ビージーズのステイン・アライブのBPMは103で、このリズムは心臓マッサージのリズムと同じだそうだ。
というわけで、今、私は頭の中で、ステイン・アライブを流しながら、道端で倒れた太った男に心臓マッサージをしている。
ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 繰り返す。このステイン・アライブ。
突然街角で「うおおおおおおお」とよだれを垂らして倒れた太った男。
この男を救えるのはステイン・アライブのBPMが心臓マッサージであるとわかっている私だけだ。
このことを知っているのは沢山いるだろうけども、今、この街角では私だけで、だから私はステイン・アライブを繰り返して心臓マッサージをしなきゃいけない。
ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。 ふんにゃかんふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。
すると太った男がかっと目を開いた。
蘇生したか。
すると「ぐろおおおおおおお」と大きな声で叫び始めた。
その声は大きくとどろく。
腹からぴりぴりぴりと音が響く。
「ぐろおおおおおおおお」
ぴりぴりぴりぴり。
腹が割れる。
血しぶきが間欠泉のように吹き出す。
私は太った男の血を大量に浴びる。
間欠泉から黒い影が飛び出した。
その影が着地して私を見る。
「あ、山本さん」
その影はまち子さんだった。
どてらを着て二本足で歩く猫のまち子さんだった。
「私は岸本です。まち子さんなぜそこに」
「うにゃにゃにゃにゃ。散歩していたら、太った男に食べられてしまったのです」
「おやや」
「助かりました」
「それは良かったです」
足下では、太った男が間欠泉のように血を吹き出し続けています。 その血で、虹ができていました。
「あっきれい」
まち子さんはそうつぶやきました。