にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

映画『マイ・ブロークン・マリコ』を見た。

映画『マイ・ブロークン・マリコ』を見た!

見終わってから数日間、どのように感想を書けばいいかわからなくなってしまった。
難しい映画じゃない。
けなしたいわけでもない。
むしろ、ものすごく刺さってしまった。
ものすごく刺さってしまったからどのように感想を書けばいいかわからなくなってしまった。
ものすごく刺さってしまったのには理由があって、私にももう会えない友人がいるからだ。



もっとやれたことあったんじゃないだろうか?と主人公のシイちゃんは何度も考える。
同時にマリコのことをめんどくさいと思っていたのに、それを忘れて綺麗な思い出だけになってしまうことにも抵抗をする。
なんで死んでしまったのだろう?
何かできなかったのだろうか?
何か私にできることはなかったのだろうか?
考えても考えても答えは出ない。
マリコは死んでしまった。
たった1人の親友は勝手に死んでしまったからだ。


それでも私はあの親から遺骨を奪い、そしてかつての約束を果たすように海に向かうシイちゃんはよくやってるよと言いたくなる。
私は目を背けてしまったからだ。
音信不通になった友人がどうなったかを、私は知るのが怖かった。
友人が好きだったアニメ監督が新作を作るというニュースが出た時にLINEを送った。
いつものように返事が来るのを期待したけども、返事は返ってこなかった。
それでもやっぱり知るのを。どうなってしまったのかを知るのは本当に怖かった。

死と向き合う。私は未だにそれができていない。
だからマリコの死と向き合ったシイちゃんはよく頑張ったよと思う。
同時に面倒くさいと思ってたこと、美化してしまうことすら避けようとするのも。
友人を面倒くさいと思ってたなんて、捨ててしまいたい感情だ。
それすらも、捨てないようにしようとする。
ありのままのマリコを記憶に止めようとする。
それは物凄く辛く苦しく努力がいる行為だ。

マリコはなぜ死んだのだろう。
明確な一線はわからない。
でも多くの人々がマリコを傷つけてきたことはわかる。
親や恋人。もしかしたら、描かれていないだけで多くの人がマリコを傷つけてきたのかもしれない。
明確な一線と書いたけども、そんなものはないのかもしれない。
ずっと生きているのが苦痛だった場合、死を選ぶというのはとても簡単なことなのかもしれない。
その日、たまたま死にやすかったのかもしれない。
死を選ぶというのはそういうものなのかもしれない。
私にはわからない。わからないと思うことしかできない。
ともかくマリコは死を選んでしまった。
睡眠薬を大量に飲んで、住んでたマンションから身を投げて。


だからこそ言う。もう会えないマリコにシイちゃんは「あんたが悪いんじゃない」って。
そして、マリコと同じく傷つけられている女の子を見つけた時にその声が聞こえる。
「シイちゃん。助けてえ」
それはずっと聞こえていた声だ。
それはずっと聞いていた声だ。
助けることは難しいことだ。何かボロボロになっている人を、その全てから救い出すことはとてもむずかしいことだ。
それでも、その瞬間、その助けを求めている瞬間は何かをできるかもしれない。
あの子にしてあげたかったことを、他の誰かにやってあげることはできるかもしれない。
たとえ、それが自己満足でも、それが自分が見た幻覚だったとしても、もしくは本当にあの子の姿だったとしても。
答えなんてない。
ただ、私はまだ助けられていないと思う。



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映画のエンドクレジットではThe ピーズの『生きのばし』が流れる。
この曲には「くたばる自由に 生きのばす自由」というフレーズがある。
死を選ぶのも生きるのも結局のところ自由だ。
でもと思う。
私はマリコに死んで欲しくなったと思う。
そう思うのはとても勝手で、暴力的な願いだ。
苦しい日々を生きるのは、とても簡単なことじゃない。
それでも、それでもと思う。
私は尽きるところ他人だからこそ、マリコに生きててほしかった。
なんてことを私はずっと思っていた。
『生きのばし』は最後こんな歌詞で終わる。

あの日 あの空拝めるのは あの日のボクらだけ
精々 生きのびてくれ



そして私は何度も梅田のニューYCって喫茶店でコーヒー飲んで、タバコ吸って、ああでもねえこうでもねえって話をしてたことを何度も何度も思い出す。
ひょっこり出てきてくれないかな。
何だよ、元気にしてた?って言いたい。
アニメの『平家物語』見た?俺はまだ三話くらい残してるよ。相変わらずアニメ見るの下手で。
小説なんか読んだ?貸した『出版禁止』の新刊が出て、それがすごく面白かったよ。
マイ・ブロークン・マリコは、多分嫌いだろうな。好き嫌いはっきりしてたもんね。
でも、嫌いって話でいいから聴きたい。
それだけでいい。
本当それだけでいいんだ。