にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

虚構日記2020年9月12日(土曜日)"セオリー・オブ・リレイティビィティ"

久しぶりに友人と遊んだ。

最後にこうして誰かと会って遊ぶってことをしたのは緊急事態宣言が出る前の春だった。

未知のウィルスが蔓延して、春に緊急事態宣言が発令され、人々は地下の住居にこもって、私もその一人だった。

 

というわけで半年ぶりの地上はとても眩しかった。

恐怖にかられた人々による暴動で燃やされた車も撤去されていたし、破壊された檻から脱走した動物たちも捕まえられ動物園に戻ったみたいだったし、季節外れの雪もどうやら溶けたみたいだった。

しかし未だにウィルスに怯える私たちは、残暑だというのに電気マスクをつけていた。

時折、携帯バッテリーを確認し、フィルター交換のタイミングを伺う。

街には電気マスクの低い駆動音が鳴り響いていた。

その音もしばらくすると慣れてしまって聞こえなくなっていた。

 

 

友人と喫茶店に行って、その後にコメダ珈琲にも行った。喫茶店をはしごした。久しぶりに飲む喫茶店のアイスコーヒーはとても美味しかった。近所のスーパーで買うアイスコーヒーとは比べ物にならないくらいに。

 

繰り返しになっていく日々はあっという間に過ぎていった。

そして今日もあっという間に時間が過ぎた。

でも、濃度と密度と楽しさが段違いだった。

その日の昼は簡単に夜になってしまって、日常に戻るのが寂しくなってしまった。

 

寂しいと思いながら地下鉄のホームに行った時、向かいのホームにのそのそと歩くピンクのワニがいたような気がした。

それは動物園から脱走したワニかもしれなかったが、誰も捕まえようともしなかったし、気がつかなかったのかもしれない。

ピンクのワニはゆっくり歩いていって、途中でベンチに座っていたネコを、自身の背中に乗せて、それからまたゆっくり歩いていった。

その瞬間、電車が入ってきたからワニとネコがどこに消えたかわからない。

電車に乗ると、途端に電気マスクの音に気がついた。

その駆動音がさっきよりも大きな音で聴こえた。そしてそれは家に帰るまでずっと聞こえた。

 

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