キャンディプロジェクトの『贋作 イワンのばか』を観た!
贋作ってことは元があるということで、元はなんだって言えばロシアの文豪トルストイでございまして。といいつつも私はトルストイの作品を読んだこと、ましてや映画等の別メディアに変換されたものも見聞きしたことはありませんでした。
ということで初トルストイ、初ロシア!
ロシア経由の作品に触れるなんてt.a.t.u.以来じゃない?Mステドタキャンしてミッシェルガンエレファントが演奏した以来じゃない?
といっても贋作でございますので、今回贋作を作ったのはキャンディプロジェクトという劇団を主宰されているキャンディ江口さん。原作は読んだことないですが、ところどころに贋作だなーという刻印をつけていきます。それについては後ほど。
内容は平たく言えば人間vs悪魔でございます。悪魔は人間の堕ちていく姿が大好きなもんで、色々そそのかしては堕とすわけですが、そんな中イワンだけは堕ちていかないんですよ。何故なら彼は馬鹿だから。
それどころか馬鹿すぎて、周りを助けていき悪魔に堕とされた人々も助けて、そんでハートウォーミングな雰囲気に。もはや聖人じゃねえか!
ということでイワンのあまりの馬鹿っぷりに悪魔は歯ぎしり。しかし手を緩めない悪魔。そのうち、悪魔の攻撃はより激しさを増し、次第にイワンからも人が離れていく。それでもイワンはめげない。というかめげるという感情を知らない。その姿はもはや狂人のようでもある。
そして悪魔と一騎打ちになるわけだけども、そんな中でもイワンはイワンで悪魔はついにこう叫ぶのです。
「お前のようになれない。なりたくない。でも少し羨ましい」と。
この贋作イワンのばかでは突然『渡る世間は鬼ばかり』のテーマ曲が流れたり悪魔がバイトしてたらとパロディやギャグも多めで基本的には受け取りやすいエンターテイメントととして仕上げています。
そのように仕上げながらも、端々から滲み出てくるのがこの「生きづらい世界」にどう向き合うべきなのか?ということについて。
登場人物たちはこの世界でどうしようもなく生きづらさを感じています。
それはもっと暮らしをよくしたいって思いだったり、上昇志向であったり、ただ暮らしと向き合ってるだけだったり、ただそれだけなのにどうしようもなく生きづらい。
この作品でもっとも贋作な部分であろう、ラストの居酒屋で管をまく悪魔達と店員の会話。
彼らはこの世界のわけのわからなさについて話し合っています。そしてなるようになっていくしかないとも。
僕はイワンになることはできなくてなりたいとも思えなくて、でもただこんなわけのわかならない世界で辛さを感じることなく生きていけることを羨ましいと思う。
イワンのばかを通して、じゃあこの世界で生きていくには?ってことまで考えぬいた作品だなーと思いました。
別の話。舞台上ではMARASHOUTさんによる生演奏で音楽が奏でられるシーンがいくつかありましたが、シューゲイザーとかエレクトロニカ系の音楽で物凄く好みだった。
贋作的なパロディなシーンもあれば息を飲むような綺麗なシーンもあって、好きな作品でした。
雨を霧吹きで表現するのとかよかったなー。