にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

虚構日記2020年9月9日(水曜日) "アンダーグラウンド"

久しぶりに体調が良い、というか軽い躁状態だったので行動力の化身。

なので2ヶ月借りっぱなしになっていた11冊の本を返すために図書館に行くことにした。

図書館に行くためには、15分ほど歩き、電車に乗り、それから地下鉄に乗らなければならなかった。

地下鉄が図書館駅についた。

地下鉄図書館駅は薄暗い。蛍光灯の明かりは闇に飲み込まれている。

剥き出しのパイプからポタポタと地下水が滴り落ちている。

私は本を濡らさないようにするために、なるべく水滴を避けながら歩く。

向かい側から、ガスマスクと黒いコートを身につけ手にカナリアが入った鳥籠を持った人とすれ違う。

より深いところにある地下鉄の乗り換えに向かっているのだ。

より深いところにある地下鉄の駅では有毒なガスがたまに噴き出ている、その噂は絶えない。

オオサカメトロはその噂を否定している。

それでも一度現出した恐怖はなかなか消え去ることはない。

カナリアが鳴いている。

しかし「グランシャトーヘイラッシャイ、グランシャトーヘイラッシャイ」と繰り返し鳴いていたのでカナリアではなくオウムの可能性もある。

 

7番出口にある大きな黄色いバルブを捻ってドアを開けるとそこは図書館だ。

入り口でアルコール消毒をする。近くにはアルコール消毒をした後にすぐに火を取り扱うことの危険性を喧伝するポスターがある。ポスターを貼ってあるセロテープは黄色く変色している。床にはタバコの吸い殻がいくつか捨ててあった。

2ヶ月延滞していたが、特に図書館側から怒られることはなかった。それが余計に怖かった。

もう何も借りないでおこうと思ったが、図書館を歩いているうちに4冊借りてしまった。

帰ろうとすると、窓口の眼鏡をかけた女性が「もうあとはないよ」といった。

びくっとすると、眼鏡をかけた女性は私に笑いかけてもう一度"もうあとはないよ"といった。

 

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虚構日記2020年9月8日(火曜日)

みなさんご存知のように、人間の中心部には夢を作るための原子炉のようなものがあるわけですが、それがメルトダウンしてしまった。

一瞬にして漏れ出る夢に包まれてしまった私は、夢の過剰摂取(ドリーム・オーヴァードーズ)で倒れてしまった。

夢の中で現実は次々と歪んでいった。

全ての直線は曲線に。

全ての鉄は粘土に。

夜は朝になり、朝は夕方になり、夕方は南極になった。

ペンギンたちが列を作って歩いている。

商店街に向かっているのだ。

商店街の肉屋はウィンドウに車のエンジンを並べている。

「全て揚げたてだよ!」と肉屋の店主の美輪明宏が叫んでいる。

ペンギンたちは肉屋のウィンドウに並べられた揚げたてのエンジンを買い込んで、その場で組み立て始めた。

そうして出来上がったのがF1(フォーミュラー1)。

そこに乗り込むミハエル・シューマッハ

ペンギンたちが無い親指を立てる。

そしてミハエル・シューマッハは走り出した。

栄光を、その手に勝ち取るために。

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虚構日記2020年9月7日(月曜日)

起きているのか、寝ているのかさっぱりわからない。

霧が立ち込めている中を歩いているようだ、と思っていたら本当に霧が立ち込めていた。

前も後ろも右も左も白い闇。

身体の動きで、体がどちらを向いているのかはわかる。でも、私がどこを向いているのかはわからない。

霧の中を歩いてみる。こけて、怪我をするのは嫌なので、恐る恐る歩く。

それでもどこにもたどり着かないし、どこにもいけない。

とりあえずその辺で座って霧が晴れるのを待ってみたが、それでもなかなか霧は晴れてこない。

せめてどこに座っているか確かめようと、そこを触って、なにかをわかろうとした。

いつも寝ている布団だった。

虚構日記2020年9月6日(日曜日)

月に何度かある鬱が酷くなる日が来てしまって、起きているだけで苦しい状態に。

とはいえ、やることがいくつかあったので、本を読んで脳を騙したり、イヤホンを耳に突っ込んでミッシェル・ガン・エレファントを大きめの音で流したり、すりおろしりんごを隠し味にしたカレーを作ったり、しまいには頓服の抗不安薬を飲んでなんとかやってたけども、いよいよ限界になってしまい、布団に横たわることしかできなくなってしまった。

 

 

その横たわってる間も苦しくて、何度ものたうちまわる。好きなラジオも音楽も本も映画も何の効果もない時間が続いて、最後はyoutubeにある足つぼマッサージの音声を聞いた。

人の声が一切入ってない、ただゴリゴリと足を押されているだけの音声。

それを聴きながらめをつぶった。

 

 

虚構日記だから、嘘も書こう。

起きると正座をしている猫がいて、私に「にゃー」と鳴いた。

それから猫は私の頭を優しく撫でて、そして部屋から出て行った。

私はその感触を命綱のように何度も思い出して、鬱の波がひいていくのをただ待った。

虚構日記2020年9月5日(土曜日)

二週間ぶりに全身の毛を安全剃刀で剃った。

美脚になった。

しかしこの美脚を私以外は誰も知らないんだなと思うともったいないと思った。

世界に知らしめていきたい、この美脚を。

 

しかし、美脚界ではそれほど美脚ではないという評価がくだされるのだろう。

私という人間のイメージからすれば美脚ってだけなので、美脚基準で見るとそうでもないってなるのだ。

そう思うとなかなか人は突出した何かを手に入れることはできないのだなと悲しくなってしまった。

悲しくなったあとに、私は足をじたばたと動かしたり、足をピンと張ったりした。

やはりそこには私にしては美脚があり、それは気分がよかった。