にゃんこのいけにえ

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読書感想文『村上ラヂオ3』『菊地成孔の粋な夜電波』

読書感想文


『村上ラヂオ3』村上春樹

村上春樹のエッセイって面白いのが多くて、古くは『村上朝日堂』や海外の雑誌の記事を引用しまくる名著『scrap』がありますが、『村上ラヂオ』はあのananで連載されていた一記事3ページほどの軽いエッセイ集です。

まあ、内容は薄くもなく濃くもなく、つまりananで連載するにはちょうど良いお湯加減にチューニングされたものなのですが、ふいに読み始めるとどんどん読み進めてしまうくらいには面白い。

胃にずしんとくるような本も大好きだし、手に汗握るようなエンタメも大好きだし、その後の人生の指針になるような本も大好きだ。

けども、そんなのが読めないって精神状態の時、この村上ラヂオはちょうど良い。ラヂオって言ってるくらいなので、まるでラジオを聞き流しているかのような読書感があってよいです。

話は多岐に渡っていて、サラダが好きなライオンはいるのか?ってくだらない問答から、好きな作家の言葉の引用、旅行の話までありとあらゆる話がある。村上さんは多分駄話が得意だし、うまいのだなと思わされる多様さだ。ラジオで言うところのフリートークがうまい人の話を聞いてるような感覚にもなる。

とつらつら書きましたが、たまにはこういう本もいいと思います。

カート・ヴォネガットの言葉がある言葉が引用されていた。「愛は無くなっても親切は残る」。この言葉に関連したエッセイも素敵なんだけども、この言葉が載っているカート・ヴォネガットの小説って一体なんなのだろう。村上ラヂオを読み終えた今はそれが読みたくて仕方ない。

 

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

 

 




菊地成孔の粋な夜電波』菊地成孔

菊地成孔さんといえば、ジャズミュージシャンで、文筆家で、美食家で、評論家で、そしてラジオパーソナリティである。そんな多面的な顔を持つ、スノッブなおじさんこと菊地成孔さんのラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』からトークや前口上やラジオコントを収録したいわゆるラジオ本というやつだ。

僕は菊地成孔さんのデビューエッセイ本『スペインの宇宙食』にかなりやられてしまった人間で、それ以降ずっと(度々見失ってはいるけども)菊地成孔さんの活動は追っかけているつもりである。しかし、ラジオはあんまり聞けていなかったところで、この本が発売となった。嬉しいなと思っていたら、ラジオが今度終了となり、どーんと落ち込んでいます。

ラジオの特徴というかこの本の特徴は菊地成孔さん独特の言語感覚で彩られた前口上の素晴らしさや、曲に新たな命を吹き込むかのような曲紹介の素晴らしさだ。

特にアース・ウィンド&ファイアの『セプテンバー』の曲紹介の箇所をぜひ読んでいただきたい。この地球上で比喩ではなく何十億回とプレイされたあの曲が、新鮮な、まるで始めてプレイされた日のように、生まれ変わるかのような曲紹介はこの本の白眉といえる。

ラジオ本ということで基本的にはファンの人しか手に取らない本であることをわかりつつ、ここで紹介したいのは、独特の言語感覚を持った人の言葉ってやっぱいいよなってことと、そんな言葉に頭を掻き回されたいと思う日もあるだろうってことで、そんな風に頭を掻き回されたいなって人にはオススメの一冊です。

あとジャズの曲紹介もめっちゃ付いてるので、この一冊とApple musicがあれば永久に楽しめる本でもあるのでそういう面でもおすすめ。

 

菊地成孔の粋な夜電波 シーズン1-5 大震災と歌舞伎町篇

菊地成孔の粋な夜電波 シーズン1-5 大震災と歌舞伎町篇