびただしい量のサブカルチャーの先に、祝祭の先に、またスピルバーグ監督は待っているはずだから。

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映画『哭声/コクソン』を見た!

「哭声/コクソン」を見た!

 

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 わからない。という感覚に陥ることは気持ちがいい。

 その上、翻弄されるともっと気持ちがいい。

 「コクソン」はとにかくわけがわからない。

 見終わっても「國村隼」の本当の目的はなんだったのか?

 あの祈祷師はなんだったのか?

 あの女の正体は?

 あの村はどうなっていくのか?

 全て答えが用意されているわけじゃない。

 でもとにかく気持ちがいい。

 翻弄され続ける150分に、ダウナーな状態で見たにもかかわらず、そして後味は悪いにも関わらずもう気持ちは高揚しっぱなしだった。

 というわけで僕は未だにこの映画がつかめていない。

 ストーリーの解説もできやしないし、各シーンの意味も、暗喩もわかっちゃいない。

 それでもとにかく気持ちがよかったのだ。

 ドライヴし続ける映画だと思った。

 始まってから終わりまでとにかくこの映画はドライヴし続ける。

 一瞬たりともブレーキを踏まず、むしろアクセルをベタ踏みしてドライヴし続ける。

 そのドライヴの要因になっているのが國村隼

 なんせ國村隼だ。

 もう國村隼という俳優の魅力がこれほどまでにつまった映画が作られるなんて。しかも韓国で!

 國村隼という人は怖い。

 顔が怖い。声が低くて怖い。

 しかしどこか優しげな瞬間も見える。 

 だから怖い。真意が見えなくて怖い。

 そんな魅力がずっとずっとドライヴし続ける。

 ふんどし姿で鹿を丸かじりする國村隼

 ふんどし姿かつ赤い目で襲いかかる國村隼

 滝行する國村隼

 家を壊される國村隼

 太鼓を叩きながらトランス状態に入る國村隼

 そしてラストにはあんな國村隼

 悪魔國村隼!!!

 は~ええもん見せて貰った。

 國村隼の7変化を見るだけで元がとれたというものです。

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 しかしまあ、ここまで登場人物達が傷つく作品も珍しいのではないでしょうか。

 とにかく皆が皆傷ついていく。肉体的に傷ついていく。

 ぼろぼろ~になっていく。

 主人公は血まみれになって、ベッドを起き上がる時でさえ、タンスに頭をぶつけて。

 もう徹底的だ。

 身体への傷が人を不安にさせることを知っている。

 とにかく傷が一つでもあれば、人ってのは不安になるものだ。

 血が流れたらその日一日不安でしかたない。

 傷がつくということは、もう安全地帯にいられないという証明であるわけで、肉体的にも精神的にも徹底的に傷ついていく主人公を通して我々観客もとにかく不安になる。

 その極地がクライマックスの問答シーンでありましょう。

 クライマックスは「誰が正しくて、誰が間違っているのか?」を徹底的に考えさせられる。

 今まで見た物からなんとか予想しようとする。

 でも、どれもこれも答えが見当たらない。

 教えてくれよ!誰が本当のことを言ってるのか!と思うけども、それは考えなきゃいけない。頭を回転させろと告げるけども、頭は150分のドライヴでうまく動かない。

 変わり続けるジャンル。コメディ、サスペンス、ホラー、アクション、超常現象、ゾンビ、エクソシスト

 そして立ちこめ続ける瘴気によって、我々も主人公も冷静な判断は出来なくなっているのです。

 誰も彼も怪しく見えて、でも守りたいものはおかしくなっていて、どうしたらいいのだよ!と走り出した先にははい絶望どーんなラストにぐぬぬぬぬぬ。

 ナ・ホンジン監督よ~!と唸ってしまいました。

 


 ナ・ホンジン監督作品だと一番好きなのは『チェイサー』ですが、一番振り回されて一番いろんな意味で衝撃度が突き抜けているのはこの『コクソン』だと思います。

 とにかくもう、すごいのなんの。

 ここまで全部盛りに映画ってできるのか~と驚きっぱなし。

 終始エネルギッシュ。

 登場人物は走り回り、転げ回り、叫び、飯を喰い、物を壊しまくり。

 韓国の人らは凄いの~としみじみ思ってしまいました。

 このエネルギッシュさは見習わないといけないな~。

 だってこんな山間部の村で起きた大量殺人死を描いた映画でじめじめ感を保ちつつ同時に走り抜けるってことができますでしょうか。わかんないけども、すんごいことしてるんじゃない?

 ナ・ホンジン凄いことしてるんじゃない?

 ナ・ホンジン監督の映画は好き嫌いあれど「なんか凄い感」がひしひしと伝わってくるのがもう毎度のことやられてしまいます。

 落ち着きなんて一切見せずにこれからもめちゃくちゃな映画を作って欲しい。

 観客の顔にパンチしまくるような映画をこれからもどんどん作って欲しい。

 好きなところを書くと謎の女を演じてたチョン・ウヒさんの顔がどちゃくそにタイプでした。

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 途中「ここで待ってろ」って言われたあとに「うんうん」ってうなずくところとかめっちゃかわいかった。

 あそこのGIF動画誰か作ってくれ。

 永久に見ていたい。

 

 というわけでコクソン。凄かったです。

 なにがなんだかわかんないけどもパワフルな映画が見たいという人に勧めたい。そんな一本でした。