にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

父を見舞う。

 父の手術は無事成功した。執刀医から父の切った部位を見せられた。銀のプレートにのった父の内臓はまるで生ホルモンのようで現実感がなかった。「ここがガンです」と親指の先ほどの白い部位。この1cmそこらのもののせいで父が死の淵に立たされていたと思うとより一層わけがわからなくなった。死に至る病は無事切除できた。しかし執刀医曰く「手術が成功しても、再発のリスクがある」とのことだった。ここからは抗がん剤治療になるそうだ。

 


 二日後、父のお見舞いに行った。父は弱り果てていた。本当は一日前にも来るつもりだったのに、僕は遊びほうけてその疲れで眠りほうけてしまい、結局行かなかった。父は弱り果てていた。申し訳ないことをしてしまったと思った。後悔ばかり。いつもそうだと思う。優先順位がわからなくなってしまうのだ。僕はそれを治さないといけない。どうしようもないことになる前に、なんとかしなきゃいけない。

 父の顔を拭いたり、父に水を差し出したりした。それすらもできなくなっている父の姿は痛々しく思えた。

 30分ほど話した後に父が疲れてきたようだったので、話すのを一旦止めて、僕と一緒に来ていた弟は一度デイルームの方に行くことにした。

 デイルームで飲み物を買ってぼんやりしていると、看護師さんに連れられて歩行器でなんとか歩く父がやってきた。

 父はリハビリのために、周囲を歩いているそうだったけども、今日は僕らがいるとのことで頑張ってデイルームまで来たそうだ。

 父と椅子に座って話をした。デイルームの窓から遠くの河川敷が見えた。河川敷には多くの消防車が止まっていた。何かの練習をしているのかもしれないって話をした。テレビでは大学ラグビーの試合が流れていた。振り向くのもしんどい父に代わって弟がどっちが勝ったかを教えてあげた。

 父が歩行器を使って病室まで戻るのに付いていった。少し歩くのもしんどそうだけども、「息子達がいるので」と言ってなんとか父は頑張ろうとしていた。

 


 父を病室まで見送った。父の病室の窓から遠くの方に遊園地の観覧車が見えた。その遊園地に子供の頃何度も連れて行ってもらった。父とは中学生の頃から徐々に仲が悪くなっていった。でも、小学生の頃のどこかへ連れて行ってもらった記憶が強く残っている。

 映画に連れて行ってもらったことや、いろんな街に連れて行ってもらったことや、旅行したことや、音楽を聞かせてもらったことが。

 酷いことを言われたこともあるし、めんどくさいことも沢山あった。その記憶も強く残っている。でも、目の前にいるのは父だ。いろんなことがない交ぜになった父だ。

 その父には強く生きて欲しいと願うしかない。

 やっぱり願うしかないのだと思う。これからも大変だけども、強く生きて欲しいと願う。そして僕にできるのは、今、身体の自由が効く僕にできるのはそんな父をできるだけサポートすることなんだと思う。

 そしてできれば早いこと自立をして父の心配を1つでも減らすことなんだろうなとも思う。

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父は今、手術中。

 1月9日の13時20分。ただいま病院の家族待合室でぼんやりしている。少し先の手術室では父が手術の真っ最中で、私と母はとにかく待合室で待つしか無い。待合室の壁にはテレビがかけられていて、TBSのひるおび!が延々と流れている。母は待っている間にレースのハンカチを作り終えて、私は海外ドラマを見始めて、途中で飽きて見るのを止めてしまった。

 

 朝5時50分に起きて、色々身支度をして、8時には病院について父親を見舞った。父親は腰に鈍痛があるとかどうとか延々と話していた。めんどくさかったので私はずっと変な顔をし続けていた。28歳男性なのだが、親の前で落ち着くということができやしない。病院の窓から川と街が一望できた。結露で曇ったその窓に指で大きく「HELP」と書いた。やっぱり落ち着くことができやしない。

 

 9時には父を「がんばえ~」と送り出して、それからずっと待ってる。多分4時間も何にも言ってこないということは腹を開いて、切除の段階に移っているのだと思う。母は「何も言ってこないということは、切除できるということだと思う」と言って安心していた。昼にはそぼろご飯とチキン南蛮を食べた。食べたら眠くなって寝てしまった。いびきをかきすぎて母に起こされてしまった。

 

 落ち着かないので1時間に1回煙草を吸いに行く。病院の敷地の外、近くの河川敷のベンチに置かれた鍋が灰皿代わりのようなので、そこに吸い殻を捨てていく。なんとなく銘柄を前吸っていたメビウスのメンソールのアップルカプセルが入っているやつに戻した。吸い始めに吸っていたやつだからか、なんとなく懐かしい味がした。匂いが記憶に訴えかけるというのは本当なんだろうなと思った。煙草を1時間に1回吸いに行き過ぎるせいで、結構歩いている。昼の段階で7000歩近く歩いていることがわかった。

 

 時間通りに手術が進めば16時には終わるそうだ。あと3時間くらい。父は今どんな状態なんだろうかと思う。見てられない姿になっているだろうから早く終わってあげて欲しいと思う。

 

 待合室にノンタンが置いてあったので読んでみる。表紙だけ見て、ノンタンが風船ガムを食べ過ぎる話だと思い出せた。ノンタンに思い入れなかったはずだけども、幼少期に読んでいたものの記憶力は馬鹿にならないなと思った。ノンタンは風船ガムを間違って飲み込んでしまって、空高く飛んでしまうのだった。ほわほわほわわと。

 

 現実感が無い。私は近くにいるけども全く現実感がないなと思う。手術室の近くの部屋を通りがかったら、遠くの方に大量の輸血パックがあって「おおっ」と思ってしまった。それすらもなんか小道具みたいで、全てが全てリアリティがないなと思ってしまう。よくない傾向だなと思う。

 


 昨日の夜中3時くらいに目が覚めて、寝ぼけながらコロッケを食べてしまったことを今思い出した。多分こんなことをしているから太ってしまうのだろう。父にも「ぱんぱんやんけ」と言われてしまった。でぶーんと太っている。二階堂くんみたいだ。羽海野チカの、3月のライオンの。

 


 TLを眺めていたら、山手線を徒歩で一周したという人がいて素直にうらやましいなと思ってしまった。そういうことをやらなきゃだめだなと思った。身体をはる企画を自分で立ち上げてやらなきゃいけないなと思う。何がいけないかはわからないけども、身体を動かすことをしなきゃ煮詰まってばかりだと思ってしまう。

 


 というわけでこの手術が終わったら、もちろんうまくいったら、身体をうごかそうと思う。どこどこ行くかなんて決めてないけども、思う存分というか、嫌になるほど歩いてみたい気持ちでいっぱい。多分後悔しそうだけども。

 

 なので、とりあえずは手術の成功を祈るしかない。現実感があんまりもてないけども、現実ではそれほど離れていない場所で父は手術中なのだ。祈るしかない。祈るしかできない。

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短編小説『黄身と海』

 冬の寒い朝、私がバス停でバスを待っていたところ、そこに現れたのは巨大な鯖であった。巨大な鯖が口を開けてあーんと私が乗り込むのを待っていたので、私は鯖の口の中に入ることにした。鯖の口の中はシルバニアファミリーの家のようであった。私はプラスチックでできた鯖の口の中で、ちょこんと置いてあったプラスチック製の椅子に腰掛けて、同じくプラスチックで出来たテーブルの上に置かれた紅茶を飲むことにした。鯖がバスの代わりにやってきたとするならば、この鯖は海に向かうであろう。私は海に行こうとしていたのであった。

 海に行きたいと思い立ったのは今朝のことであった。私は目玉焼きを作った。その目玉焼きの黄身を箸で潰した瞬間に、黄身がどろりと流れ出した瞬間に私は海に行こうと決意したのだった。どろりと流れた黄身はお皿いっぱいにひろがった。なぜ私がどろりと流れた黄身を見て海に行こうと思ったのかは全くわからないが、海と黄身は繋がっていると感じた。つながりがあるのだ。この世の全ては繋がっている。これもまたつながりなのだ。

 私は弁当を作り、バス停に向かい、そして鯖に乗り込んだ。鯖の中は薄暗く、当初はわからなかったが、私以外も何人か乗客がいることに気がついた。乗客達はひそひそと話し合っていた。その声はまるでお経のように聞こえた。一定トーンで一定のフロウでそれらの言葉はよどみなく流れていった。乗客達は同じくちょこんと一定間隔以上を開けられておかれた椅子に座っていた。そして、ぶつぶつと喋り続けていた。

 海に行ったところで何をするかは決めてはいなかった。ただ海に行こうと思ったのだった。海に行ったら何かしたいことが見つかるかもしれない。ただ、何をするかは全く未定だった。そんな風に行動するのは自分でも初めてだった。私は衝動的に動くことなんてほとんどない。しかし今日は、あの崩れた黄身を見たときから、衝動に突き動かされている。 ふと気がつくと私の右斜めの席に白い猫が寝転がっていた。白い猫はごろにゃんと寝転がっていた。私は猫に近づいた。どうしてかはわからない。ただ近づこうと思ったのだ。今日の私は衝動に突き動かされている。白い猫に私は話しかける。「やあ」と。すると白い猫は私の目を見て言った。

オルタナティブロックの定義ってなんだと思いますか?」

私は答えた「ディストーションの有無だと思うね」

「そうだとメタルもディストーションを使っているではありませんか」

「ああ、そうだとも。しかしメタルはメタルだ。カレーライスがどうやってもハヤシライスになれないようにね。同じような素材を使っていても、全く別物なんだ」

「なるほど」

猫は納得すると私の手に1つのものを渡した。

「これは」

AQUOSのリモコンです」

「テレビのAQUOSかい」

「ええそうです」

「なるほど」

私たちはそこで別れた。そこで別れることになったのは猫が弁当工場前で降りていったからだ。弁当工場前で鯖の口が開くと、外から鮭弁当の匂いがした。

 


 海に着いたのはそれから15分後のことだった。海にたどり着くと、磯の香りがした。冬だから、人は全くいなかった。ただ、海の家は開いていた。海の家を少し覗くことにした。海の家にはいかつい体つきをした男性が1人。その男性はおでんを煮込んでいた。

 身体に海風の冷たさが身に染みたので、私はおでんをもらうことにした。

 「大根をいただけますか」

 「すいません。うち、はんぺんとウィンナーしか置いてないんですよ」

 なるほどとなった。はんぺんとウィンナーをもらって、私は波打ち際まで行くことにした。

 私が波打ち際にたどり着くと、砂浜にポツダム宣言が書かれていた。達筆な字であった。ポツダム宣言をじっくり読んでいたが、一度強い波がやってきて、ポツダム宣言をきれいに洗い流してしまった。

 すると後ろから泣き声が聞こえた。緑のコートを着た女子高生が立っていた。

 彼女は「何度もお、何度も、書くんですけどもお。消えてしまうんですう」と泣きじゃくっていた。

 「仕方ないさ。砂浜に書いたものはいずれ消えてしまう」

 「どんな言葉も」

 「ああ」

 「じゃあ、私はどこにポツダム宣言を書けばいいんでしょうか?」

 そうだな。と私は悩んだ。しかしどんなものに書いても、いずれは消えてしまう。そう万物は流転する。オールシングスマストパス。

 「消えても、また書けばいいさ」私がそう答える前には、彼女はまた砂浜に文字を書き始めていた。

 消えてしまっても、いいから書けばいいのだ。そうだ。それだけのことなのだ。

 私が海を見ながらはんぺんとウィンナーを食べていると、先ほど渡されたAQUOSのリモコンのことが気になってしまった。私はポケットからリモコンを取り出して、太陽に向かって、電源ボタンを押した。

 すると太陽から「19時20分!19時20分!!」と叫び声が聞こえて、太陽は沈んで夜になった。もう一度電源ボタンを押すと、月が「10時20分!10時20分!!」と叫んで月が沈み朝に戻った。

 私はAQUOSのリモコンを海に放り投げた。あの猫には申し訳ないが、私が持つには大きすぎるパワーであると思った。

 海に来てみてはいいものの、おでんを食べて、ポツダム宣言が消えるのを見て、AQUOSのリモコンで朝と夜を入れ替えたくらいしかしていないことに気がついた。あの黄身を見て、海を連想したのは一体なんだったのだろうか。

 すると、海亀が産卵の準備をしていた。その後ろにはシェフ達が匍匐で列を作っていた。 海亀が産卵をすると、シェフ達が駆けだして、卵を盗み、近くのカセットコンロでオムレツを作り始めた。海亀は泣き叫んだ。その声はしゃがれたジャズシンガーのようであった。私は海亀の声をそこで初めて聞いた。ジャジーで素晴らしいと思ったので、私は海亀に「あなたはジャズシンガーになるべきだ」と伝えた。「それどころじゃない。何度産卵しても彼らに卵を取られるのです」と海亀は鳴きながら訴えた。

 遠くからオムレツの焼けるいい匂いがした。

 私が海に来たのはこういう理由だったのか。

 私は海亀の訴えを適当に流して、シェフにお金を払い、オムレツを頂くことにした。

 オムレツの中にはチーズが入っていてそれがいいアクセントになっていた。

 というわけで、海亀で作ったオムレツが美味しいので星5をつけさせて頂きます。

 土日しか空いていないそうです。また海亀の産卵の出来不出来によって、当日出せるメニューが変わるそうです。

 気になる方は一度お問い合わせを。

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2018年映画ベスト10

2018年の映画ベスト10です。毎年誰にも期待されていないですが、それでも発表し続ける勇気。まあ、ベスト10を考えるというのは楽しい行為です。自分の見たものを改めて順位づけることで、自分が何が好きかを考える行為に繋がるというか・・・まあそれはいいのですが。というわけで今年も発表します。細工は流々、仕上げをご覧じろ!

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(両目洞窟人間の2018年の映画ランキングの公式キャラクターのブリグズビーベアちゃんです。)


10位 ヘレディタリー/継承

9位 ペンギン・ハイウェイ

8位 あみこ

7位 ボヘミアン・ラプソディ

6位 リズと青い鳥

5位 犬ヶ島

4位 スリービルボード

3位 ANEMONE 交響詩篇エウレカセブンハイエボリューション

2位 カメラを止めるな!

1位 勝手にふるえてろ

 


こちらが順位になります。いやー完璧な順位でしたね。というわけで、これからは短評。

 

 

 

 


10位 ヘレディタリー/継承

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完璧な悪夢とキャッチコピーが付いていましたが、本当全編完璧な画面設計と音響設計がもたらす完璧な恐怖。見ている最中あまりの恐怖に「もう早く終わってくれ・・・!」と心から願うほどでした。にしてもただの舌打ち音がなぜあそこまで怖く聞こえるのでしょうか。それすら不思議。個人的にはハリウッドでリメイクされた放送禁止4として見ていました。あの終盤明らかになる構成は放送禁止4だよね。めちゃくちゃ怖いのに、ラストは妙な多幸感で締めるのも個人的に好み。素晴らしい映画だったよね。

 

 

 

9位 ペンギン・ハイウェイ

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28歳になってもお姉さんが好きだ!お姉さんとひと夏の冒険がしたい!と願い続けている気持ち悪い大人にとってはご褒美のような映画。しかも何がびっくりしたってこれかなりSF映画だったこと!ただでさえ嬉しくなるようなお姉さんとの冒険譚なのに、SF映画で、しかも画面上にはペンギンが歩き回るってこれは俺のために作られた映画か・・・と心から思いました。意外と世間の評価が低いみたいだけども、僕は森見登美彦映像作品では昨年の「夜は短し歩けよ乙女」よりも好きです。ちなみに感受性が壊れた28歳男性なので、冒頭のペンギンが歩き回るシーンで泣いていました。ペンギンかわいい・・・

 

 

 

8位 あみこ

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こちらの映画に関しては感想を書いているのですが(『あみこ』を観た! - にゃんこのいけにえ)8位にランクインした理由といえばこの映画の熱量にやられてしまったとしかいいようがない。荒いところもあるんだけどもそれすらも熱量に変換されているというか。ナンバーガールのアルバムを聞いたときのような興奮がこの映画にはありました。思わずポスターも買ってしまった。サインも書いてもらった。そんなポスターは家の壁に飾ってあります。個人的にはめちゃくちゃなあみこも大好きですが、あみこの友人の女の子も大好き。あの子、いい子だよねえ。

 

 

 

7位 ボヘミアン・ラプソディ

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エーヨ!!!(エーヨ!!!)とにかく終盤のライブエイドが凄まじすぎた。ライブエイドのシーンは大号泣。声を出して嗚咽。あのライブシーンのエモーショナルは一体何なのでしょう!ライブエイドのセットリスト知らなかったのでRadio Ga Gaが流れた瞬間は叫びそうになった。Radio Ga Ga大好きなんだよなー。28歳男性の心の中のクイーンがウィーウィルロックユーするそんな素晴らしい映画でした。見終わった後、女性客2人が「あと何回見ればいいんやろ~!」と叫んでいたけどもその気持ちめっちゃわかるぜ。エーヨ!!!(エーヨ!!!)

 

 

 

6位 リズと青い鳥

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こちらも感想を書いているのですが()演出に恐れ戦くほど感服させられた作品でした。女子高生2人の心の機微をこれでもかと描いた結果、終始薄氷の上を歩かされているような緊張感。もうあまりのことに胃がきりきり。こんな映画を作ってしまって山田尚子監督は一体どうなってしまうんだろう。そして山田尚子は次何を作るんだろう。

 

 

 

5位 犬ヶ島

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鬼才ウェス・アンダーソン監督の鬼才っぷりがどうかしてるレベルまで高まりまくったストップモーションアニメ!ナショナリズム的な意味ではなく、この映画に関しては、カオスを全て理解できたという意味で日本人でよかったと心から思えた。猫派の俺も犬ちゃんかわいい!と絶叫したくなるような犬たちのかわいさ!全シーンポストカードにしてずっと見たくなるような緻密に作り込まれた世界!そして映画史に残るあの寿司制作シーンの異様さ!!語りたいことは沢山あるけども、要約すると「だいしゅき~」となっちゃう映画でございました。

 

 

 

4位 スリー・ビルボード

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完璧な脚本だ!と見終わって叫んでしまった。次々と先の読めない意外な出来事が起きまくる映画なのに、登場人物の行動には嘘や無理がないという作りがもう凄まじすぎて・・・。見終わって「こんな作品を書いてみたいな」と心から思ってしまった。一生無理だろうなと思うけども、それでも作品として凄いものを見せつけられると創作意欲が湧きますね。大好きなサム・ロックウェルサム・ロックウェル無双していてそれも最高だった。本当アカデミー賞おめでとうございます。ラストのメッセージも素晴らしい。この2時間はこの台詞にたどり着くまでの2時間だったんだ。そしてその台詞は観客1人1人の中で呼応し続けるのだ。

 

 

 

3位 ANEMONE 交響詩篇エウレカセブンハイエボリューション

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こちらも感想を書きました。(僕が今までに見たことのないものを見せてーーー『ANEMONE 交響詩篇エウレカセブンハイエボリューション』を見た! - にゃんこのいけにえ)めちゃくちゃ賛否両論わかれているというか、友人はこの映画を見て「最悪だ」と言っていたレベルなのですが、俺はもうたまらなく好きな映画です。道理を超える瞬間、全てを超越してしまう瞬間ってのに弱いけども、その瞬間にあいつがあの世界から現れて、そして鳴り響くのがやくしまるえつこが歌うバレエ・メカニックというあのクライマックスだけで5億点。俺が好きと言わなきゃだめだ!と心から思っています。本当大好きなんだよ。理解は出来ていないけども、俺は大好きなんだよー。

 

 

 

2位 カメラを止めるな!

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10年前の俺に「10年後の一番面白い映画は何?」と聞かれたら大声で「カメラを止めるな!」と教えたくなるような映画。いや、本当面白かった。まじでめちゃくちゃ面白かった。クライマックス30分の興奮は今でも覚えている。あのピラミッドに若手俳優が乗り込んだ瞬間、劇場が拍手の渦に包まれたの感動したなあ。面白いものを作るんだ!という監督、スタッフ、キャスト全員の熱量がこの映画をここまでのものにしたんだと思う。「面白いもの」というのは本当に素敵なことだなと思う。娯楽性という一本勝負で30億を突破したの本当いいニュースだよなあ。

 

 

 

1位 勝手にふるえてろ

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俺の映画。28歳男性の全てを松岡茉優が演じきっていた。あまりの俺っぷりに、28歳男性は席で悶え、笑い、そして号泣した。映画を見て、自分は1人じゃないんだと思えた。世界には同じ苦しみを抱えた人々がいる。孤独だけども孤独じゃないんだと思えた。この映画があったから2018年は生きることができました。それほどの映画です。というわけで栄えある一位。

 

 

 

というわけで2018年映画年間ベスト10でした。しかし今年は病気が長引いたのもあって、あまり多くの映画を見に行けなかったのが心残り。来年はもっと多くの映画を見たい。そして病気を治したい。映画を見るとほんの少しの間だけ、この世の憂さを忘れることができて、自分が病気であることも忘れることができて、そして少しの希望を胸に家に帰れることができる。それが身に染みる一年でした。辛いことも多いし、先行きは全く見えないし、嫌になることは多いし、もうやだ~と何度もなったけども、でも映画館に行けば面白い映画は沢山かかっている。来年も何度も逃げ込もうと思います。そして来年もこの人生を生き抜く勇気を映画からもらえたらいいなあ。できれば生き抜く勇気は自分で身につけたいものだけども。

少し湿っぽくなってしまいましたが、来年も面白い作品に出会いたいなってことです!頑張って生きるぞ!そして面白い映画を観るぞ!!

 

 

どてらねこのまち子さん『クリスマスをしようよ』

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「クリスマスをしようよ」

 

どてらねこのまち子さんはクリスマスの前になるとそわそわしていました。まち子さんはどてらを着た二本足で歩く猫です。ついでに日本語も喋ります。

まち子さんは一年間いい子に過ごすことを心がけていました。サンタさんが来て欲しかったからです。でも一昨年も去年も来てくれませんでした。そのことを友人の岸本さんに話すと、岸本さんは悲しげな顔をしました。

「まち子さん、そうだったの」

「はい……去年も寝ずに待ってたのですが、来てくれなくて……」

「……まち子さん。サンタさんに今年お願いするものあるの?」

「実は……」

まち子さんは欲しいものを岸本さんに伝えました。

岸本さんはなるほどと言いました。

そしてクリスマスイブの日、まち子さんは今年こそはと願いながら、キックボードをくださいと手紙を書きました。

まち子さんはキックボードが欲しかったのです。街を、人波を、それで駆け抜けたいと強く願っていました。

「今年こそは来てくれたら嬉しいな……」

そう願って、布団に入りました。寝つきがいいまち子さんはすぐにスヤスヤと眠りに落ちました。

 

 

 

まち子さんが寝ていると、窓を叩く音がしました。

「誰ですかー」

とがらららと窓を開けるとそこに立っていたのは赤いコートに白ひげの老人。サンタさんでした。

「わ!サンタさん!」

「しー、静かに」

「はい……」

サンタさんは微笑むと「ほほほ。まち子くん。今年はいい子にしてたね」と言いました。

「見てくれてたんですか!」

「ああ。見ていたとも」

「わー!ありがとうございます!」

「でも、まだプレゼントをあげられないんだ」

「うみゃみゃみゃ……!なんでですか……」

「いい子にしてたまち子くんに最後の試練だ。私の隣に座ってプレゼントを渡しに行こう」と言いました。

「うみゃ!そんな楽しいことやっていいんですか!」

「いいとも、ただし、まち子くんにできるかな」

「やれます!いや、やらしてください!」

「いい心がけだ。さあ乗ろう」

そこにあったのはハーレーダビッドソンでした。

「トナカイじゃないんですね」

「今のトレンドはハーレーだよ」

まち子さんはサンタさんの後ろに座りました。

ブオンブオンと音を立てて走り出すと、ハーレーは宙に浮きました。

「わー!浮いてます!」

「当然さ。サンタが乗るハーレーだからね」

ぶおおおおおおとエンジン音を立てながら、街の上を飛んでいきます。そのさらに上をジェット機が飛んでいきました。

 


それから一晩中、まち子さんとサンタさんはプレゼントを配り続けました。

今年のいい子にしていた子供達の家にです。

いろんなプレゼントを渡しました。

ニンテンドーSwitchが今年は多いみたいでした。

「やっぱりこういうのって、その時期の流行りがあるんですか?」

「あるさ。もちろん。まあ、昔みたいに木のおもちゃを頼む子供は減ったね」

「寂しいですね」

「まあね。時代は移り変わるものさ」

木のおもちゃの頃は、自分たちで作っていたこと。最近はゲーム会社やおもちゃ会社と提携していること。それによって莫大な利益を得ていることをまち子さんは聞きました。

 


ぶおおおおと空を飛んでるとサンタさんはまち子さんに聞きました。

「寒くないかい」

「大丈夫です。どてらを着てますから」

「どてらってのは凄いんだね」

「はい」

「わしの着てるこの赤いコートもあったかいんだよ」

「わー、着てみたいです」

「またいい子にしていたら着せてあげるよ」

「いい子にしてます」

ぶおおおおと音を立てながらハーレーが飛んでいきます。

「最後の家は大人の家だ」

「大人にも配るんですか?」

「いや、どちらかといえば、君が必要なんだ」

「うみゃみゃみゃ?」

 


最後の家は岸本さんの家でした。岸本さんの部屋に窓から入ります。岸本さんの枕元の手紙には「幸せになりたい」と書いてありました。岸本さんの顔を見ると、辛そうな表情で眠っていました。

岸本さんとまち子さんはお友達です。でもこんな表情をまち子さんは見たことありませんでした。

「どうする?何をあげるかい?」

サンタさんはまち子さんに聞きました。

まち子さんは困りました。

そして、まち子さんは岸本さんの隣にゆっくりと、そしてそっと座って、頭を撫でることにしました。

それが正しいかはわかりませんでした。

なにかをあげる方が岸本さんにとって良いかもしれませんでした。

まち子さんはわからないなあと思いました。

でもまち子さんは悲しい時に寄り添える猫になりたかったのです。

そして、できる限り寄り添おうと思ったのでした。

まち子さんはサンタさんに聞きました。

サンタさんはあるよ。といい袋から「コーンスープの素」を取り出しました。

それをそっと枕元に置きました。

「幸せって、コーンスープのことかい?」

「違うと思うのですが……でも……」

「でも?」

「わからないです……でも、今度あった時に、岸本さんに日頃のお返しをしようと思います」

「そうか」

「はい。……わたし、間違ってますかね」

「いいや。そういうものさ」

岸本さんの家から飛び立った時、サンタさんは小声で「おもちゃじゃ解決できないこともあるのさ」と言いました。まち子さんは聞こえなくて「うみゃ?」と言いました。

 


朝方になりました。サンタさんはまち子さんを家の前で降ろしました。

「まち子くん。これをあげよう」

そう言ってまち子さんにキックボードを渡しました。

「いいんですか!」

「ああ、いいとも。ただし来年もいい子でいること。そして……」

「そして?」

「あの友人を大切にするんだよ」

そう言ってサンタさんは飛び去りました。

「サンタさん!ありがとうございます!」

まち子さんは手を振り続けました。

サンタさんも手を振り続けました。

サンタさんのハーレーは空高く遠く遠くまで飛んでいって、飛行機のジェットに吸い込まれて身体はバラバラになって、それが雪になり、街に降り注ぎました。

 


そこで目が醒めました。

まち子さんは慌てて枕元を確認しました。

何もありませんでした。

まち子さんは悲しくなりました。

「結局、夢でしたか……」

でも外に出ると、そこにはキックボードがあるではありませんか!まち子さんは嬉しくなって、それに乗って岸本さんの家に行きました。出来るだけ早く駆け抜けました。街を、人々の波を、駆け抜けました。夢のようでした。いや、夢が現実になったのでした!

そして岸本さんの家に着き、あがるといの一番に「岸本さん!サンタさんが来てくれました!」と言いました。

岸本さんは凄く嬉しそうな顔をしました。

 

 

 

「昨日ね、夢にまち子さんが出てきたよ」「うみゃみゃみゃ。奇遇です。私も夢の中で岸本さんに会いにいっていました」

「ふふふ。不思議なことってあるんだね」「そうですね」

「………ありがとうね」

岸本さんは少し目頭を拭きました。

「泣いてるんですか」

「泣いてないよー」

「うみゃみゃみゃ……」

「あ、そうだ。コーンスープ飲む?」

「えっ」

「あ、嫌い?」

「いや……好きです。わたし好きです!」

「ふふふ。なんかまち子さん変なの」

「うみゃみゃみゃ……」

「まち子さん。寒くないの?」

「どてらを着てるから大丈夫です」

「そっか。どてらって便利だね」

「はい。便利なんです。あ、あと!」

「うん?なに」

「えーと。えーーと」

まち子さんが悩んでると、岸本さんはまち子さんの頭を撫でました。

「うみゃみゃみゃ」

「ふふふ。お返しだよ。まち子さん」

「うみゃみゃみゃ……ありがとうです……」

「ふふふ」

カチッと音がして、ケトルが湧き上がったことを知らせました。二人はコーンスープを飲み始めました。それはとても暖かくて、優しい味がしました。

 


同じ頃、子供達が目を覚まし始めました。子供達は枕元にあるプレゼントを見て歓喜の声を上げていました。

その頃近くの空港では、エンジントラブルが起こった飛行機がなんとか緊急着陸に成功して、乗客が機長に感謝の意を伝えていました。

またもや同じ頃、フィンランドでは事故死したある一人の老人を偲んで葬儀が行われていました。その規模はもはや国葬でした。まさか最後はあんなことになるとは……そう口々に人々は言いました。

街に雪が降り始めていました。その雪には赤いものが少しだけ混じっていました。

でもその赤いものも、次第に白い雪に覆われていき、最後には全く見えなくなりました。

しかしそれは別の話。

まち子さんと岸本さんはそんなことも知らずにコーンスープを飲んで、二人くだらないことを話し合っていました。二人の笑い声がクリスマスの始まりを告げていました。