にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

log:9 真っ当なホラー映画「フッテージ」

フッテージ見てきました。2012年のホラー映画。スコット・デリクソン監督/脚本。イーサン・ホーク主演。クリストファー・ヤング音楽。

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あらすじ
ノンフィクション作家のエリソンは、未解決のままになっている一家惨殺事件を本にまとめるため、現場となった家に引越してくる。そして、家の屋根裏部屋で事件の様子を映した恐ろしい映像を発見するが、その日から不吉な現象が立て続けに発生し……。(出典 映画.com)


フッテージ見てきましたよ。大阪は梅田のスカイビルの中にあるシネ・リーブル梅田で見てきましたよ。シネ・リーブルって15日はシネ・リーブルの日ってことで1000円で見ることができるそうです。やったー。というわけで1000円でこの映画見てきました。近々、グローネンバーグ監督のリバイバルもやるみたいなのでまた行きたいなと思っております。

http://instagram.com/p/alPJ0cGWVL/
シネ・リーブルが入っているスカイビルを下から。

で、映画の感想ですが…


超怖かったよおおおおおおおおおおおお!!!!!

久しぶりに真っ当なホラー映画を見たという気分になりました。真っ当なホラー映画過ぎて本気で怖かったんですよ。最近流行りのメタ構造も無ければ、おちゃらけシーンもなし。ストイックすぎる良作ホラーでした。

想像してください。よく私達はこのような会話を一度はしたことはありませんでしたか?
「やっぱーホラーって日本の方が怖いよね―。すっげージワジワ来る感じでー。超怖いよね―。それに比べて海外のってーなんかー音でドン!とかやってたら怖いとか思ってるよね―!」
みたいな会話をしたことはあるんじゃないでしょうか…。こんな失礼極まりない会話をしたんじゃないか?1人ぐらいはいるだろ!大してホラー映画を見ていないくせにこんな会話をしたことがあるやつが!
俺のことだけどもな!恩田陸の「Q&A」によれば「友人の話として話されるものは大抵話しているあなたの話」だそうですよ。それがどうしたって話ですが。
まあそんなことも思っていた時期が私にもありましたよ。後にシャイニング見て、なんかようわからんけども超こええ!という感想を抱いて以来上のようなことは言わないようにしています。仮想敵作っちゃダメ!

だがもし、もしですよ。「Jホラー」のようなじんわり来る恐怖に「ハリウッドホラー」の視覚的な恐怖表現が合わさったとしたら…。
こう言わせてください。
そんなのね!最恐ですよ!最恐!!

惨殺映像の謎を追う内にオカルトチックな恐怖に巻き込まれていくという話なのですが、怖いポイントがいくつかあったのです。

超怖かったポイントその1として惨殺映像が超怖えええ!
粒子の粗い8ミリ映像。幸せそうな家族団らんの風景が写し出されたと思っていたら首吊り、溺死、焼死映像!
この惨殺映像のうちの1つにとんでもないトラウマ級の映像が1つあったこともここで述べておきたい。
グロとかじゃないですよ。ただ、もうあのタイミングは駄目だって!!
それなりにグロいものには慣れているつもりだったが、グロくなくてもトラウマは作れることがここで証明された。
トラウマは作れる!(可愛いは作れるのテンションで)


そしてその2が夜ごとの心霊体験は超怖えええ!
日に日に増していく怪奇現象の描き方が本当秀逸。暗闇の中で頼りなさげに光るライト。そして不安を煽る音楽。もうやめて…やめて…と俺が震えているとバーン!と音を鳴らして怪奇現象!思わず「怖いもん見せてんじゃねえよ!これそういう映画じゃねえよ!」とそういう映画なのに逆ギレしてしまうほど。
心霊体験が起こるのが決まって夜というのもベタだけども良かった。
というのも何度も心霊体験が繰り返されるため「夜来たらまた怖いの来るんでしょう…」と夜になるだけで身構えてしまうんですよね。
その結果主人公と同じくもう身も心もボロボロになってしまうんですわ…。
また何も起こらないシーンでも部屋の奥行きや暗闇を強調した構図が「そこから何かが出てくるんじゃないか?」という恐怖を掻き立てる緊張感を持続させる要因になっている。
結果、1秒たりとも休まらねえ!勘弁してくれ!!



超怖かったポイント3として良くできた話という点。
上記のような秀逸なホラー演出で客を追い詰め、そして隙のない話運びで客と主人公をもっと追い詰めていくのです!
惨殺映像の謎を追うというミステリーを捜査するパートがまた面白い。
データをパソコンに取り込んでネットやiPhoneを駆使して調べていく過程がスタイリッシュである。
この辺のデジタル機器を使いこなしながらオカルトを調査していくその対比が面白く、ぐいぐい引きこまれてしまった。
ネットを使って調べるというスタイルなため、一切家から主人公が出ないというのもいい演出だと思う。全く解放感がなくのがいい。
ミステリーで明らかになったことが次第に主人公を真綿で首を絞めるかのように追い詰めていくのもベタだけども素晴らしい展開。
全てが繋がる終盤のある展開に劇場にいたお客さん全員がため息を漏らしてしまうほど、よく出来た話だなと思いました。
久しぶりにそういえばあれは…そういえばこんなことも言っていた…と頭の中で伏線がパズルのように繋がった時!思わずもー!やめてくれー!と心の中で叫ぶほどの絶望を味わいましたわ…。


と演出面、話運びの面からもこの「フッテージ」はとても恐ろしく素晴らしい作品でした。

イーサン・ホークの次第に弱っていく演技も素晴らしい。この主人公のキャラ設定がまたいいんですよ。身勝手だけども、本当は家族思い。だからこそ…だからこそ…。

あと映画館でこの映画を見て何より素晴らしいと思ったのは音響面での演出です。
バーン!と大きな音が鳴ったらそりゃ怖いだろと思うかもしれないが、音が壁のように圧迫感を与えて、衝撃音で心を弱らせていくなんてのは音を極限まで大きくできる映画館ならではだからと言える。あとサラウンドで表現される「気配」の演出も素晴らしい。左右からカサッカサッと気配が…というのはやっぱりサウンドシステムがしっかりしている劇場だからこそ。
そしてクリストファー・ヤングの音楽については言及しておかねばならないだろう。不吉に満ちたこの映画のクオリティを一段階引き上げているのはこの音楽があってこそだと思う。
今回感じたのはこういう作品だからこそ映画館で見て損ではない作品なんだなということでした。

原題の「Sinister」は”不吉”という意味。文字通り不吉な予感が全編に渡って充満している映画である。
恐怖表現を研究しつくし、一切逃げること無く描ききったこの作品はホラー映画の良作といえる作品であるといえる。
正直、見ている最中何かを考える余裕がないくらい怖がっていましたよ。
こんなふうに感情を掻き立てられるのっていいなーホラーっていいなーと改めて思う一作でございました。
全然まとまりのない感想でございますが、本当におすすめです。怖がりなあなたにこそ見ていただきたい作品!


映画『フッテージ』予告編 - YouTube