エージェント・ウルトラ(監督ニマ・ヌリザデ。脚本マックス・ランディス)を見た。
ジェシー・アイゼンバーグ演じるボンクラコンビニ店員が実はCIAの特殊訓練を受けたエージェントでしたー!というわけで襲いかかってくるやつを皆殺し!皆殺し!舐めてた奴が殺人マシーンでしたわー!うわー!
な映画を期待して見に行ったら、思ったよりそうじゃなかった。いや、そうだったんだけども。
それ以上に強いなーと思ったのが恋愛映画としての側面。
映画序盤から言いたいのに言い出せないプロポーズをいつ言うの!?っていう作りになっている。いつ言うのってそりゃクライマックスなんだけども。
空想好きで勤務中にマリファナ巻いちゃうようなボンクラコンビニ店員だった主人公は自身のコンプレックスを乗り越え、そして彼女の過去を全て肯定して、指名手配されても、友達が殺されても、家が破壊されても、ただただひたすら突き進む(途中投げ出しそうになったり、家に帰ったりするけども)。
心折れそうになりながらも何故そこまでぼんくらなのに頑張るかって、そりゃ愛しているからだよ!愛する彼女のためだからだよ。まってろ彼女。俺の全てはお前なんや。というわけでそんな邪魔するやつらはちぎってはぽい。ちぎってはぽい。『ボーン・アイデンティティー』以降のそこにあるものを武器にしてのアクションでこれでもかとちぎってはぽい。(序盤のスプーンは超フレッシュでしたね。『グリマーマン』でセガールが見せたクレジットカードで人殺し以来の衝撃。)
そして終盤は『イコライザー』ばりにホームセンターで殺し合い。コスメ商品で、ランプ売り場で、ちりとりで、冷凍肉で、そしてハンマーで。おらっおらっおらっ!!
余談だけどもこの辺のバイオレンス描写は大好きなゲーム『ホットラインマイアミ』っぽさもあって好みでした。ジョン・レグイザモ宅の地下室のブラックライトの雰囲気とか凄く『ホットラインマイアミ』っぽかったなー。全然雰囲気違うんやけども。まあとにかく私がいいたいのはハンマーで全力で顔を叩くと人は死ぬという当たり前の事実をちゃんと映像化している映画はいい映画。ザ・レイドGOKUDOとか。ザ・レイドGOKUDOとか。
というわけで主人公マイクは彼女を取り戻すべく、自身のパニック障害で行けなかったハネムーンのハワイで着る予定だったアロハシャツに身を包み、彼女へのサプライズ花火を武器に使い、館内放送でへなちょこながら愛を叫び、数多のも死体の山を築き上げ、自身もボロボロになり、そしてなんとか救いだした彼女。
でもそんな彼女を救い出したはいいものの、警官隊に包囲されてしまうそんな最悪の状況へ。でもその瞬間主人公と彼女を照らすパトランプの光と彼らを狙うレーザー照準がまるでイルミネーションのように美しいものに見える。それはこの地獄めぐりが終わったからか、それともいいタイミングだからか。もちろんプロポーズに。渡される指輪。そこで流れるケミカル・ブラザーズのSnow。 Your love keeps lifting me. Lifting me higher.
どんなに最悪な状況でも、あなたがいてくれたら人生はとても最高。
私はこの瞬間に涙を抑えることができませんでした。
あまりに尊く、そして美しい瞬間。
こんな風に誰かを思えたらと心から羨ましく思った。
この映画はアクション映画じゃない。じゃあなにといえば恋愛映画だし、もっと言えば要するにこれはとても残虐な新婚さんいらっしゃいな映画。
僕の心の桂文枝は二人のイチャつき具合に「なんやそれ!」と椅子から転げ落ち、ジャケットを投げ捨て、靴を投げ飛ばしても、顔はめっちゃにこやかというそんな気持ちになる一本でした。大好き。