わたしが書いた小説
どてらねこのまち子さん "Also sprach Zarathustra" どてらを着た二本足で歩いてさらに人の言葉を喋る猫のまち子さんは喫茶店に来ておりました。喫茶店と言っても街の小さな喫茶店ではありません。ドトールにです。ドトールに初めてまち子さんがやってきたと…
どこか遠くの動物園でパンダの子供が生まれる。そのパンダを多くの家族連れが見に行って「きゃーぱんだちゃーん」と手をふる。パンダはよろけながら歩き回って、笹を食べて、そして寝返りをうつ。それを見て楽しがる家族連れ。俺はそんなものにはならないと…
パンはパンでも食べられないパンはプロパン。ということで、プロパンガスは食べることができないのであった。プロパンガスが充満する部屋で火をつけると着火BOOMすることはDragon Ashのファンタジスタでも書かれていたことだけども、そんなことよりもレゲエ…
1 ひよこのひよここはひよこのこ~と歌いながら歩く。夕方で辺りはオレンジ色で、田んぼも暖色系に染まってる。地面からちゅどんと生えたような鉄塔と入院患者の腕のように刺さった送電線も暖色系。どこから「ふぁいっおー!ふぁいっおー!」とバレー部のか…
懐中電灯をニューヨーク市警のように顔の前で持ったことある奴全員友達。ってことで、俺は今、懐中電灯を顔の前で持って、地下道にある湿った階段を進んでいる。なんで地下道にある湿った階段を進んでいるかといえば、自分の影が盗まれたからで、なんで自分…
冬の寒い朝、私がバス停でバスを待っていたところ、そこに現れたのは巨大な鯖であった。巨大な鯖が口を開けてあーんと私が乗り込むのを待っていたので、私は鯖の口の中に入ることにした。鯖の口の中はシルバニアファミリーの家のようであった。私はプラスチ…
「クリスマスをしようよ」 どてらねこのまち子さんはクリスマスの前になるとそわそわしていました。まち子さんはどてらを着た二本足で歩く猫です。ついでに日本語も喋ります。 まち子さんは一年間いい子に過ごすことを心がけていました。サンタさんが来て欲…
『どてらねこのまち子さん』 "identity" 「にゃんにゃんにゃん」とまち子さんが呟きながら歩いています。まち子さんは猫です。どてらを着た二本足で歩く猫です。そして日本語を喋る不思議な猫でした。しかし普段はちゃんとした言葉使いなのです。あんまり「…
どてらねこのまち子さん "きょうのにゃんこ" どてらねこのまち子さんは今日のにゃんこに取材されていました。今日のにゃんこは朝の情報番組で流れるねこの動きに密着した1コーナーです。その1コーナーにまち子さんが出ることになったのでした。 まち子さんは…
電車が走る度に揺れる喫茶店の中で、私はアイスコーヒーを飲んでいた。身体を冷やすのはよくないと言っていたのは誰だっけな、私の母か、それとも佐藤江梨子か。多分、佐藤江梨子だな。多分、そう。佐藤江梨子がなんかそんなことを言っていた気がする。 私の…
どてらねこのまち子さん "camera! camera! camera!" 赤いペンキで塗られた三角形のランドマークを背にしてまち子さんは歩き始めました。まち子さんは猫です。でもどてらを着て、二本足で歩いて、言葉を喋る猫でした。まち子さんは不思議な猫でした。あんまり…
私、私、私。 私を三回繰り返したところで、それは「私」とはかけ離れているみたいな気がして気持ち悪い。とはいえ「私」は私に変わる一人称がないので、仕方なく私を使い続けている。 私は一体なんなのだろうか。と私は俗に言うアラサーにもなって、悩み続…
フランスパン同好会 私はフランスパン同好会の会長だった。といってもフランスパンのこと、めちゃくちゃ好きだったわけじゃない。フランスパンに詳しいわけじゃない。ただなんとなくフランスパンが好きだと言っていたらフランスパン同好会の会長になっていた…
ランプの中には妖精がいて、その妖精が光を放っているものだと私は子どもの頃信じていた。すべての光は妖精の光。私はそう思っていた。どのタイミングで真実を知ったのかは今となっては思い出せない。でも、どこかの瞬間にランプの中に妖精なんていないこと…
休日。何も予定がない私はいつものように散歩をしている。齢が20数年以上生きてきて、未だに予定の組み方というものを理解していない私はどうしても一人行動が多くなってしまう。そのことに対してそんなに危機感を覚えていなかったけども、人は「そんな生活…
どてらねこのまち子さん "Tesseract" 駅前のピンク色のビルの4階にあるリードボーカル養成所は気がついたら血まみれでした。隣で震えているのはどてらを着た二本足で歩き言葉を喋る猫のまち子さんです。 「うにゃにゃにゃにゃにゃ・・・」 まち子さんは想像を絶…
『Eat you up』 私は家でアルコ&ピースのラジオを聞いていた。外はシルバーリングの黒さびのような暗さだった。雨がぱらついていて時折窓にぶつかりパーカッションのように部屋に響いていた。 私はアルコ&ピースのラジオが好きだった。特に好きだったのは…
山下達郎のカッティングギターが街を切り裂く。 「うぉ~」とハイトーンボイスがビルをなぎ倒す。 凶暴化した山下達郎は手がつけられない。 CDを棚から人つかみするように人々を掴んでは精神のイコライザーをかけて廃人に仕立て上げていた。 「うにゃにゃに…
ビージーズのステイン・アライブのBPMは103で、このリズムは心臓マッサージのリズムと同じだそうだ。 というわけで、今、私は頭の中で、ステイン・アライブを流しながら、道端で倒れた太った男に心臓マッサージをしている。 ふんにゃかふんにゃかステイン・…
塚本晋也監督の『鉄男』を見た私は感動のあまり椅子から立ち上がれなくなってしまった。椅子と言っても、 映画館の椅子なんかじゃなくて、勉強机を買ったときに付いてくる 固い椅子。私はまだ実家の子ども部屋にいる。 というか引きこもっている。会社にいけ…
どてらねこのまち子さん 素直なにゃんこ。 「素直なにゃんこですー。素直なにゃんこですー!」 とどてらを着た二足歩行で喋るねこのまち子さんが街角で叫んでいた。 どうしたのだろうと思って、私は近づいてみた。 「どうしたんですか?まち子さん」 「あ、…
私のロマンティックは数年前に死んでしまった。音もなく死んでいったから、当分の間は気がつかなかった。私は気がつかぬ間にロマンティック未亡人になっていた。ロマンティックは私の元から去ったのだ。 「井上さん、彼氏いないんですか?」はいはいはいーき…
私は私の地獄を生きている。という言葉を思いついてほえほえほえとなった私は、布団の中から動きたくなくて、布団というドリームホームから動きたくなくて、それでも朝はやってくるので動き出さなきゃいけない。 目覚めた45分後には電車に乗っている。イヤホ…
連載小説『シュガーカヴァードリアリティ』 第4話 6.困惑の再生 私は案の定、ずっと混乱している。 目の奥はずっとずっと痛いままだ。でも、それでも、目隠しした女は話を続ける。 「あの子を見つけるためには、このビデオを見て貰う必要があるの」と、ぐち…
連載小説『シュガーカヴァードリアリティ』 第3話 4.消化の吐露 あなたは食道を歩いたことはあるだろうか?私はある。というか今歩いている。 巨大な団地に食べられてしまった私は、巨大な団地の食道を歩いている。目の奥が痛い。ずっとずっと痛い。 団地に…
50音の殺し方 最終回。 皆さま、お久しぶりです。時間が開きましたけども、50音への殺意、忘れてませんか?私は忘れていませんでした。ここまで時間がかかったのは最後の「ら」行と「わ」行を殺すことにとにかく手こずったからです。でも殺せました。ではそ…
俺はねこ探偵。ねこだけど探偵をしている。毎日、映画館の屋上に構えた事務所で、セブンスターを吸いながら依頼を待ってる。 ねこに依頼を頼む馬鹿がいるのかって? 意外とそんな馬鹿は多い。だから俺は毎日セブンスターを吸えているし、そこらへんのねこよ…
弟から三題噺しろや!と脅されたので、三つお題をもらいました。以下がお題です。 ・焼肉・水中・喪服 制限時間30分 では本編をどうぞ 三題噺『水中都市で焼肉を』 「始めにタンでって言うの、俺は嫌いなんだよ」って宮本は俺によく言っていた。「だってよ、…
シュガーカヴァードリアリティ 第2話 3.団地の倍音 目が覚めると真っ暗闇の中、固い場所の上で私は横たわっている。 先ほどまでピンクのネオンの部屋にいたはずなのに。私はさっきのリアリティありすぎる現実が一瞬にして夢へと遠のくのを感じる。 固い。 …
連載小説『シュガーカヴァードリアリティ』 第1話 1.ふたの回転 マンホールのふたが回転している。まだ回転している。斜めにずれず、ふたが円の状態で、ぶおんぶおん回転している。こうじっと見ている間、まだ回転している。もういいだろう回転は。 この路…