にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

両目洞窟人間のおすすめ自作短編集。

どうも、みなさまこんにちは、両目洞窟人間です。

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↑両目洞窟人間近影。

 

私は短編小説を時折書いておりまして、時折このブログ「にゃんこのいけにえ」にアップしています。しかし、ブログの性質上、どんどん潜ってしまいせっかく書いたのに埋もれてしまってやきもき。

というわけで今まで書いたやつでおすすめなやつをこのページにまとめておこうと思います。

いわゆるおすすめ自作短編集ってやつです。

ではいきましょう。

 

 

短編小説『世界を燃やしてほしかった』 - にゃんこのいけにえ

『世界を燃やして欲しかった』

あるどこにでもいる夫婦。でも二人には敗れた夢があって…。

あるバンドのある曲にオマージュを捧げた作品です。(小説の最後にyoutubeのリンクを乗っけているのがネタバラシ部分)

だいぶ初期に書いた作品ですが、未だに評判が良いです。

 

短編小説『The victim』 - にゃんこのいけにえ

『The victim』

奇病かつ難病にかかってしまった女性の話。生きづらさが最大限に高まっていた時に書いた短編小説です。

 

短編小説「岸田くんの小指を潰したい」 - にゃんこのいけにえ

『岸田くんの小指を潰したい』

こんなタイトルですが恋愛小説です。恋人の小指を潰したい女の子の話です。私自身恋愛というものがあんまりわかっておらず、愛ってなんだろうな…ってのを突き詰めた結果、小指を潰すという話になりました。こんなあらすじですがいい話です。

 

短編小説『ダンボール箱のさとこさん』 - にゃんこのいけにえ

ダンボール箱のさとこさん』

突然ダンボールをかぶって出社してきたさとこさんとそれを見守る若手社員の話です。これも生きづらいって気持ちの時に書きました。ダンボール箱をかぶったさとこさんのビジュアルが評判で結構この作品が好きって言ってくださる人も多いです。これもなんだかんだでいい話です。

 

短編小説『あの子は象牙の橋から飛び降りた』 - にゃんこのいけにえ

『あの子は象牙の橋から飛び降りた』

象牙の橋がある街に住む不登校の女の子の話です。後輩曰く、これが一番好きだそうです。雰囲気がね、よいですね、これは。僕も好きです。これもいい話ですね。

 

短編小説『2147年のスーベニア』 - にゃんこのいけにえ

『2147年のスーベニア』

荒廃した未来で、旧奈良に旅行に行くカップルの話です。これが一番好きっていう人も多いです。のんびりディストピアSFもしくはディストピア日常系。これも雰囲気が、よいですね。僕も大好きです。

 

短編小説『未来人、ニュータウンへ』 - にゃんこのいけにえ

『未来人、ニュータウンへ』

彼女に別れを切り出そうとしたら、彼女が実は未来人だったというお話です。これが一番好きという声もよく聞きます。こんな出だしですが、めちゃめちゃよい話です。「こんな話を無料で読めて申し訳ない」という感想をいただきました。なんて恐れ多い。手っ取り早く素敵な話が読みたい方はこれがおすすめです。

 

短編小説『笑いながら、へんな歌って言った。』 - にゃんこのいけにえ

『笑いながら、へんな歌って言った』

ナンバーガールを軸に、後輩男子と先輩女子との恋とも愛ともつかない関係性の話です。不器用な人に刺さる話みたいです。これも評判がいいです。『iggy pop funclub』を聴きながら読むともっとよいです。

 

短編小説『マッドサイエンティストになれなかった』 - にゃんこのいけにえ

マッドサイエンティストになれなかった』

学校に馴染めない女の子がマッドサイエンティストになろうと夢見る話です。個人的には思い入れが物凄くある小説ですが、同時にとてもバランスが悪いのも事実。とはいえ、これも刺さる人には刺さるみたいです。個人的な生きづらさシリーズの中で一旦の頂点を迎えた小説です。

 

短編小説『ランプ・妖精・ミルクフランス』 - にゃんこのいけにえ

『ランプ・妖精・ミルクフランス』

突然、妖精さんが見えるようになった女性が、妖精さんに導かれるままに神戸に行く話です。

一皮向けた!と言われるようになった作品です。これが好きって人も多いです。はっきりとした希望が描かれているので、初めて読むならこれがおすすめです。

 

短編小説『アイム(ノット)ミー』 - にゃんこのいけにえ

『アイム(ノット)ミー』

私という一人称に悩む女性の話です。これはめちゃくちゃ評判がいいです。"名文"という評価もいただきました。これを書いたあと、しばらく抜け殻になってしまったほど、自分の中でも初めて「書けた!」と思えた作品です。

これも素直におすすめしたい作品です。

 

短編小説『私じゃ、魔女になれない』 - にゃんこのいけにえ

『私じゃ魔女になれない』

外回り中の女性が魔法のステッキをたまたま拾ってしまったらゴスロリ魔法少女コスチュームが脱げなくなってしまったという話です。

賛否両論を呼んだ話です。個人的にはめっちゃ大好きなのですが、これはおすすめしづらい。

ただ、このグルーヴ感、後半のグロ展開は大好きなのです。多分、好きな人は好きなはず。

 

短編小説『ハローワールド!!!』 - にゃんこのいけにえ

『ハローワールド!!!』

壊れたキティちゃんのポップコーンマシーンみたいな歌声を持つ女の子が音楽に出会う話です。キラキラした青春ものです。個人的にめちゃくちゃお気に入りな話です。キラキラ青春ものなので、キラキラしたいなーって時に読んでいただけると幸いです。

 

どてらねこのまち子さん『Also sprach Zarathustra』 - にゃんこのいけにえ

どてらねこのまち子さん『Also sprach Zarathustra』

私が書いているどてらねこのまち子さんというシリーズの一作。基本的にはどてらを着たねこのまち子さんがあちこち行くという話ですが、この『Also sprach Zarathustra』はまち子さんシリーズの中でも一番評判がよいです。

内容はまち子さんがドトール哲学書を読んでいると……という話。多分、思いもよらぬ展開になります。

基本的に1話完結ですので、これから読んで大丈夫です。

 

 

以上の作品がおすすめ作品になります。

何か気になったタイトル、あらすじ、気の迷いがあれば、読んでいただけたら幸いです。

戯曲『向き合うために逃避する』

アケノヒ処女公演のために提供した『向き合うために逃避する』の戯曲を公開します。

大体尺は60分くらいです。

男3人、女1人で上演できるようになっています。

これをやりたいなんてそんな変わった人がいるかわかりませんがもし連絡を取りたい方は、こちらのコメント欄、もしくはメールアドレス

hotelhiroki@gmail.comの方までよろしくお願いします。

そうじゃなくても、読んでいただけるだけでも大喜びです。

ちなみにアケノヒ上演版とは少し異なります。展開は同じですが、上演版はセリフとして言いづらい部分は言いやすいように変更されてあったりします。

アケノヒ上演版を見た方はその辺の違いも楽しんでもらって、私の台詞書きとしての未熟さを笑ってもらえればと思います。

長くなりましたがというわけで本編になります。

 

 

 

 

戯曲『向き合うために逃避する』

 

作:両目洞窟人間

 

登場人物


中村くん

石渡くん

古川さん

田沢くん

 

 

 

0

 

 

 

1 卒業旅行帰りの車の中(過去)

 


中村、石渡、古川、田沢が車に乗っている。

エンジン音とBGM。雨が当たる音とワイパーの作動音。

中村が運転している。中村以外は寝ている。

中村 あくびをしながら運転している。

後部座席の古川が目を覚ます。

 


古川「みんな寝てる・・・」

中村「あ、起きた?」

古川「いつから寝てた?」

中村「さあ。でもかれこれ1時間くらいはみんな寝てた」

古川「本当?」

中村「うん。もう退屈やったわー」

古川「あーごめんごめん」

中村「いいよいいよ」

 


古川 グミを取り出して

 


古川「手、出して」

中村「あ、ありがとう」

 


中村 グミ食べる。

 


古川「え、もう高槻?」

中村「そうみたい」

古川「あー、そうかー」

中村「どうしたん」

古川「もう終わりかーって思って」

中村「そうやな」

古川「こうやってみんなで旅行行くのも当分できひんようになるねんな」

中村「そうやなー。あれ?古川って就職はどこ?」

古川「大阪やけど」

中村「そしたら、またみんなで集まれるやん。みんな、だいたいはこっちで就職みたいやし」

古川「そうやけども。・・・でも」

中村「でも?」

古川「・・・多分やけど、就職したらそんなみんなとうまく予定とか合わなくなって、それでたまにあっても2時間くらいの飲み会くらいしかしなくなって、それで適当に話すだけで終わって、なんていうか・・・なんていうか・・・くだらないことばっかりしゃべりあって嫌になるくらいにお互いのことをわかり合う時間なんてもうないのかなって思うねんな」

中村「・・・・・・オザケンやん」

古川「オザケン?」

中村「いや、なんか好きな歌の歌詞みたいだったから」

古川「ちょっとちゃかさんといてーやー(中村の頭の部分をたたく)」

中村「ごめんって!ちょっとあぶないから」

古川「もうー中村くんと真剣な話したらいつもこうや」

中村「恥ずかしいからなー」

古川「そうなん?」

中村「俺もずっと思ってたから。このこと」

古川「このこと?」

中村「もうないんやろうなーってこと」

 


助手席の石渡 目を覚ます

 


石渡「(あくび)。もう京都ついた?」

中村「まだ、高槻」

石渡「まだ高槻かー。お、ふーも起きてた?」

古川「もう、みんなと居るときはその呼び方やめてって言ってるやん」

石渡「なんやけちくさいわ。なあ」

中村「俺に振るなよ。一番どうしたらええかわからんねんから」

石渡「あーすまんすまん」

古川「ほら(グミを渡す)」

石渡「おーさんきゅー。あ、レンタカーの返却間に合うかな?」

中村「今の時間やったらまだ大丈夫やろ」

石渡「そっか。あ、雨止んできたな」

 


雨の当たる音が引いていく。

夕日の照明

 


石渡「うわ、まぶしいな」

古川「あ、あっこ」指指す

中村「え、どうしたん」

石渡「あ!すごい」

中村「え?何?」

石渡「あれ!あれ!」

中村「え?運転してるからわからんって!」

田沢 目を覚ます

 


田沢「うるさいなーもうー。うわ、まぶし、なんや・・・おい!虹出てるやんけ!」

中村「虹?」

古川「だから言ってるやん」

中村「あっこだけじゃわかんないって!今も?」

石渡「今も出てるほらほら!」

中村「えーどこ?どこ?」

田沢「あれ!あれ!あれ!」

中村「あれじゃわかんないって!!」

 


夕日がまた雲に隠れていく。

大きくなっていくエンジン音

それと同時に中村以外ははけていく。

音はどんどんはげしくなる。

全ての音が消える

受付の女「中村さん、一番へどうぞ」

 


2 心療内科(現在)

 

 

 

中村 白衣を来た医者と向かい合う

中村「最初は風邪かと思ったんです。身体が動かなくなって・・・でも、ある朝会社に行けなくなってしまって、涙も止まんないし、もう無理って叫びながらクローゼットに入ったりもして、もうどうしたらいいかわからなくなって・・・」

医者「それはどすねえ。適応障害どす」

中村「どす?」

医者「そうどす。あなた適応障害起こしてるんどすよ。辛かったどすねー。大変だったどすねー」

中村「そうですか」

医者「(くいぎみに)そうどす。なので、あなたはこれから会社を休職して頂き、そんで治療に入ってもらうどすからね」

中村「はあ」

医者「どうしたどすか?」

中村「休んじゃっていいのかなって」

医者「いいもなにも、あなたは今は働ける状態じゃないんどすよ。休まなきゃいけないどすよ~。はい、診断書と抗うつ剤を出しておくどすからね。休むどすよ~」

 


医者はけていく

 


中村 携帯を取り出す。

 


中村「・・・あ、もしもし、母さん。・・・そうそう。病院に行ってきたよ。えーと。休職しないといけないことになった。・・・うん。うん。・・・大丈夫だと思うよ。うん。とりあえず、また連絡するし。・・・大丈夫だって、泣かなくても。だって休めるんだよ。何もそんな絶望しなくたって。・・・うん。じゃあ。切るから。はい。はいはーい」

 


電話を切る。

中村がため息をついた瞬間、アタック25の音楽が流れる。

 


司会者とアシスタントが入ってくる。

司会者「今週も始まりましたクイズ!なぜ適応障害になったでSHOW!司会は私、メンタルよわおです!で、アシスタントはこの方!」

よわこ「メンタルよわこです!」

よわお「え~よわこさん!」

よわこ「なんですかよわおさん!」

よわお「最近、気圧のアップダウンが凄いじゃないですか」

よわこ「凄いですよね~」

よわお「気圧のアップダウンが精神のアップダウンにつながる・・・わしのメンタルは富士急ハイランドか言いましてね~」

よわこ「はい!では本日の回答者です!大阪府からお越しの中村さんです!」

 


拍手の音

 


中村「どうも・・・」

よわお「今のお気持ちはどうですか?不安ですか?」

中村「抗うつ剤を飲んでそろそろ24時間経ちそうなので、薬が切れそうで不安です」

よわこ「あーいい不安ですね~。ちなみに今は何ミリくらい飲んでますか?」

中村「サインバルタを60mgです」

よわお「おーいいペースですね!」

よわこ「これ以上増えなければいいですね!」

中村「はい(笑)」

よわお「じゃあ、問題の方にいきたいと思います」

よわこ「では問題!(デデン!)営業、事務作業、肉体労働・・・このうち佐藤さんが苦手なものはなんでしょうか!」

よわお「ではシンキングタイムです!」

 


レディオヘッドのオプティミスティックが流れる。

 


よわお「シンキングタイムはいつものようにレディオヘッドです」

よわこ「明るい音楽はしんどいですもんね」

よわお「ちなみにこの曲のタイトルはオプティミスティック。楽観的という意味だそうです」

よわこ「この暗さの曲につけるタイトルじゃないですね」

 


ピロン!

よわお「中村さん!」

中村「・・・全部」

よわお「・・・正解!」

よわこ「まずは10ポイントです!」

よわお「いや~ど屑ですね~」

中村「はい・・・」

よわお「人のできることが全くできないんですね~」

よわこ「はい・・・」

よわこ「ちなみにエクセルを触らせると入力ミス。営業いくとどもり。肉体労働させるとけがをするそうです」

よわお「詰んでますね~」

中村「よく言われます(笑)」

よわお「では第二問です!(デデン!)」

よわこ「・・・1日8回、これは何の数字でしょうか?」

よわお「ではお考えください!」

 


Syrup16gのex.人間が流れる。

 


よわお「シンキングタイムはいつものようにSyrup16gです」

よわこ「Syrup16gはまじもんの心療内科ヘビーユーザーですからね」

よわお「バンドを解散してから、しばらくまじで社会に出ることができなかったそうです」

よわこ「いやーほんものですねー」

 


ピロン!

 


よわお「中村さん!ではお答えください」

中村「・・・会社にいる時にトイレに逃げる回数」

よわお「・・・正解!」

よわこ「10ポイントです!!」

よわお「え~中村さんは社内にいると息詰まるような感覚を覚えてほぼ一時間に一回トイレに逃げ込んでいたと」

よわこ「トイレに逃げ込んで15分くらいはサボっていたようです」

よわお「15分×8回・・・つまり二時間はサボっていることになりますね」

中村「はい」

よわお「どうですか?恥ずかしくないですか?」

中村「生きてて恥ずかしいです(笑)」

よわお「すがすがしいまでのテンプレート回答!」

よわこ「いい感じにメンタル弱ってますね!」

中村「はい(笑)」

よわこ「では、最後の問題です!!昨年、心身症になってしまった中村さん・・・」

中村「ピロン!お前は頑張っていない!」

ブー!

よわこ「最後まで問題をお聞きください。昨年、心身症になってしまった中村さん。友人にに相談したところ、話がずれにずれてお前は頑張っていないと説教を受けてしまった。ですが、今年に入り心身症が再発しそうになったときに職場で年長者の女性に相談したところ言われてしまったのは何?シンキングタイムですどうぞ!」

 


犬神家の一族の音楽が流れる。

 


よわお「犬神家の一族の音楽は落ち着きますね」

よわこ「中村さんは一時期駅のベンチでこれを聞きながら何本も電車を見送ったそうです」

よわお「わかりますねー。ベンチから動けなくなるときありますよねー」

よわこ「ひたすらリピートを繰り返して、心の安寧をはかるんですよねー」

よわお「そこに安寧はないんですけどもねー」

 


ピロン!

 


よわお「中村さん!どうぞお答えください!」

中村「・・・感謝の気持ちがお前には足りてない」

よわお「・・・正解おめでとうございます!!!!」

ファンファーレが鳴る

よわお「心身症であると告げたところ、周囲の人に感謝の気持ちが足りていない、嫌ならやめてしまえと会社の近くのパスタ屋で2時間説教を食らったそうです!」

よわこ「おめでとうございます~!」

よわお「今のお気持ちはどうですか?」

中村「えー、辛い境遇に耐えれている人もたくさんいるのに、私だけ適応障害になってしまって恥ずかしいです!」

よわお「本当そうですよね!」

中村「はい!」

よわお「全問正解した中村さんには3ヶ月の休職期間が贈呈されます~」

よわこ「総務との連絡はきっちりおこなってくださいね!」

中村「ありがとうございます!」

よわお「ではクイズ!適応障害また次回お会いしましょう~!さようなら~」

よわこ「さようなら~!」

 


電話の音が鳴り響いて、司会者の2人ははける。

 

 

 

中村「あ、もしもし」

田沢「俺や」

中村「おー田沢やん。久しぶり。どうかしたん?」

田沢「どうかしたんも、何も、中村、お前こそどうしてん」

中村「あー、ちょっとね」

田沢「なんかTwitterでみたけども、今休んでるんやって」

中村「うん。まあ」

田沢「そんで、どうしてるんや」

中村「どうしてるもなにも。休職しているし、何もする元気もないし」

田沢「そうか・・・中村、飯は!飯は食えてるか?」

中村「まあ、ぼちぼちわ」

田沢「ほんなら、お前今度、飯食べに行こうや」

中村「あーありがとう」

田沢「どこがええ?焼き肉にするか?寿司にするか?それかなんやパンケーキでもええし」

中村「でも、今は外に出る気分でもないし」

田沢「あー・・・そうか・・・」

中村「せっかくの提案ありがたいけども」

田沢「(くいぎみで)じゃあ、お前の家ですき焼きするのはどうや」

中村「はあ?」

田沢「お前のことやし、どうせ大したもん食べとらんやろ。すき焼きや、肉や。しみるぞー」

中村「いや、ちょっと待てって」

田沢「大丈夫、肉代くらい全部出したる。友達の財布は使え使え!あ、俺と二人っきりですき焼きするんが嫌言うんか。」

中村「それはいってないけど」

田沢「(くいぎみ)あほ!俺だってお前と2人で鍋なんかするかいな!ちゃんとあの2人にも声かけとくし!わかっとる!わかっとるから!じゃあ、俺がちゃんと手配しておいたるから!じゃあ、また日にち決めよな!ほな急にすまんな!ほななー!」

 


一方的にしゃべるだけしゃべって田沢は電話を切る。

 


中村「なんだよ・・・」

リモコンを手にとって音量をあげていく。

 


4 中村ノンフィクション(現在・妄想)

 


音楽 ザ・ノンフィクションのテーマ曲サンサーラが流れる。

「生きてる生きている~♪」

 


ナレーション「近年増加している会社にいけなくなる若者。彼らはなぜ会社にいけなくなったのだろうか。彼らの心の闇に迫りたいと思います」

 


カメラマンが入ってきて中村に近づく。

中村「え、何?ちょっと、これ撮ってるの?」

ナレーション「今回密着するのは中村弘二。26歳。一般企業に勤める一会社員でしたが、現在は休職中です」

 


カメラマンとナレーター中村の方をじっと見る

中村「はあ?」

さらにじっと見る2人。

中村 察して

中村「・・・会社に、ある朝からいけなくなったんですよね・・・」

2人 よしって顔をする。

ナレーター「なぜ行けなくなったのだろうか。再現VTRを交えてお送りしたい・・・」

中村「ちょっとまって!これ何これ!」

ディレクター「カット!」

 


ディレクターが入ってくる。(昔のたかじんさんとか紳助的なうさんくさいしゃべり方のイメージ)

カメラマン「ディレクター」

ナレーター「ディレクター」

中村「ディレクター?」

ディレクター「ちょ、ちょ、ちょ、中村くんな、君な今回な取材対象者やねん。言うたら役者やねん。わしらの番組はドキュメンタリーであり、一種のドラマやねん。わかる?中村君」

中村「はあ。・・・なんとなくですが」

ディレクター「あ、あ、あ、なんとなくでもわかってたらよろしい。よろしいわ。だからな、君の半生を今からこのカメラで撮る(うなずくカメラマン)。でナレーターが声で色づける。で、視聴者はどう思う?」

中村「どう思うって・・・」

ディレクター「涙がぽろりや!君の人生を見て、視聴者の涙はぽろりぽろりや!」

中村「はあ」

ディレクター「だからな、中村くん。あのな、君の人生の話を聞かせてくれや。さぞかし、会社を休むくらいやから、重たい、重たい理由があるんやろ。ほな聞かせてくれや!」

ナレーター「中村さん。私からも一つお願いです。ぜひ聞かせてください」

カメラマン「(うなずく)」

中村「え、ええ・・・」

ディレクター「さあ、教えてくれ。何で君は会社を休むことになったんや!」

中村「・・・ないんです・・・」

ディレクター「うんうんうん。パワハラ上司に池に入れと命令された。はー!それはそれは!大変じゃー!大変じゃ!ってええ、無い?理由が無い?どゆことどゆこと?」

中村「・・・無いというか、ここの小さなことはあったんです。任された仕事がちょっと大変だったり、残業が多い月もあったり、上司から怒られることも、お局さんからぐちぐち言われたことも。でも、大きな、そんなドラマティックな理由はないんです・・・」

ディレクター「うんうんうん。パワハラ上司に月200時間の残業を命じられた。はー!それはそれは!大変じゃー!大変じゃ!ってええ?ドラマティックな理由が無い?まじで?まじで?」

中村「・・・はい」

ディレクター「・・・おおお・・・ほーん・・・けど休職している・・・ほーん・・・」

中村「・・・はい・・・」

ディレクター「(手を叩いて)よし!わかった!みんなよう聞いてくれ!・・・撤収!!」

カメラマンとナレーター「はい!」

2人即座に片付けるモーション。

中村「撤収!?え、撤収?」

ディレクター「うん。撤収。ドラマティックな理由がほしいのよ。みんなが納得できるそういう理由が。でも君にはないもの。残念マジ残念。はいお疲れしたー!ぷるるるるっとおっと着信着信。はいもしもし~え!?何!?片足の無い子供が!?跳び箱100段にチャレンジ!?おいおいおい~そっちを撮りに行くしかねえだろ!おい!いくぞ!」

 


撤収するテレビクルー。

 


中村「ドラマティックな理由・・・みんなが納得するドラマティックな理由・・・」

 


中村 ゆっくり横になっていく。

 


中村「そんなの無いよなあ・・・」

 


中村 横になりながら「あーーーーー」と叫び初めて、途中から「何でや!何でや!何でや!」と連呼。

そして中村 静かになる。

 

 

 

5 卒業旅行で行った海(過去)

 


波の音。

中村がその音に誘われるようにきょろきょろすると3人が走って出てくる(青春っぽい雰囲気)

石渡「うわー!冷てー!」

田沢「うぇーい!(波をかける)」

石渡「ちょ、ふざけんなって!あーまじ冷てえ!」

古川「あっははは、馬鹿じゃないのー」

中村「あれ?みんな?」

石渡「おー、中村!お前もそこで寝てないで、こっちにこいって!」

中村「え、みんななんでここに?」

田沢「なんでってお前が卒業旅行中に海みたいって行ったから寄ったんだろ?」

古川「せっかく来たんだし、こっちまでおいでよー」

中村「え?え?今はどこ?」

石渡「どこって過去だよ!お前の過去の中!」

田沢「お前の過去の記憶の中の俺たちだよ」

古川「もう一回、楽しかった瞬間を繰り返そうよ」

中村「あ・・・、うん・・・あー!いくぞー!(その瞬間チャゲアスのSAY YES的ないかにもドラマティックな音楽が流れる)」

 


スローモーション風味になる4人。

照明も幻想的になる。

 


中村「うわー!過去楽しいー!」

石渡「だろう!過去は最高だろ!」

古川「過去はいつだって人類最後のユートピアだからね!」

田沢「お前が願えばこのユートピアにはいつだってこれるんやで」

中村「まじかー。すげえー過去やべえー。え、これって、さらに過去に行けるの?」

石渡「ああ、もちろんとも」

中村「うわーまじかよ!」

古川「どこに行きたい?」

田沢「明治?幕末?」

中村「そこまでさかのぼらなくていいんだよなー」

石渡「じゃあ、中村の高校時代とか見る?」

田沢「いいねー」

古川「中村くんの高校時代気になる~」

中村「あ、ちょっと高校はまじで勘弁してもらっていいっすかね」

3人「・・・あー・・・」

石渡「じゃあ、じゃあ!お前が生まれた瞬間ってどうだよ」

中村「う、生まれた瞬間?」

古川「そうだよ!生まれた瞬間!」

田沢「きっと思いも寄らぬものが見れるかもしれへんで」

中村「生まれた瞬間かー!見てみたいな!」

石渡「よしそうと決まったら、みんなデロリアンの準備だ!」

中村「デロリアン?」

 


3人冒頭と同じ、席の配置になる。

中村「あー、なるほど」

石渡「おい!中村、早くしろよ!」

中村「おっけー!」

 


中村 席を移動させる

中村「ドク!デロリアンの準備はいいか?」

石渡「いいぞマーティ!」

中村「オッケー!じゃあタイムトラベルだ!」

 


アクセルの加速音とタイムスリップに入った音。

照明でタイムスリップを表現。

暗転

 

 

 

6 タイムスリップ(中村くんの走馬燈

 


薄明かり

中村だけが残されている。

中村「あれ・・・みんな。みんなー。どこだー」

 


小田和正の言葉にできないが流れてくる。

中村「あれ、なんだこの音楽」

スポットライトがつく

その明かりに古川がフリップを持って入ってくる。

中村の写真(25歳)と書いてある。

以後、フリップはそれから生まれた頃にどんどん戻っていく。

 


中村「(できれば中村役の人の、実際その頃のエピソードを話していく感じで)」

古川は真顔でめくり続ける。

 


中村「うわー懐かしいなー」

そして赤ん坊の頃。

赤ん坊の泣き声

中村の父と母の声が聞こえる。

母「見て、あなたとっても元気な子よ」

父「あー。見てるよ。(涙声で)」

母「もうあなた、この子よりも泣いてどうするんですか」

父「いや、なんていうか、生まれてきてくれたことが嬉しくて」

母「そうねえ。本当に生まれてきてくれて嬉しい」

父「ああ、嬉しい」

赤ん坊の笑い声

父「あ、笑った!笑ったよ!」

母「笑いましたねえ」

父「この子は、将来大物に育つなあ」

母「もう何を言ってるんですか」

父「なんとなくそんな気がするんだ」

母「もう。いつもあなたは、勝手なんですから。私は別にそんなこと思ってないですからね」

父「じゃあ、何を願ってるんだい」

母「そうね。ただ健康で居てくれさえ、そう健康にいてくれさえいればいいわ」

父「そうだな健康で、健やかに育ってくれたらそれでいい」

中村「ちょっと、止めて」

母「健やかに育ってくれたらそれだけでいい」

中村「ちょっと止めて、止めて、止めろつってんだろ!!!」

 


無音になる。

古川がスポットライトの中立ち尽くしている。

中村「・・・・・・もううんざりだ。何が過去はユートピアだ。こんな、叶えられなかった夢の空手形を見せつけるようなことして何が楽しい」

古川「・・・」

中村「ああ、そうですよ!健やかに育ちませんでした。はいはい、僕は親不孝者です。あーそうですよ。親不孝者だ。腹を痛めて生んだ母の夢も、血反吐吐いて稼いだ父親の金も踏みにじってのうのうと生きているのが今の僕だ」

古川「・・・」

中村「戻せよ。今に戻せよ。もううんざりだから。もう親の声なんて聞きたくない」

古川「・・・」

中村「なんかしゃべれよ」

古川「本当にいいの?」

中村「何が」

古川「今に戻って本当にいいの?」

中村「いいに決まってるだろ」

古川「じゃあ、2017年に戻してくださーい」

 


巻き戻しの音が大音量で鳴り響く。

 


その音に合わせて、古川がはける。そして社会ってTシャツを来た人が現れる。

巻き戻しの音が止む。

 


中村 社会マンと二人っきりになる。

 


中村「・・・」

社会マン「・・・」

中村「あの・・・どちらさまですか」

社会マン「あ、申し遅れました。私、こういうものです」

社会マン 名刺を渡す。

中村「あ、社会マンさん。なるほど」

社会マン「・・・」

中村「・・・」

社会マン「・・・」

中村「・・・あ、本日、名刺の方切らしていまして」

社会マン「社会の鉄槌キック!」

中村にけりを入れる。

中村「痛え!」

社会「社会人たるもの、息は切らしても名刺は切らすな、それがTHIS IS 社会!挨拶オア社会!社会マン!」

社会マンと名乗りの後、爆発音。

中村「・・・すいませんでした」

社会マン「わかればよろしい」

中村「あの・・・」

社会マン「・・・なんだね」

中村「次はどうしたら・・・」

社会マン「・・・」

中村「・・・」

社会マン「社会の鉄槌パンチ!」

中村にパンチを入れる

中村「痛え!」

社会マン「社会人たるもの常に次の行動を考える!考えないやつは即死刑!THIS IS 甘くない社会!ブラックオア社会!社会マン!」

爆発音

中村「・・・すんませんでした」

社会マン「わかればよろしい」

中村「・・・(黙っている)」

社会マン「・・・(中村を見ている)」

中村「・・・・・・」

社会マン「社会の鉄槌エクスカリバー!」

中村切られるモーション

中村「痛え!」

社会マン「社会人たる者、わからなかったらすぐに聞きに来る!クエスチョンオアダイ!THIS IS 正論!正論オア社会!社会マン!」

爆発音

 


ビービー!とブザー音。

社会マン「うん!?お前の体から社会不適合者のパワーがみなぎっているようだ!何何~?ケアレスミスの連発~?いつもびくびくしている~?その癖朝早くから来ない~?その他上げ続けたら山ほどある~?お前~毎日毎日ミスばっかりだな~!」

中村「あ、ハイ」

社会マン「これは必殺技、エンド・オブ・マンカインドを使うしか無いようだな」

中村「なんですか、え?エンド・オブ?」

社会マン「エンド・オブ・マンカインド!!」

 


社会マン、 中村を倒して、マウントを取り顔を殴り続ける。

社会マン「エンド・オブ・マンカインド!エンド・オブ・マンカインド!エンド・オブ・マンカインド!」

 


お局ウーマン「待って!!」

社会マン「その声は」

 


Tシャツにお局と書かれたお局ウーマンが入ってくる。

お局ウーマン「社会マン、それまでにするのよ」

社会マン「お局ウーマン・・・!くっ・・・!中村!今日のところはここまでにしといてやる!」

社会マン 去って行く。

お局ウーマン「さ!中村くん、大丈夫?」

中村「あ、はいなんとか・・・大丈夫です」

お局ウーマン「そうよかったわ」

中村「あ、ありがとうございます」

お局ウーマン「全然いいのよ」

中村「あのまま、だとどうなってたか。本当、大変な目に遭いました」

お局ウーマン「・・・・・・」

中村「・・・・・・・あれ」

お局ウーマン「・・・中村君、もしかしてあれ?ただ怒られただけだと思ってる?理不尽に怒られただけだと?」

中村「(やべえって顔する)」

お局ウーマン「えー、あんなに言われてただ怒られただけって思ってるの、えー?信じられない!えー!うそー!!ちょっとありえないんだけど」

中村「え、違うんですよ」

お局ウーマン「何が違うの何が違うの何が違うの~?」

中村「いや、そういうことじゃなくて」

お局ウーマン「入社してから~ずっと見てたけども~中村君の態度って問題あるよね」

中村「いや、そうじゃなくて」

お局ウーマン「いやじゃなくて」

中村「はい・・・」

お局ウーマン「ずっと受け身だし。なんかさ、全体的に感謝の気持ちが足りてないじゃない。それがありえないんだけども~」

中村「(不服そうな顔をしている)」

お局ウーマン「なんか~もう~本当やってけないよ~この会社だけじゃなくて、社会全般において。わかるのー、私わかっちゃうんだよねー。本当わかっちゃうから~うん~うん~」

中村「ちょっと、戻して」

お局ウーマン「何言ってるの~まだ話合いは終わってないよ~」

中村「早く戻して!もう無理だから!早く現在に戻して!戻せ!戻せよ!!!」

 


巻き戻す音が聞こえる。

音に巻き取られるように消えていくお局ウーマン。

 


1人取り残される中村。

中村 巻き戻しの音の中、目を閉じている。

 


巻き戻しの音が止む。

目を開ける。

中村「・・・夢?」

 


7 心療内科

 


医者が入ってくる。

医者「それはどすねえ~抗うつ剤の副作用どす~」

中村「はあ・・・」

医者「抗うつ剤の副作用で悪夢をとにかく見るんどすよ」

中村「そうなんですか」

医者「抗うつ剤を飲むといわゆる浅い睡眠ばっかになるんどす。浅い睡眠の時に人は夢を見るんどすが、今って精神状態が最悪どすよね?」

中村「ええ」

医者「だから、どす。夢をよく見がちな上に、精神状態が悪いから悪夢を見がちなんどす」

中村「そんなことってあるんですか?」

医者「あるんどす」

中村「はあ」

医者「みんなによくあることどすからね。大丈夫、大丈夫、次第に悪夢は見なくなるどすから」

中村「そういうものなんですか」

医者「そういうものどす。にしても。」

中村「にしても?」

医者「想像力、豊かどすね」

中村「はあ」

医者「じゃあ、お薬の方増やしとくどすね」

中村「はあ?」

医者「もっと飲むどす」

中村「なんで」

医者「そういうものどす」

中村「そういうもの」

医者「そう。治したいどすよね」

中村「治したいです」

医者「じゃあ、増やすどすね」

中村「はあ」

医者「じゃあ、また二週間後に来るどすよ~」

 


医者はけていく

 

 

 

8 居酒屋

 


石渡が入ってくる。それと同時に大きくなる居酒屋の音。

石渡「あー待たせてごめんごめん。なんかトイレめっちゃ混んでて」

中村「・・・あれ?」

石渡「おい、どうしたぼーっとして」

中村「ここどこ?」

石渡「鳥貴族」

中村「へ?」

石渡「しっかりせえって。お前、そこまで病んでるの?」

中村「いや、さっきまで病院におった気がして」

石渡「ほんまに大丈夫か?」

中村「あー・・・大丈夫・・・」

石渡「無理すんなよ」

中村「うん」

石渡「最近は飯食べれてる?」

中村「まあ、意外と抗うつ剤飲むと腹が減るから食べちゃうんだよね」

石渡「そうか。食べれてるんやったら十分やわ」

中村「ってかいっしゃんは、どうなん?」

石渡「どうって」

中村「なんていうか、人生」

石渡「人生ってなんやねん」

中村「人生は人生やけども」

石渡「まあ、俺は、まあ・・・うーん・・・」

中村「大変?」

石渡「大変やな」

中村「残業とか多い?」

石渡「多いで-。毎日やわ」

中村「職場の環境はええの」

石渡「最悪」

中村「まじかよ」

石渡「上司は俺のこと嫌いだし、同世代はいないし、社内がぎすぎすしてるし、ノルマは多いし」

中村「まじで、大丈夫?病まへん?」

石渡「まあ、いまんところは」

中村「あの、なんで耐えれてるの?なんか秘訣あるの?」

石渡「秘訣言うたかって、まあ、なんとかやれてるってくらいやで」

中村「なんとかやれる?」

石渡「まあ、俺はな」

中村「辛くない?」

石渡「だから辛いよ」

中村「あのさ・・・もう、全部嫌になってしまわない?」

石渡「なんやねん、急に」

中村「全部が全部嫌になったりせえへんの?」

石渡「・・・なるよそりゃ。毎朝嫌やし、日曜の夕方から憂鬱になるし、謝ってるときとか何してるんだろうって思うけども」

中村「けども」

石渡「それを言ってたら、保たへんやろ、心が」

 

 

 

居酒屋の周りの音とノイズが大きくなって暗転。

 

 

 

9 卒業旅行

 


全員「最初はグー!じゃんけんぽん!」

 


明転

 


明るくなると古川がじゃんけんで一人勝ちしている。

 


古川「っしゃ~!」

3人「うーわつえ~」

古川「じゃあ、お題言うからなー」

3人「古川のお題むずいからな~」

古川「えーと今から、人工知能が自我を持ち始めたって設定でエチュードします」

3人「え、むずない?」

古川「で、私と、中村が人類で、石渡がマザーコンピューターで、田沢が死にかけのAIBO

田沢「ちょい、俺だけ難易度馬鹿高くない?」

古川「いくよー!よーいスタート!」

 


(2分ほどエチュードシーン)

 


古川 2分経つか、もうどうしようもなくなったら手を叩く。

 


古川以外3人「(感想を言う)」

古川「やっぱ楽しいなーこのメンバーでやるエチュード

石渡「毎回、死屍累々やけどな」

田沢「なんで俺だけ毎回むちゃぶりなん」

古川「ぜったい答えてくれるからやな」

中村「いやいや言うて毎回はずさへんからなー」

田沢「いや、おれ、必死やで?」

石渡「お前は必死な方が輝く」

田沢「なんやねんそれ」

中村「ってか俺らこれ4年で何回くらいやったんだろうな」

古川「えー、どれくらい?」

石渡「まじで100は普通に超えてるんじゃね?」

田沢「4人集まったら絶対にエチュードやってたからな」

中村「あほやな」

石渡「ほんまやで」

中村「大学生やったらもっとましなことしたらよかったのに」

古川「私はこれでよかったと思ってるよ」

石渡「えー?」

古川「こんな風に、すぐにエチュードできるような友人がおってよかったなーって思ってる」

田沢「めっちゃエモいこと言うやん」

古川「いやまじで。だってこんなん普通やらへんやん」

石渡「まあ、せやなー」

古川「だから、よかったなって、思ってる」

田沢「だからめっちゃエモいこと言うやん」

古川「ちゃかさんといてー」

中村「じゃあ、もっとエモいこと言っていい?」

石渡「何?」

中村「俺ら、この卒業旅行終わったらばらばらになるけども、また4人集まったら・・・エチュードやろな」

3人「えっも!!」

 

 

 

病院の受付「中村さーん一番へどうぞ~」

 


10 医者

 


病院で医者と話している中村

 


医者「中村さん、このテストを受けるどす」

中村「はい」

中村 テストを受ける。書き終わってテスト用紙を医者に渡す。

医者「中村さん。よく聞くどすね。中村さんは」

の声がどんどんフェードアウトして音楽が被さって(イメージ50/50と言う映画のがん宣告シーンみたいな感じ)医者の言葉は全く聞こえない。

中村は呆然とする。

一通り説明を受けた医者から薬を貰う。

貰ったまま動けない中村。

医者ははける。

 

 

 

中村 電話を取る

中村「はいもしもし。なに?おとん?どうしたん。ああ、ちょっとメンタルやったから休職することにしたよ。・・・大丈夫なんかって、何が?いや、クビとかそういう話をしてるんじゃないねん。行けなくなったから会社に。・・・だから、そんなに休んで大丈夫なんかじゃないねんって、そもそも行けなくなったって言ってるやろ!もうええから!あーわかったわかった!!あーもう!!」

 


電話を切る

 

 

 

中村「ああーくそ!」

中村がいらだって部屋を歩いてると歓声が聞こえる。

 


ナレーター「さあ始まりました!メンヘラストラックアウト!父親の心無い言葉で傷ついた中村選手は怒りにまかせて何を投げるのでしょうか。おっと、紙くずを手に取った。投げるか!いや、投げない!本を手に取った!その本はまだ読んでないやつだぞ!投げるのか・・・!いややっぱり投げない!このまま何も投げずに終わるのか!おっと・・・冷蔵庫に向かいましたね・・・お茶でも飲んでクールダウンするつもりですね。これはノーゲームでフィニッシュか!おっと氷を取りだそうとしてますね、あっ!氷が固まってとれない!いらだちが高まっていきます!あ!氷を掴んで!投げたー!投げたー!投げたー!(ここの三連発、中村はアングルを変えるみたいに体を動かして)見事壁に氷がストライク!!!怒りの二枚抜きだー!!ではメンヘラストラックアウトまた次回お会いしましょうー!」

 


中村 肩で息をしながら、横になっていく。

 


中村「くっそくそくそ!!」と太ももを殴る。

痛がる中村。

 


中村「あーなんでや!なんでや!なんでや!なんでや!」と叫びながら徐々に泣き声になっていく。

 


電話の音

 


中村 電話を取る。

 


田沢「俺や」

中村「田沢」

田沢「今週の土曜空いてる?」

中村「空いてるけど」

田沢「すき焼きするぞ」

中村「え、どこで」

田沢「おまえのいえで」

中村「はあ?」

田沢「いや、だって、移動させるのわるいやろ?」

(と言いながら、徐々に徐々にすき焼きがセッティングされていく)

中村「いや、でも」

田沢「大丈夫、大丈夫。ほら、ほらみてみ、セッティングされていくやろ」

古川「中村くん、心配せんでええよ」

石渡「俺らがやったるから大丈夫大丈夫」

中村「あ、ありがとう」

田沢「じゃあ、というわけで、すき焼きスタートしよか」

石渡「ちょいちょい~、まだできてないって!」

田沢「まじで!」

古川「田沢はいつもせっかちやからなあ」

田沢「ごめんやんごめんやん」

中村以外の3人が笑う。

中村「あのさあ」

3人「なに?」

中村「これって、現実?それとも悪夢?」

3人 間をおいてから笑う。

古川「もうーなにいってんの現実に決まってるやんか」

石渡「この日にやろうって前から話してたやんか」

田沢「やっぱ中村疲れてるねんな」

中村「いや、わかってるねんけども、なんか頭がぐちゃぐちゃしててな」

古川「今日は食べよ!食べて元気だそ」

石渡「肉いっぱい買ってきたからな!好きなだけ食べれるし!」

中村「ありがとう」

田沢「あっ!あとで石渡と古川は俺が立て替えた分払えよ」

石渡「ごちになります」

古川「なります」

田沢「おい、まじで、やめろって!絶対にはらえよ!」

中村 笑う

3人黙る

中村「いや、本当ありがとう。俺のためにこんなのすき焼きなんて開いてくれて」

石渡「いいよ、いいよー。別に気にすんなって!」

古川「中村のことみんなで心配していたし」

田沢「ほんまやで、まさかこんなことになるなんておもわんかったからほんまに心配してるんやで」

中村「それは、俺も同じ」

 


四人笑う

 


石渡「だんだん出来てきたんちゃう?」

古川「あ、いいにおい」

田沢「夢いっぱいやな」

中村「夢あるなあ」

石渡「卵回すわ」

田沢「おっ、さんきゅー」

 


4人に卵回っていく。

 


田沢「そういえば卵のいい割り方って知ってる?」

中村「え、そんなんあるの」

田沢「あんねん」

石渡「割り方なんてなんでも一緒ちゃうん?」

田沢「一緒ちゃうねんちゃうねん。大学でそういう研究」

古川「え、どこの大学?」

田沢「早稲田」

古川「うっそ~」

石渡「アカデミックすぎひん?」

田沢「それがほんまやねんって。まあ、学生がやってたやつやけど」

中村「なんや」

田沢「でもでも、ここからやねん。話は。でね、俺らこれまで卵割るときに斜めからいってたでしょ、こういう感じに」

石渡「はいはい」

田沢「だめなんだって」

古川「え、これじゃだめなん?」

田沢「無理、生きていけない」

古川「そんなに?」

田沢「正しいやり方は、これ(90度に振り下ろすモーションを行う)」

中村「なにこれ」

菅原「90度」

石渡「は?」

田沢「は、じゃねえって。90度がいい角度なんだよ」

古川「えーなんか思ったのと違う」

田沢「逆にどういうの想像してたんだよ」

古川「なんか、すっごいやつ」

田沢「うっすいなあ」

石渡「で、90度がいいの?」

田沢「そう。まじで。90度の角度で90度の物にぶつけるのが、卵が一番よくわれるんだって。」

古川「へー」

石渡「怪しいなあ」

田沢「いやいやいや、90度、いい悪いべつにして、俺ら新しいこと取り入れていかないとやべえぞ。脳細胞すぐ死ぬぞ」

古川「これくらいで脳細胞死ぬんだったら死んでいいかな」

田沢「脳細胞殺しに行くなって」

 


中村 90度で割る。

 


石渡「あっ」

田沢「中村、あ、今の90度?」

中村「うん」

田沢「どう、割りやすい?」

中村「あー、まあ、なんか割りやすかった」

田沢「ほら!」

中村「気がする」

古川「ほらー」

田沢「えー」

中村「あーでもこっちの方が割りやすいよ。なんかぱかっていったし・・・」

古沢「田沢、中村に気つかわせてるやん!」

田沢「あー!気をつかわせちゃだめなときにすまんな!俺わかんないしそういうの!」

中村「いや気にせんで、本当、うん」

 


4人 なんとなく間が生まれる。

 


石渡「・・・あー。とりあえず食べよか。」

古川「食べよ!食べよ!」

田沢「あー俺、取り分けるわ!中村!肉多めの方がええよな!」

中村「あ、ありがとう」

石渡「元気出るし肉食べとけよ~」

古川「さっきも言ってたけど、今日肉いっぱいあるし、遠慮ええからね」

中村「ありがとう」

石渡「遠慮するなよー」

田沢「じゃんじゃん食べろよー」

中村「ありがとうー」

 


とりわけてもらっている中村にスポットライトがあたる。

(その間に3人は部屋に置いてある人形をそれぞれ持つ)

 


中村「こんな風に、友達に親切にしてもらっているのに、頭の中では、ずっとお医者さんから言われたことがぐるぐると回っていた。ついに言われてしまった言葉を。あの言葉を」

 


うさぎ(石渡)「中村ぴょん!あなたの病名を言うぴょん!」

中村「はい」

ねこ(古川)「あなたの病名は発達障害だにゃん!」

中村「発達障害?」

ペンギン(田沢)「いわゆるADHDってやつぺん~」

中村「ADHD?」

うさぎ「注意力欠如多動性障害だぴょん」

ねこ「忘れ物が多いことも」

ペンギン「ミスばっかりしてることも」

うさぎ「段取りができないことも」

ねこ「学校でうまくいかなかったのも」

ペンギン「就活うまくいかなかったのも」

うさぎ「社会にでてうまくいかなかったのも」

ねこ「全部、全部、あなたが発達障害だったからだにゃん!」

中村「それって、治るんですか?」

うさぎ「治らないぴょん!」

ねこ「一生付き合っていくにゃん!」

中村「え・・・」

ペンギン「というわけでこの薬を飲むんだペン!」

中村「なんですかこれ?」

うさぎ「ストラテラだぴょん」

中村「これを飲めば治るんですか?」

ねこ「だから治らないにゃん」

ペンギン「でも、押さえることができるペン」

うさぎ「その代わり」

ねこ「想像力は押さえられる」

中村「はあ」

ペンギン「あなたの頭を静かにするんですから、それくらいひつようでしょ」

うさぎ「中村さんがまた社会に戻るためには必要なんです」

中村「社会に適応するためにはその薬を飲まないとだめなんですか」

3人「だめです」

中村「あ、はい」

3人「じゃあ、飲んでくださいね。社会に適応するためだから」

 


3人は消えていく。

 


中村「僕の手元には薬だけが残った。これを飲めば、僕の頭の中は静かになって、それで社会に適応できるらしい。でも、でも、でも」

 


照明が戻る。

3人は飯を食べてる。

中村はうつむいている。

石渡「・・・中村?」

古川「どうした?」

田沢「どうかしたか?」

中村「・・・俺、この前、病院行ったんだよ。そしたら、発達障害って言われて・・・正直、わけわかんなくて、でもこれまでのことを考えたら、全部あてはまっててさ。あ、俺の生きづらかったのってこのせいだったんだってわかって。楽になったよ。正直、楽に。でもさ、同時に薬出されて。これを飲めば社会に適合できます~なんて言われて。あー俺って薬漬けにならないと社会には適合できないんだーって思っちゃって。ばからしくなっちゃった。なんかさ、もういいやーって思っちゃった。」

石渡「・・・何が?」

中村「もう、生きていくのが馬鹿らしくなった。」

 


 


中村「あ、死にたいってわけじゃないよ。死にたくはない。痛いの嫌だし。でも、もうなんか、嫌だ。何もかも嫌だ。発達障害も、薬漬けにならないと社会に適合できないって言われるのも、こんな生活も、こんな身体も、こんな人生も、全部全部嫌だ。だから、もういっそのこと壊れて欲しい」

石渡「えーと、やっぱり何が?」

中村「世界が」

そういった瞬間から、徐々に照明が変わっていく。

そして音響もまじっていく(ビームの音や爆発音)

中村「なんかさ、ある日突然、宇宙人なんかがやってきて、あ、世界をめちゃくちゃにしていくんだよ。ニューヨークは消滅、ロシアは宙に浮かんで、ドイツも全国民が液体になってとか、そんな風に。もうめちゃくちゃにやられるの。で、俺も、その中で、死ぬ。そうしたら、死ねる。消えれる。この世界も消えるし、俺も消える。でもさ、そんなことしたら・・・みんなも消えちゃうんだよね」

(照明、音響戻る)

 


 


中村「だから、そんなことを考えてる自分も嫌になる。もうね、どこにも動けないんですよ。なんか、もう嫌だなー。全部嫌だなー。あ、本当ごめん。飯中に、こんな話して。食べよう。食べよう・・・ってむりか、こんな重たいこと言った後に。あー、もうほんとう嫌だ」

古川「私ね、今の職場の50歳のばばあが毎日死ぬことを想像してる」

みんな古川を見る

古川「その50歳のばばあ、本当頭おかしくて、毎日私にぐちぐち言ってきて、そのくせ、自分は新しい仕事のやり方とか学ぼうとせず、全部私に振って、仕事をやったらやったで「若い子はいいね~すぐ覚えれて~」とか言ってきて、その癖自分は歳の甲だとかなんだとか言って、この会社を回してるのは私だ~とか言い出して、はぁ何言ってんだよって、私だから、毎日想像してる。殺し方想像してる。首を絞めて殺したし、ナイフで腹を何回も刺したし、煮えたぎった油をぶっかけたことも、あと、裁縫針でちくちくと刺し殺したりとか」

田沢「うわ、それ痛え。想像したくねえ」

古川「ちくちく、ちくちくーって」

田沢「あーやめて。マジで無理」

古川「もう毎日殺してるうちに、本当キツくなってきた。もう、私も限界だなーって思ってる。私さ、言ってなかったんだけども、今度ついに心療内科行くことなって」

 


 


石渡「・・・まじで」

古沢「うん」

中村「・・・予約取るの難しかったでしょ」

古川「難しかったー。二週間後しか無理ですーって言われて難儀だったー」

中村「キツいの今だって言ってるのに、そっから二週間とかキツいよね」

古川「うん。だから今、本当限界(笑いながら)」

中村「あー」

古川「だから、中村くんが言った、もう全部壊してしまいたいーってのすっごくわかる」

田沢「俺は、そういうのは無いけども。でも、たまによ、俺の人生ってこんな風に終わっていくの?って日々思ってる」

3人「あーわかる」

田沢「なんかさ、もっと人生ってすげえ可能性に満ちてた気がしたんだけども。もう、どんどん収束していってる感じが日々してて。だから、俺も、共感はしたよ。今の中村の言葉。でも、俺も死にたくはないなー」

中村「ふふふ」

石渡「あ、これだと俺もなんか言う流れか」

古川「流れとかないよ」

石渡「でも、なんか言っておくよ。俺はこの前中村と飲んだときにさぽろっと言ったけども、まともに受け止めると限界だと思ってて、でもそれって裏返せば、まともに受け止めきれないことを日々やってるってことじゃん。だから本当くそだなって思ってる」

古川「なんだ、みんな限界じゃん」

 


4人笑う。

 


中村「そっか、みんな限界だったんだなー」

田沢「俺らやっぱ気い合うな」

石渡「合わんかったら、こんな長いこと付き合いないよ」

田沢「そっか」

中村「でも、どうしよね。こんな限界だったら」

古川「・・・エチュードしない?」

石渡「はあ?」

古川「やろうよ、エチュード。そのさっきの中村の考えてた妄想のエチュード。一旦、想像上でも世界壊しちゃおうよ。」

石渡「なんで?」

古川「一人だと、気が狂っちゃうけども、みんなでやればそれはエチュードになるんだよ。それって凄くない?そうやって書き換えようよ」

田沢「何を?」

古川「みんなが嫌な現実を!一旦壊しちゃって、それから、もう一回頑張ろうよ。想像力で、壊して、書き換えようよ!」

中村「・・・でも、俺はみんな殺すのは嫌だし」

古沢「だから、逆の」

中村「逆?」

古川「中村が、私たちを最終的に守るエチュード。そしたら、世界も壊せるし、みんな助かるし、一石二鳥。中村、エンディングは変えれるんだよ!」

中村「・・・やるか。エチュード

田沢「じゃあ、やる?」

中村「うん」

田沢「とりあえずすき焼き食べよか」

中村「OK」

 


4人 ばくばく食べ始める。壮大な音楽が流れながら暗転する

 


明転すると、田沢が卵を持っているしゅごーと言っている。

 


田沢「卵星人だエッグ~、世界を壊すでエッグ~」

田沢の渾身のビーム音。

その後、うわー!という人々の声

 


田沢「まずはアメリカを燃やしてしまうでエッグ~」

石渡「あっ、豊かな国のアメリカが、燃やされていく!」(石渡はタンクトップ姿になっている)」

古川「きゃー!きゃー!」(白衣に眼鏡の姿)

田沢「次はロシアを宙に浮かしてやるでエッグ~」

石渡「あっ!豊かな大地を持つロシアが宙に浮かんでいく!」

古川「きゃー!きゃー!」

田沢「次は若手社員をいびることに生きがいを感じている老害を全員、粉にするでエッグ~」

石渡「あっ!若手社員をいびる老害がみんな粉になっていく!!」

古川「しゃーっ!しゃーっ!」

石渡「このままじゃ、俺たちに勝ち目はないのか・・・」

古川「石渡軍曹、例の兵器を使う時ではないでしょうか」

石渡「古川博士・・・!よし、あの兵器を使う時だ!最終兵器中村いけー!」

中村が入ってくる。

中村「とぅ!最終兵器中村登場!」

石渡「(無線のような手つきで)どうだ、最終兵器中村、準備はできてるか?」

中村「ああ!いつだって、戦場にもピザの配達にもいけるぜ」

古川「(キーボードを叩く手つきで)システムオールグリーン!最終兵器中村出動します!」

石渡「いけー中村!あの卵野郎をぶちのめすんだ!」

中村「とおっ!」

田沢「おお~なんか妙な兵器があらわれたでエッグ~」

中村「俺が来たからには好きにはさせないぜ、うぉら!」

中村、田沢に攻撃するが、田沢の華麗な動きに翻弄される

 


中村「くっそ!攻撃がきかないどころか、今の動きのせいで、石渡の会社が潰れてしまった!」

石渡「なんてことだ!」

古川「コラテラルダメージよ!」

 


もう一度攻撃する

 

 

 

中村「くっそ!攻撃がきかないどころか、今の動きのせいで、田沢の会社が潰れてしまった!」

石渡「なんてことだ!」

古川「コラテラルダメージね!」

中村「石渡軍曹!全くこいつに攻撃がきかねえ!どうしたらいいんだ!」

石渡「くそ・・・あの卵野郎・・・うん、卵・・・?90度だ!!」

古川「はっ!!割れやすい角度こと90度!」

石渡「最終兵器中村!よく聞くんだ!・・・90度だ」

中村「90度・・・はっ!了解だぜ軍曹!うおー!」

田沢「やめるでエッグ~!」

中村、田沢の腕から、卵を取って、取り皿で割る。

 


石渡「やったー!」

古川「やりましたね!」

中村「やったぞー!!」

田沢「・・・ふふふ・・・ふふふ・・・」

中村「・・・何・・・?」

田沢「まだ私の真の正体に気がついてないですね・・・」

中村「何?」

田沢「私の真の正体・・・それは・・・(服を脱ぐと下に社会マンと書かれたTシャツ)社会マンだ!!」

中村「なんだって!!」

石渡「なんてことだ、やつは、やつは・・・」

古川「社会マンだったなんて!」

田沢「エンド・オブ・マンカインド!」

 


田沢の攻撃に中村やられる

 


石渡「最終兵器中村!」

する「最終兵器中村が社会に負けてしまう!」

田沢「中村~社会に負けるがいい!」

田沢 大きく拳を振り上げる。

古川「いや~!」

 


田沢の拳をキャッチする中村

 


田沢「何!」

中村「俺は、社会には負けやしない!俺は、社会には、負けやしない!俺たちは社会には負けやしないんだ!!」

田沢「なに~!」

中村「俺も、石渡も、古川も、田沢も、みんなも、こんな社会には負けやしないんだ!!俺たちは無敵なんだ!!そしてこれは俺たちの光だ!!」

 


そういって、部屋の隅っこにあった自転車を持ち出す。

立ちこぎで漕いで光を出す。

 


中村「ヒューマン・ライツ!!」

ともるライトの光 そしてそれに呼応する照明。

 


田沢「うわー!光にきえていく~しゅわ~!」

田沢 社会マンのTシャツを脱ぎ捨てる。

石渡「やった-!社会マンを撃破したぞ!」

古川「ありがとうー!最終兵器中村-!」

石渡「ありがとうー!」

 


撃破し、照明は元に戻る。それでも、自転車を全力で漕ぐ中村。

 


石渡「中村?」

古川「中村くん」

田沢「中村」

中村「俺も、石渡も、古川も、田沢も、ここにいない友達も、もう会えなくなった友達も、みんな、みんな頑張れ」

石渡「中村」

中村「俺、頑張るから!とにかく頑張って生きるから!」

古川「中村くん」

中村「とにかく負けんな、逃げてもいいから絶対に負けんなー!」田沢「中村ー!頑張れ-!」

石渡「中村頑張れ!」

古川「中村くん頑張れー!!」

中村「俺は、この世界が嫌いで、この社会が嫌いで、何よりも自分が嫌いだけども、それでも、たまに、こんな嫌いな世界でも、社会でもなにより自分でも、いいなって思う瞬間があって、その瞬間のために生きてて、でもそれって、しんどいのとか、つらいのとか、そんなのに比べたらあまりに少なすぎて!でも、それでも、その一瞬間が、あまりに愛おしいから!今みたいに、友達が一緒に遊んでくれることや!美味しい飯を食べたときや!手をつなげた時や!夜の三時のなんてことない空気や!そんなの、そんなのをまだまだ味わいたいから!みんなにも味わって欲しいから!だから頑張れ!みんな頑張れー!!」

3人「頑張れー!!」

 


音楽流れる。世界が一瞬、光り輝くような照明。そして暗転。その間も、自転車のライトは光り続けていて。そして、ライトも消える。

 

短編小説『ニドマキは喋るのをやめない』

「結局さ、竹本さんは最後まで俺のことが好きだったと思うのよ。でも、あえて俺のことを思って振ったんだよ。そうだよ。絶対」と言いながらニドマキは俺の家の冷蔵庫から勝手に取った卵を割って、かちゃかちゃと箸でかき混ぜる。

 ニドマキのこの勝手な振る舞いも三日目にして、もうあきらめの境地に達したというか、指摘するだけ無駄だと諦めた俺はベッドに寝転びながら、奴のどうでもいい持論を延々と聞き続けている。

 


 三日前、ニドマキは突然俺の家にやってきて「フラれたから泊めてくれない」と勝手な理由で上がり込み、それから三日間は奴の独壇場だ。

 ニドマキは口を開けば、竹本さんという奴の元カノがいかに素晴らしい人間であったかを語り、そして時に怒りで感情のミキサーが狂い、竹本さんがいかに酷い人間だったかを語ったと思うと、ごめんごめんごめんと何度も謝りながら泣いたりするのだった。

 俺は最初こそ頷いていたが、20分もすればどうでもよくなってきて、部屋にある読みまくった漫画をまた最初から読み直したり、スマホでどうでもいい天気の情報や、Twitterの最新トレンドを漁ったり、そんなことでニドマキの演説を聞き流すことに終始したのだった。

 ニドマキは「なあ、アラタはどう思うんだよ」と俺に意見を求めるが、知ったこっちゃない。そもそも俺は竹本さんなんて女性を知らないし、なんならニドマキと友達になった覚えもない。

 

 

 

 ニドマキと再会したのは1週間前、近所のスーパーで俺が粗挽きミンチ肉を買いに行ったときのことだった。

 「おい!アラタ!アラタじゃん!」と突然、大きな声で叫ばれた。振り向くと、そこには金髪と黒髪のバランスが見事なプリンになった汚らしい男がいた。

 「俺だよ!俺!覚えてねえの!?」

 「誰?」

 「俺!ニドマキ!高校が一緒だったニドマキ!」

 そう言われても全くピンと来なかった。いぶかしげにニドマキと名乗る男を見つめていたら「え!覚えてねえの!3年の時、よく顔会わしてたじゃん!」

 まだわからなかった。

 「3年の時、俺、2組で、アラタは1組だったじゃん!俺、鳥屋の友達だったから、よく1組に顔出してたじゃん!」

 とか言い始めてやっと思い出した。元バスケ部かなんかの調子者の男。

 バスケ部を引退か、首になった後、鳥屋とかいう無口な男とよくつるんでいた奴だ。

 でも、こいつと話したことは一度もないはずだった。

 「俺、お前と話したことないよな」

 「え!まじで!?」

 ニドマキは信じられないような表情をした。

 「喋ったことあるって!」

 「どこで」

 「あれだよ。ノート1回借りたじゃん」

 ノート?

 「国語のノート!まじで単位やべえってなった時に、俺が必死こいて頼んだら、貸してくれたじゃん!」

 「はあ」

 国語のノートの貸し借りの話をし始めたけども、俺たちの年齢はもう28歳になっていた。10年前のことだ。今更貸し借りしたノートのことを覚えている28歳がどれだけいるだろう?

 「え!アラタってこの辺住んでんの?」

 めんどくさいことになったと思った俺は、なんとか話をずらそうとした。

 しかしこのニドマキって人間のめんどくささと記憶力の高さはどうかしていた。

 俺の全く覚えていない俺の話を延々とし、そして自分が今、パチンコで生計を立てているって話まで一気呵成に繰り出し、そして気がついた頃には。

 「アラタの家行っていい?」

 くそ野郎が。

 


 その日は、ニドマキを家にあげることは絶対にしなかった。「仕事がある」とか言ってごまかした。でも、家の前まではついてこられた。外からどこの部屋か丸見えなアパートに戻る姿もニドマキは目撃していたはずだ。あげなかったけども、俺がどこの部屋に住んでいるかは覚えたはずだ。10年前のことを昨日のことのように覚えている奴だ。こんなこと覚えるの造作もないだろう。

 そして俺は1つ嘘をついた。「仕事」なんてなかった。俺は無職だった。6年勤めた会社を俺はその時辞めていた。理由は特になかった。ただ辞めたかった。一度会社勤めというものから解放されたかったのだ。だから仕事なんてなかった。それでもニドマキを家にあげなかったのは面倒なことになるなと思ったからだった。そしてその予感は的中した。

 


 その日、その時、俺はちょうど白シャツにアイロンを当てていた。6年間やってきた習慣はもはや精神安定剤へと変わり果てていた。丁寧に、そして力を均等にかけ、白シャツを伸ばしていたその瞬間、奴はやってきた。そして泣きながら「もう駄目だ!」と叫び、先ほどのような理由を口にしながら部屋にあがりこんだ。俺の精神安定は一瞬にして崩れ去った。それから三日経った。

 ニドマキは部屋から出ようともせず、延々と喋り続けた。延々と喋り続けるのを聞いたせいで「竹本さん」は俺の夢にまで出てきた。

 「竹本さん」は黒髪ロングヘアーの身長がすらっとした女性で、くしゃっとした笑顔をし、そして何をするにしても肯定するような人間だったそうだ。

 俺の夢の中に出てきた「竹本さん」は俺が無職を選んだことも肯定してくれた。そしてくしゃっとした笑顔でこういうのだった。「私が頑張るから、アラタくんはゆっくり休んでいいよ」。

 そんな都合のよすぎる人間がこの世にいるはずがない。そんな童貞の妄想のような人間がこの世にいるはずが。

 

 

 

 俺は三日間の間、ずっと疑念を抱いていた。ニドマキの語る「竹本さん」というのは実像とかけ離れているのではないかということを。ニドマキは自分にとって都合のいい「竹本さん」を作り出しているのではないかということを。ニドマキは「なんでフラれたんだ」と時折叫んでいたが、それこそが答えで、何をするにも肯定していたわけではないのだ。彼女はもう疲れ果てていたのだろう。出て行ったこと、それが答えだ。そもそも28歳にもなってパチンコばっかりやってる人間のことを肯定する女性がこの世のどこにいる?

 ニドマキは「竹本さん」を曲解していたのだろう。ニドマキの中で都合のいい「竹本さん」がふくれあがり、めちゃくちゃ失礼なことをしまくっていたのだろう。今の俺にしているみたいなことを。

 結果、そのズレが最大限に広がった時、ニドマキはフラれたのだ。ざまあみやがれ。そして「竹本さん」こんな男と離れて正解だよ。この世にはもっといい男が沢山いる。頭をプリンにしたパチンコばかりやって自分の話ばかりしまくる男なんかじゃなく、もっとましな男が。

 


 味付けも何もしていないプレーンオムレツを作りながらニドマキは「竹本さんは俺のこと好きだったはずなんだ」と言い続けていた。そして「アラタはどう思う?」と時折付け加えた。

 何にも思わないよ。なんて言うと、こいつは泣き始める。1日目に嫌というほど味わった。だから俺は言う。

 「竹本さんはお前のこと最後まで好きだったと思うよ」

 そう言うとニドマキは満面の笑みになって「やっぱそうだよな!!」と喜んだ。

 どうでもいい。

 そしてもう限界だと思った。

 もう今日こそはこの家から出よう。ニドマキの話を聞き続けていたらこっちの精神がどうにかなる。

 俺はアイロンをかけてある白シャツを一枚選ぶ。

 「あれ!どっか行くの?」

 「散歩に行ってくる」

 「俺もついていっていいかな?」

 ふざけんなよ。お前から離れるために散歩するんだよ。

 「ってかさ、アラタ、仕事はどうしたの?」

 三日も居座って自分の話をし続けたニドマキもそろそろ気がつき始めたようだ。

 もし、俺が無職だとばれたら、ニドマキはどう思うだろう。

 ニドマキのことだ。「仕事に行かなくていいなら俺の話を聞いてくれよ!」と喜ぶだろう。くっそ。全部ニドマキが来てから、おかしくなっていく。

 俺は静かにただ暮らしたかっただけなんだ。仕事から離れてただ静かに暮らしたかっただけなのに。

 


 その時、インターフォンが鳴った。

 「はーい!」とニドマキが叫ぶ。なんでお前が叫ぶんだよ。俺はため息を付きながらドアを開く。

 するとそこには黒髪ロングヘアーですらっとした女性が立っていた。

 間違いない。

 「竹本さん」だ。

 いや、なんでここに?

 「すいません。ニドマキがここに来ていないですか?」と竹本さんが言い終わるか、言い終わらないかのタイミングでニドマキは「竹本さああああん!!!」と叫んでいた。

 ニドマキは泣き崩れていた。

 はあ?

 


 気がついた頃には、ニドマキと竹本さんと俺はテーブルを囲んでいた。竹本さんはニドマキが話していた人物よりも、とても知性的で理知的で落ち着きのある人物だった。

 しかし困ったことにこの女性はニドマキのことがどうやらとてつもなく好きなようだった。なんで?疑問は広がり続ける。しかしその答えを提示する前に話は前に進み続ける。おいおい、せっかくなんだゆっくりやろうぜ。そう思うが竹本さんも、どうやら自分勝手に話を進める性質らしい。

 竹本さんはパチンコばかりするニドマキを一度懲らしめてやろうと「別れる」と言って、家を飛び出したそうだ。と言っても、元々竹本さんは別に家を借りていたらしく、そこに戻っていただけだった。なんでそっちに行かなかったんだ?と尋ねると「考えが及ばなかった」とニドマキはくしゃっと笑いながら答えていた。馬鹿が。

 少し懲らしめるつもりで、家を離れ、昨日戻ってみたらニドマキはおらず、最初はパチンコにでも行ってるのかと思いきや、全く帰ってこなくて、今朝になって竹本さんの不安は最高潮。あちこち探しに出かけたそうだ。竹本さんはそりゃ走り回り、そして泣き崩れ、それでも立ち上がり、そしてふと思い出したそうだ。「あのアパートに俺の友人のアラタが住んでるんだ」と言っていたことを。

 馬鹿野郎。友人でもなんでもねえぞ。と言いたかったが、竹本さんは話しながら涙ぐむし、ニドマキは「俺のために・・・なんて馬鹿なんだ俺は・・・ッ!!」と泣きながら太ももを叩くし、なんだこれ。

 もう付き合ってられねえと、俺は「まあ、見つかったんだったらいいじゃないですか」と言うと竹本さんは「ありがとうございました!!!」とお辞儀を何度も繰り返し、ニドマキも「本当ありがとう!!!」と叫ぶ。何をありがとうと言われているのかさっぱりだ。

 ニドマキは「俺、もう、パチンコばっかりしねえ。ちゃんと働くから!竹本さんの貯めに働くから!!」といい、竹本さんは「うん!うん!」とウソ800を飲んだドラえもんのようにうなずき続け、俺は帰った帰ったと気持ちを押し殺しながら、二人を玄関先まで誘導。

 「アラタ!本当ありがとうな!また遊ぼうな!!」と言って、ニドマキはドアをしめた。遊んでいたつもりだったのか。あの野郎は。こっちの生活を三日間めちゃくちゃにしたことをただ遊んでいたと言いやがった。くそ野郎め。

 


 そして静寂が訪れた。

 はぁ。やっと静かになった。やっと一人になれた。

 俺は三日間のノイズからやっと解放された。ニドマキがいなくなった部屋はこんなに静かなのかと驚いた。静かすぎて耳が痛いほどだった。

 自由になんでもできる。ただニドマキがこの部屋に残していった惨状をまずは片付けないといけない。

 ふとフライパンの上を見ると、そこにはニドマキが作っていた味付けのしていないプレーンオムレツが残っていた。

 俺は舌打ちをする。そして、ため息をついて、そのオムレツを皿に移し、食べることにした。

 一口食べる。味付けを何もしていないので、文字通り味気が全くなかった。

 くっそ。ニドマキめ。最後の最後までうるさい奴だった。

 三日ぶりに訪れた静寂はとても心地がよく、俺は背伸びをする。

 しかし、どこか居心地が悪く、妙に寂しい。寂しい?馬鹿な。俺はその考えをかき消す。ただ居心地が悪いのは確かだ。

 そしてニドマキが残していった味気のないプレーンオムレツがその居心地の悪さを更に加速させる。

 俺は居心地の悪さをかき消すように、冷蔵庫からケチャップを取り出し、プレーンオムレツに大量のケチャップをかけた。

 そうして食べたオムレツは、もはやただのケチャップで、俺はどうしようもない気持ちになり、残り半分はゴミ箱に捨てたのだった。

短編小説『くまくんとしゃけくん』

くまくんとしゃけくん

両目洞窟人間

 

くまくんはげんきなおとこのこ。きょうもあそびにでかけています。

「よーし、きょうはしゃけくんとあそぼう」

くまくんはさかなのしゃけくんにあいにかわへやってきました。

「しゃけくん。しゃけくん。あそびましょー」

くまくんがかわにむかってそうあいさつします。

「あ!くまくん!!あそぼう!あそぼう!」

しゃけくんがくまくんにこたえました。

「しゃけくんきょうはなにしてあそぶ?」

「いっしょにおよごうよ!」

「わー!たのしそうだねー!」

くまくんとしゃけくんはいっしょにおよぎはじめました。

すーいすい。すーいすい。

くまくんはしゃけくんのせなかをみておよいでいます。

「わー。しゃけくんおよぐのはやいなあ」

「えっへん。いっぱいれんしゅしてるからね」

しゃけくんはすいすーいとおよいでいきます。

くまくんはそんなしゃけくんをみながらおもいました。ぼくもしゃけくんのよういすいすいとおよぎたいなあ。

しゃけくんのおよぎかたをまねようとしてみますが、うまくいきません

「あははは。くまくん。それだとくまくんはおよげないよ」

「しゃけくん。どうしてなの」

「ぼくはこのひれをつかっておよいでるのさ。くまくんにはないだろう?」

くまくんはじっとてをみました。

くまくんにはひれがありません。

くまくんはかなしくなりました。

「ぼくにもひれがあったらなあ。ぼくもしゃけくんみたいにさかなになりたかった」

「さかなはたのしいよ。ねんじゅうみずのなかだし。でもぼくはくまくんのようにきにのぼりたかったなあ」

「しゃけくんもぼくみたいになりたかったの」

「うん。ぼくもくまくんにあこがれてるんだよ」

くまくんはおどろきました。

しゃけくんもだれかになりたいなんておもうことあるんだ。

くまくんはしゃけくんをみます。

すいすーいとたのしそうにおよぐしゃけくんもきにのぼりたいとおもうんだな

 

 

喰らえ。

 

 

えっ。いまのはなんだったのでしょう。

くまくんはおどろいてまわりをみわたします。

このかわにはくまくんとしゃけくんしかいません。

おかしいなあ。だれのこえだったんだろう。

くまくんはまたしゃけくんとおよぎはじめました。

「よーしくまくん。あのかわぎしまできょうそうだ!」

「まけないぞしゃけくん!」

ふたりはおよぎはじめました。さすがしゃけくんすいすいとおよいでいきます。

くまくんはしゃけくんのうしろすがたをみるばかりです

「さすがしゃけくん。はやいや」

 

 

喰らいつけ。奴の生き血を啜り飲め。

 

 

「だれー!?」

またこえがしたのでくまくんはよびかけてみます。でもだれからもへんとうはありません。

へんだな。なんだろう。

またおよぎはじめました。

「おいついてみなよくまくん」

「はやいよしゃけくん!」

くまくんはしゃけくんにひっしにおいつこうとします。

でもしゃけくんはそのさをひろげるばかりです。

くまくんはそんなしゃけくんをみていました。

さゆうにふれるからだ。ひかるひふ。てきどなにくづき。

くまくんはしゃけくんのいままできにならなかったからだつきをじっくりみていました。

どうしたんだろうぼく。

しゃけくんをみているとなんでかむねがどきどきしてきました。

 

 

喰らえ。その歯で奴の頭蓋骨を砕き壊せ。

 

 

 

「やったー!いちばんだー!」

しゃけくんがどうやらゴールについたようです。

「えっへっへ。やっぱりおよぎはぼくのほうがつよいようだねーくまくん」

くまくんはゆっくりゆっくりしゃけくんにちかづいてきました。

くまくんはじっとしゃけくんをみています。

ひとこともしゃべらず。じっと。

「くまくん。じっとだまってどうしたの。くやしいのかい?」

くまくんはしゃべりません。はのすきまからあらいいきづかいがきこえます。

しゃけくんは、くまくんのかおをみました。

あれ。くまくんこんなにこわいかおしてたっけ。

「しゃけくん。ごめんね」

しゃけくんがえっ?とききかえそうとしましたが、そのぎもんがこえになるまえにしゃけくんのからだはういていました。

くまくんはしゃけくんのからだをそのちからづよいうででなぎはらいました。

なんで。

しゃけくんの脳がその疑問でいっぱいになるころにはしゃけくんの体は石がひしめく川岸に叩き付けられていた。

しゃけくんの体内から枝が割れるときのような音が聞こえた。骨が折れたのだろう。

人生で味わったことのない痛みがしゃけくんを襲った。

叫ぼうとした。しかし、声が出ない。叩き付けられたときに喉をやってしまったのか。

息苦しい。息ができない。しゃけくんは無意識にえらをびたびたと痙攣するように動かしていた。水の中ではないからそんなことをしても無駄であることはわかっていた。びたびたびたびた。

しゃけくんは泣いていた。

なんでこんな目にあうんだ。さっきまで遊んでいたのに。くまくん、なんで。

しゃけくんは振動を感じた。

くまくんがこちらに近づいている。

くまくん、冗談ならやめて、もう助けて。また一緒に遊ぼうよ。

しゃけくんは願った。

しゃけくんの視界が大きな影で覆われる。

くまくんの体だ。

その時、しゃけくんは気が付いた。

もう彼が友達のくまくんではないことに。

彼が野生に目覚めた熊になってしまったことに。

ごりっ。

くまくんはしゃけくんの首筋に噛みつき、そこでしゃけくんの意識はフェードアウトした。

くまくんはしゃけくんを貪り喰った。しゃけくんの血潮を、肉を、その骨を貪り喰った。

喰らい終わるとくまくんは叫んだ。その咆哮に森の木々に休んでいた鳥たちが一斉に飛び去った。

 


カシャ。

 


その森から小さな音が聞こえた。

森から人間の男がカメラをくまくんに向けていた。

男はくまくんがしゃけくんを喰らう一連の行為をすべて写真に収めていた。

男の名前は田中正嗣。

世界中の自然をカメラに収めてきたカメラマンである。

鮭を喰らう熊の写真。

田中がこのカナダで撮ったこの写真は大きな反響を生むことになった。

 

「まさか、あんな反響があるんなんて想像もしませんでしたよ」

田中が現在68歳。今もなお現役のカメラマンである。

「まだあの頃は大学を卒業したばかりで、カメラマンとしては正直二流三流でした。くやしかったですよ。何枚写真をとっても、目の前に広がる世界の美しさを切り取ることができなかったんですから」

そんな田中にとってブレイクスルーのきっかけになったのがあの写真である。

「確か25歳のころです。もともとはカナダの森に取材に行くのが目的だったんです。森でキャンプをしていた時、遠くの川辺に熊がいるのに気が付きました。正直、怖かったですよ。でもあの時、生命の危機なんかよりも、写真を撮らなければならない、そんな衝動に襲われたんです。まあ若かったんですよ」

田中はカメラを夢中で向けた。シャッターを何枚も切った。初めて手ごたえを感じた。

「何枚もシャッターを切りながら、私は興奮していました。カメラを持ってから初めての興奮でした。今、俺は写真を撮っているんだ。これまで何千枚と写真は撮ってきたはずでしたが、そのとき私はそう思いました。その感覚は正しかった。写真家としての一枚目はあの瞬間だったのですから」

数か月後、その写真がネイチャー雑誌の表紙を飾ることになる。

熊が鮭に噛みついている写真。

弱肉強食がグラフィカルかつスタイリッシュに切り取られたその写真はたちまち大反響を呼んだ。

「もともとはネイチャー雑誌の表紙ですからね。まあ、評判になるといってもそれほどかなって思いましたが、違いましたね。次々と依頼が来ました。写真を撮る依頼ももちろんですが、それだけじゃなく私自身にも。まあ一番驚いたのは教科書に載せていいか?って話でしたけども。もう私はすぐに言いましたよ、ぜひぜひ!って」

田中の写真は小学生の国語の教科書に掲載された。田中が撮った鮭を喰らう熊の写真は老若男女が知るものになっていた。そして田中はあるとき旅先で思いもよらないものに遭遇することになる。

「北海道に取材に行ったときですね。お土産屋に寄ったら、木彫り人形がずらーと並べてあってへーと見てたらね、鮭を食べてる熊の木彫りがあったのよ。店員さんがこれ人気なんですよーって話しかけてきたんだけども、これ僕の写真だよって!」

田中の写真は一人歩きしはじめていた。各地で田中の写真をもとに作られた木彫りの鮭を喰らう熊がお土産になっていた。

「最初はショックでしたけども、今じゃ各地のお土産見て回るのが楽しみですよ。知ってますか?この木彫りの熊って海外のお土産屋でも作られているんですよ」

そう話す田中の背後にはたくさんの木彫りの熊の人形が飾ってあった。その熊たちの口には一様に鮭が咥えられていた。

「私もこの熊のファンなんですよ」

そう笑う田中は今も世界中を飛び回り続けている。

「世界にはまだ誰も見たことない美しいもので溢れている。それを撮るのが私の仕事です」

しかし田中は御年68歳になる。体力は持つのであろうか。

「昔に比べると無茶はできません。だからこそ、自分で行う体調管理が大切です」

田中は何か特別なことをやっているのだろうか?

「実はね、これを飲んでいるんですよ。青汁カプセル。毎日これを1錠飲むだけで身体がみるみるうちに元気になっていくんですよ」

もともと健康食品には疑いを持っていたという田中。青汁なんてのはもってのほかだったそう。

「青汁なんてね。飲みづらいと思ってたからね。でもね。この青汁カプセルは飲みやすい」

60歳の時に実は病気になった田中。だからこそ健康には人一倍気を遣うようになったとか。

「60で倒れた時に、あーまだ世界を僕は見てないなって思ったの。で、僕は運よく助かったからね。より長い時間この仕事をしたいと思ったの。でいろんな健康法を探してるときに出会ったのがこの青汁カプセルだったの。今は出会えて本当よかったと思ってる」

田中正嗣68歳。職業カメラマン。まだまだ現役。その気持ちと体を支えるのは青汁カプセル。

青汁カプセル通常60粒入りで3500円のところ、今ならなんともう2パックつけて3500円。

一人でも多くの人を健康にしたい。その思いからの大サービスです。

「青汁カプセル。あなたもはじめませんか?」

 

進捗日記 2019年5月5日

後輩の家で11時半まで寝てしまう。酒を入れたらよく眠れる。とはいえ、酒を飲むと自我が壊れる。そう思うとあんまり飲むべきではない。飲むと眠れる。飲むと壊れる。そう思うと、眠れなくてもいい気がする。

 

祖父母宅へ行く。

祖父母宅の庭の手入れの手伝いを1時間ほどした。

いい孫をやった。いい孫をやるといい気持ちになる。いい孫であること、それはまた良き人になるということなのだ。いい孫であることは私の目指すべき人間に近づくということなのだ。

 

草野腹々の『これは学園ラブコメです。』を読み終わった。

めちゃくちゃ面白かった!!

これは感想を書こう。でもどうやって書いたらいいかわかんないんだよなー。

とりあえず今年読んだ中だとかなり上位にくる食い込むくらいは面白かったです。

 

ご飯を食べて『いだてん』を見る。

すげーおもしろーい。

話のスピードの速さ、錯綜具合、情報量過多な感じ、クドカンのドラマだ!となる。

これまでちゃんと見てなかったのを後悔する。

でも再放送無理っぽいから、脚本集を出してほしいなと思った。なるべく早急に出してほしいー!

 

脚本、少し思いつく。

まだ少しのアイデアだけだ。

帽子いっぱいのジョークさえあれば脚本がかかるといったのは中島らもだったっけな。

とりあえず帽子いっぱいのなにかを考えなきゃいけない。

書き始めようと思う。

 

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