全く外に出られない日々が続いている。
というのも、両目洞窟人間さんは29歳男性なんだけども、いろいろあって無職男性でもあるのだ。今は実家にいるのだけども、家族が色々と活動をしている中、無職男性があちこちいってウイルスに感染して家族に移してしまったら大変だ、というわけでかれこれ3週間ほど不要不急の外出をしていない。
インドア派ではあるけども、それでもここまで家に篭るのは流石に初めてだ。その上、本日緊急事態宣言が出てしまった。まだまだ家に篭らないといけない。
今はADHDの薬であるところのストラテラを増薬したタイミングなので、体調がうまくいかず、寝込んでしまうことも多い。体調が良い時は家族の晩ご飯を作ったり、洗濯をしたりする。
それからなるべく毎日、スクワットとプランクとyoutubeで見つけたボクササイズ動画を見ながらボクササイズの真似事をして、最低限だけども身体を動かしている。
なるべくだけども、日々をなんとか生きていこうと思いつつ、うまくいっているかはわからない。
そんな生活の中でルーティンになってるのが「あつまれ!どうぶつの森」をプレイする時間だ。弟がダウンロード版を買ったので、私もプレイさせてもらっている。
籠っている日々だけども、ちょうど「どうぶつの森」があってよかったと本当に思う。
ヘレディタリーのエンディングのようなテントから始まった無人島での生活は3週間ほど経って大きく変わってきている。
ゲームを起動させると、まずは届いた手紙をチェックする。自分が通販で頼んだ品物も届いている。服や雑貨、そしてレコード。
それから島の友達からの手紙。嬉しいことが書かれている手紙をそっとお気に入りに登録する。
島の服屋のエイブルシスターズに向かう。新商品を確認したり、試着したりする。こういう服を今度は試してみようかなって思ったり、今後使えるかもしれない服や靴を買う。
それから家に戻って一度着替える。
今日はどんな服で出かけようかなって考える。
冷え性気味の総務課の人っぽい服装で今日は出かけてみようと思う。
いい感じに落ち着いた雰囲気でよい。お礼のプレゼントに紅茶や入浴剤を送ってくれそうな人みたいな雰囲気が出て満足する。
昨日はアニメで見た巫女のコスプレにチャレンジするフランスから来たオタクみたいな服装をしていたとはまるで思えない。
服装も髪の色も日常では全く変化させないのに、日によってめちゃくちゃ変えている。気分によって赤にしたり、ショートにしたり、くくったり、ピンクにしたり、楽しんでいる。
そもそも、両目洞窟人間は29歳男性なので、こんなふうな女性ものファッションを楽しむことはこれまでなかったんだけども今は自然と楽しんでいる。おしゃれをしたいという俺の中のアン・ハサウェイが騒ぎ出している。
今日のファッションを決めたあとは、家の前の花に水をやる。たくさん花を植えたので、すべてに水をやるのには時間がかかる。それでも欠かさず全てに水をやる。
その過程で雑草を抜いたり、生えすぎた花を間引いたりする。
庭を手入れしていたら、もっと花を植えたいと思ったりする。もう少し、庭を素敵にしたい。
なのでたぬき商店に行く。
まめきちとつぶきちが切り盛りしている商店で本日の雑貨を見て、気に入ったらいくつかは買う。
それから花の種も買う。チューリップとパンジー、それからアネモネ。
その日は白のアネモネを買う。
家に戻って、種を撒いて、また水を撒く。
花が咲くのは数日後。現実から考えると早いけども、すぐに結果が出ることが当たり前のゲームでは異例の遅さだ。それでも数日後に花が咲くのが楽しみになっている。数日を待つことができる。
村の人々に挨拶をする。
ヤンキーあがりのアネッサ。最初は苦手な人かもと思っていたけども、話しているうちに徐々に仲良くなってきた。
たまにアネッサがトレーニングをしているのが目に入った。身体を鍛えたいと思っているのかーとその日は思った。
数日後、たまたまバーベルのDIYレシピを入手した。鉄鉱石がいくつかあれば作れるそうだ。
そのレシピを手に入れた時にアネッサの顔が浮かんだ。あげたら喜ぶだろうか。
バーベルを作って、アネッサにあげる。喜んでくれたような気がする。
後日、アネッサの家を訪ねるとバーベルが置いてある。私がプレゼントしたやつだ。嬉しいと思う。
アネッサは私にあだ名をつけていいか?と聞いてきた。いいよ、と答えると「じゃあリーダーだ!」と言ってきた。そんな柄じゃないよ〜と思いつつ、アネッサからそう呼ばれるのは嬉しいと思った。
ニコバンちゃんに出会った時に、この子と仲良くなりたい!と思った。
ニコバンちゃんは「島一番のくいしんぼうってなのりたい」と言っていて可愛らしい。
なので果物をあげたりする。そのほかにも似合いそうな服をあげたりする。
ありがとう〜と言われて少し照れたりする。
ある日、ニコバンちゃんが「引っ越して、他の島のご飯を食べてみたい〜」と言う。私は思わず「いやだ!残って!!」と言ってしまった。
「まだまだボクと遊びたいんだね〜!じゃあ残るよ〜!」と言ってくれて安心したと同時に、少し罪悪感が残ってしまった。ニコバンちゃんを引き止めたのは完全な自分のエゴだと思いつつ、やっぱりまだまだニコバンちゃんと遊びたいと思う。
住民に挨拶をしたあと、島をふらふらする。
地面にはたまに怪しげな場所があるから、そこを掘ると化石が掘り出せる。
化石を見つけると博物館へ向かう。
そこには館長のフータがいる。フータは化石の鑑定ができる。
博物館にまだない化石だと寄贈してほしいな〜と訴えてくる。もちろん寄贈する。
するとフータは喜ぶし、それから鋭い目をして、化石について話したいと言う。
その熱くなっている様子がとても可愛らしくていつも話を聞きたいと思う。
フータは化石とサカナは熱く語るけども、虫は苦手なようで、虫を持っていくとびびり、そして「キモチワルイ……」と震えはじめる。
そんな様子もまた可愛らしくて、たまに気持ち悪い虫を捕まえるとイタズラでフータのところまで持っていって見せて反応を楽しんでしまう。
それでも、彼の博物館は物凄く素晴らしい。
あれだけ苦手な虫も丁寧に展示されている。
いくら苦手でも大切に管理する。そのフータの言葉に偽りはなくて、彼の職業倫理は素晴らしいと思う。
島の北西の海岸の先には、露天風呂を設置した。ただ、露天風呂を置いただけでは、「露天風呂」としての雰囲気が出なくて、少し悩む。
何かが足りない。何かディティールが必要だと思う。
その時に竹の壁を作れるようになる。
それを二枚ほど、目隠しとして露天風呂の前に建てると、途端に雰囲気が出る。
露天風呂が「露天風呂」しはじめたことに満足して、スクリーンショットを撮る。
「露天風呂を作った」ということを役場の前にある掲示板に書き込みをする。あとでプレイするだろう弟が気がついたらいいなと思う。
それからいくつか素材を集めたり、空を飛ぶ風船を落としたり、魚を釣ったり、DIYで作ったり、気ままに島に物を置いたり、部屋を作り込んだりする。
やることは沢山ある。やれることも沢山ある。
4月になって、桜が咲き乱れる。
家から一歩も出ていなかった僕はゲームの中の桜を見て綺麗だと思う。桜を見て、いいなと思う。
お花見セットが作れるようになったので、桜の木の下にお花見セットを置く。ゲームの中だけど、少しだけお花見をする。
1週間経つと、桜の花びらが舞いはじめた。桜吹雪だ。もう少しすると桜はすべて散るのだろう。なんともはかない。でもこの1週間のために、来年に向けて桜の木を増やしたり、整えたりしておきたいと思った。もうすでに来年のことを考えていた。
マイデザインで、ニューオーダーのブルーマンデーのジャケットを作った。
それを部屋に飾った。
そういえば、こんなことがやりたかったんだと思った。
恥ずかしいんだけども、こんなサブカルっぽいことをしたかったんだなって思ったりした。
どうぶつの森だけども、ゲームの中だけども、それができてとても嬉しかった。
調子に乗って、島の旗にまでしてしまった。ピーター・サヴィルに届いてほしいと思った。
この先、どうなるかわからない。
自分の人生が暗中模索なのは慣れていたけども、まさか世界全てがこんなことになるなんて思わなかった。
これからどうなるんだろう、私はどうしたらいいんだろう。そんな疑問や不安に押し流されそうになる。
だからこそ、どうぶつの森を起動する。
好きな服に着替える。
今日は髪の色を変えてみる。
友達に話しかける。
友達にプレゼントをあげる。
花を植える。
花に水をやる。
部屋に物を置く。
部屋を好きな物で埋め尽くす。
海に行く。
海でぼんやりと波の音を聞く。
雑草を抜く。
木の枝を集める。
DIYにチャレンジする。
島に公園を作る。
島に露天風呂を作る。
疲れたらそこでやめる。
また明日を楽しみに待つ。
この時期にどうぶつの森が発売されたのは偶然以外の何物でもないけども、この時期に発売されて本当に良かったと思う。
明日を楽しみできる。
この時期にそれが楽しいと思える「あつまれ!どうぶつの森」に出会えて本当に良かったと思うのだ。