にゃんこのいけにえ

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『マリグナント 狂暴な悪夢』を見た!

『マリグナント 狂暴な悪夢』を見ました。監督はジェームズ・ワン。主演はアナベル・ウォーリス。

 

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「え!?どういう話!?」って混乱からの「え!?こういう話!?」って驚き。それに終わらず「え!?"こういう話"でここまでやるの!?!?」って展開に超興奮してしまった。なので超面白いな〜って思ったりした映画でした。

というわけでここからはネタバレありまくりな感想です。

 

 

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ポップコーンロジックってのを聞いたことがあって、多分エドガー・ライト監督の『ホットファズ』のコメンタリーだったと思うのだけども、要するには「映画を見ている最中は"なるほど〜"って思うんだけども、見終わってから後々思い返すと"でも変じゃない?"ってなるような話運びや劇中のロジック」のこと。

それでいうと『マリグナント』はそんなポップコーンロジックを「ポップコーンロジック上等じゃい!」と整合性はなんのその、ドライブ感全振りな話運びだったなと思います。

先の読めない展開というか、先を読ませる気がない、驚きというかキテレツな映画です。

なんせ、冒頭はモンスターパニックか超能力パニックのような始まり、かと思ったら心霊ホラーかな…?となっていったら、今度はスラッシャーホラーのようになり、突然挟まるパルクールアクションにわおわお〜って興奮したかと思えば心理ホラーのようになって、そういう話だったのか…と思ったのも束の間、実は頭蓋骨の中に入れたままにしてて、って驚きの事実が明かされた瞬間に、主人公の後頭部から殺人鬼が出てきて警察署にいる奴ら全員を後ろ向きの体制のままスタイリッシュ皆殺しアクション。

俺は「え〜〜〜!?!?!?」と驚きながらも、パンサーの尾形さんくらい「サンキュー!!!」って叫びたくなった。

どうかしてる話運び。けどもそれは全てこのホラーというか飽和時代でも、観客を驚かせるには…?と考えに考えて、そして「怖いかどうかもういいや!えいや!」と突き抜けた話と、実際に映像として突き抜けまくった状態にあわわ〜と感動したのでした。ありがとうな〜(守谷日和の言い方で)

 

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しかし『マリグナント』のホラー映画全部盛りな感じ、本当に嫌いじゃない。それに一々だけども、演出がどえらいことになっている。

その昔、フランス人料理人ファラン・アドリアが考えた色んな料理を量はちょっとずつだけど、数は沢山作って試食させるフルコースを考えたらしいんですけども、菊地成孔がそれにオマージュを捧げて様々なジャズ音楽を1曲90秒で41曲収録した『デギュスタシオン・ジャズ』ってアルバム出してたことを思い出しました。

だから『マリグナント』も『デギュスタシオン・ホラー』って言ってもいいかもしれない。

ホラーの試食でもあるし、一皿一皿に乗ったホラーは立派だし、時には奇妙なことをしているし、時には皿から溢れてもいる、でも全てを食べ終わるとそのコースのファンになっていて「シェフを呼んでくれたまへ!」とジェームズ・ワンを読んだら髪色がかっこよくて、ジェームズ・ワンさんの髪色かっけえっすね!って言いたい。

 

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あと私はハッタリが凄く好きなのですが、映画が始まったら崖に立つ巨大でゴシックホラーデザインな病院が出てきて感動した。やっぱり病院は影の上に立ててこそだよな!ちらほら窓から見えてるのが緑色の照明で、なんでその色だよ、最高かよ!って開始すぐに感動。

後半に車を止めて、病院に入って行く時、車があまりに崖の際に行くのも震えたし、入り口も崖すぎて、狭いのも感動した。とにかく崖が優先的すぎる。でも何を優先させるかっていえばこっちだろ!って舵の切り方が好き。

ハッタリで言えば、序盤の家で時間があった後に警察が来る場面で、めちゃくちゃスモークを炊いているのか、パトランプの光量が凄まじいのか、各々持ってる懐中電灯の光量も強すぎるのか、多分その全てだからだろうけども、とんでもない大事件のような気配が出ていて超最高でした。

それから監禁部屋が実は屋根裏だった!というハッタリ!!もうなんて最高なんでしょうか!

なんせ屋根裏から一階まで落ちてくるんですよ。そのための吹き抜けでした…じゃないんですよ!なんだよあの屋根裏のでかいファンは!やっぱホラー映画に出てくるファンはでかくないとな!最高だよ!!!

というわけで、一事が万事、ハッタリは効いているし、カメラもすっごい動いたり、えげつないカメラワークはあるし、なんせ"作り込んでいる"というのがとても見えているんだけども、私はそういう映画が大好きでして…

映画を撮るってことが不自然の塊なんだから、不自然なもので構成されていてもいいじゃないって思ったりする思想がどうやらあったみたいで、それに火をつけられたような気持ちになりました。

 

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『マリグナント』にはジェームズ・ワンの盟友のリー・ワネルは参加していませんが、終盤のアクションを見ながら「身体の使い方」とか「カメラとアクションのコントロール」に共通するものがあって、改めて彼らの映画を見たいなって思ったし、そういう部分についてのこだわりを聞いたインタビューとかあるのだろうか?と思ったりした。

あとはやっぱどうやって撮ってるんだろう?って本当気になる。

『TENET』の逆再生っぽく見えるように振り付けたアクションじゃないけども、身体が後ろ向きになっている人のアクションをどうやって作ってどうやって振り付けたんだろう!

私は知りたい。何か人類史で未だ誰も到達していなかった部分に到達してしまったような映像だった気がするんだよ〜言い過ぎかもだけど〜。

 

 

というわけで『マリグナント』はやっぱりとても好きな映画だったなーと思った。

にしても、題材だけ取り出せばアルバトロスフィルムがDVDスルーで出してそうな話なのに、大金をかけて、そしてそんな話とは思わせなくて、そしてその話にたどり着くって、なんかすごい感動しちゃうな。

やっぱり『マリグナント』の企画を通して行った段階から知りたい。会議室での空気、脚本を読ませた時の反応、現場でどうやって押し切ったか?とか。

才能はもちろんだけど、物凄い胆力と自信と自信を持ち続けることとそして高い技術がないと成立しなかった映画だよなーと思ったりしました。

胆力で言えば、ある種の真相がわかるところはVHSテープを延々と見ているだけってのもすごい。

留置所とのクロスカッティングで見せてるからそうは思わないけども、真相たどり着くのを家のリビングで済ませてるのすごいよ〜。

 

 

それにしてもあのおどろおどろしいアレンジのWhere is my mind?に笑ってしまった。なんて直球!って思いながら、『ファイトクラブ』がなかったらPixiesの立ち位置はどうなってたんだろう?Where is my mind?もこんな立ち位置の曲じゃなかったかもって思ったりしました。

 

あと『サイレントヒル 』を思うようなシーンは予告編にもあったけども、あのシアトルの地下の雰囲気はbloodborneっぽかったので、誰かジェームズ・ワン監督に「ゲーム好きですか?」って聞いてほしいけども、そりゃ絶対好きだろうな。bloodborneクリアしたんかな。エルデンリングは楽しみにしてるかな。ネットワークテストプレイの応募はどうだったんだろうな。

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最後に思い出したことだけど、かなり好きな描写でおもちゃの電話、多分リカちゃん電話みたいなやつでイマジナリーフレンドと喋ってるって描写が凄くよかったな。繋がらないはずの電話で長話をしていて、電話からはファンシーな電子音がなってて、それに合わないような不穏な会話してて…….。そういうところをとってもとても好みな作品でした。大好きです。