久しぶりに体調が良い、というか軽い躁状態だったので行動力の化身。
なので2ヶ月借りっぱなしになっていた11冊の本を返すために図書館に行くことにした。
図書館に行くためには、15分ほど歩き、電車に乗り、それから地下鉄に乗らなければならなかった。
地下鉄が図書館駅についた。
地下鉄図書館駅は薄暗い。蛍光灯の明かりは闇に飲み込まれている。
剥き出しのパイプからポタポタと地下水が滴り落ちている。
私は本を濡らさないようにするために、なるべく水滴を避けながら歩く。
向かい側から、ガスマスクと黒いコートを身につけ手にカナリアが入った鳥籠を持った人とすれ違う。
より深いところにある地下鉄の乗り換えに向かっているのだ。
より深いところにある地下鉄の駅では有毒なガスがたまに噴き出ている、その噂は絶えない。
オオサカメトロはその噂を否定している。
それでも一度現出した恐怖はなかなか消え去ることはない。
カナリアが鳴いている。
しかし「グランシャトーヘイラッシャイ、グランシャトーヘイラッシャイ」と繰り返し鳴いていたのでカナリアではなくオウムの可能性もある。
7番出口にある大きな黄色いバルブを捻ってドアを開けるとそこは図書館だ。
入り口でアルコール消毒をする。近くにはアルコール消毒をした後にすぐに火を取り扱うことの危険性を喧伝するポスターがある。ポスターを貼ってあるセロテープは黄色く変色している。床にはタバコの吸い殻がいくつか捨ててあった。
2ヶ月延滞していたが、特に図書館側から怒られることはなかった。それが余計に怖かった。
もう何も借りないでおこうと思ったが、図書館を歩いているうちに4冊借りてしまった。
帰ろうとすると、窓口の眼鏡をかけた女性が「もうあとはないよ」といった。
びくっとすると、眼鏡をかけた女性は私に笑いかけてもう一度"もうあとはないよ"といった。