物語が書けない。
色々と理由はあるんだろうけども、一番の理由は「書こうとしてなかったから」になる。
なんや言うたかって、白紙の前に立って、文字を書いていくしかない。
その他に理由はあれど、やっぱり書かない限りは書けないのだ。
というわけで、私は今、物語が全く書けないという状態で、そして物語を書くってなんだったかを思い出すためにこうやって言葉をばちばちばちと打っているところだ。
物語を書くってなんなのだろう。そして私はどうやって物語を書いていたのだろう?
ものがたり【物語】
[名]
(1)ある事柄について話すこと。また、その内容。
(2)古くから語り伝えられてきた話。
(3)作者の見聞や想像をもとに虚構として作られ、相手に語る形式で書かれた散文作品。
手元にあった明鏡国語辞典で「物語」を引くとこんな意味が載っていて「はえー」と私は納得したような気になる。気になるだけでまたちゃんと意味は忘れちゃうだろうけども、この瞬間だけは意味は手に取るように把握している。というか忘れないように書き記しているから、そこを見れば意味はあっという間に把握できる。
やはり忘れないようにするには書き写すのが一番なんだな、学校教育は正しかったのだなと思いつつ、私が書いていた物語はどういうものだったか、国語辞典の意味と照らし合わせる。
(1)ある事柄について話すこと。また、その内容。
(2)古くから語り伝えられてきた話。
(3)作者の見聞や想像をもとに虚構として作られ、相手に語る形式で書かれた散文作品。
という風な3つの意味にわかれている。私がこれまで書いてきたことを照らし合わせるならば(1)「ある事柄についての話」と(3)「私の見聞や想像をもとに虚構として作られて、相手に語る形式で書かれた散文作品」ってことになるんだろう。
なるほど。おー。と今まで書いていた「物語」っつうものはこのように分類されるのか、と納得する。もしくは納得したような気になる。
しかし物語の意味は突き止めたけども、肝心の私が書きたい物語ってものは全くわからないままだ。私はどんな物語が書きたいのだろうか。国語辞典で「私の書きたい物語」なんて意味も載っていないし、こんな悩みを大人の男性が抱えているということすら、社会と大きくずれていて気持ち悪い気がする。
と、書いたところで私は「はぁっ!」と思い当たる。社会と大きくずれているという今、自分が書いた言葉に「はぁっ!」となる。
そうだ、私は社会と大きくずれてしまった人の物語を書きたいのだ。
なんて行き当たって見るものの、それは物語ではなく「テーマ」ってやつなんじゃないか?って疑念がわき上がる。
テーマ[Thema〔ドイツ〕]
[名]
(1)主題。題目。また、中心課題。
(2)音楽の主旋律。主題。
手元にある明鏡国語辞典での「テーマ」の意味はこのようになっている。やっぱりそうだ。社会からずれてしまった人ってのは「テーマ」の方だ。主題。題目。また、中心課題ってやつだ。物語を書くときに「テーマ」は大事だ。しかし「テーマ」を中心に据えすぎるのはどうしたものか。それを表現するために物語を書こうとするなんて、拡声器を持って自分の持論を長々と言うてるのと何が違うのだろうか。
とやっぱり、わけがわからなくなってきたので、一度アイスコーヒーを飲もうと思う。といっても、ペットボトルのアイスコーヒーで、なんなら氷は入れていなくて、ただの冷蔵庫で冷やしたペットボトルのコーヒー。ネスカフェの無糖のコーヒーを飲む。特に眠たいわけではないけども飲む。飲んでいると祖母が「ちょっと手伝って~」と声をかけてきた。そう私は今、祖母の家にいて、祖母の家の手伝いをしているのであった。私は手伝いをする。神棚においてある植物の水をかえて、また神棚に戻す。そうしてまた戻ってきたら「小説」の意味を国語辞典で引いたらええんちゃうと思い立つ。
しょうせつ【小説】
[名]
筋の展開や登場人物の心理・考えなどをとおして社会や人間の姿などを表現した散文体の文学。近代文学の一形式。
「短編小説・時代小説」
わかったような、わかってないような気になりながらも、私は少しだけ納得はする。過程を通してなんか最後に見えてくる・・・みたいなことな気がする。
AからF地点に行くとして、その行程をいかに面白く見せるかが小説というか私の好きな物語なのでは、と早合点しはじめるが、でもそれは多分正しい。
語りが上手い人ってのがいて、AからFについた時、そのFからの景色はそれほど綺麗じゃなくても、その行程があまりに面白くて楽しかったって気分になる人もいる。そしてF地点の景色が大事なのではなくて、AからFに行くその行程こそが大事だったのだって、そんなことを思わせてくれるような語りの上手い人。まあ、芸人のラジオを思い浮かべながら今は書いているんだけども。オードリーとかアルコ&ピースとか。
でも、多分そんな好きな芸人の語り口と、明鏡国語辞典に書かれた小説の意味ってのは近いところにあるのかもしれないくて、そしたらば私は好きなラジオのような小説が書けたらなーと思う。語り口が楽しくて、聞き終わったらなにかが立ち上がってくるようなそんなものが。
と思ったところで、どうやって物語を書いたらいいかは思い出せないしわからない。できればこの2000文字近くの思考から何かが立ち上がればいいなと思うけども、ここから見えてくるものは何もなくて、私はしばらく呆然としていたら祖母から庭掃除のお願いされたから、そっちに向かって雑草を抜いて、気持ちの良い汗をかく。もうすぐ、夏ですね。