にゃんこのいけにえ

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『黒い十人の女』を見た!

 『黒い十人の女市川崑監督。

 

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 10人の女と関係を持つTVプロデューサー。10人の女達はTVプロデューサーを殺そうと画策するが・・・

 といったあらすじを聞いたときに、一体どのようなストーリーを考えつくだろうか?

 「10人で力を合わせて殺そうとするのだな!」とか「10人が仲違いして事件が発覚するのだな!」とか「OUT的な展開になっちゃうのかな?」とかいろいろ考えると思う。というか僕はそんな風に考えながら見ていたけども、まさかこんな展開になる映画になるとは思いもしなかった!

 というわけで市川崑監督、和田夏十脚本による映画『黒い十人の女』の感想でございます。いやいや笑った。もの凄く笑ってしまった。キービジュアルが海辺でたたずむ10人の女達というものからは想像できないほどブラックコメディだった。

 まず10人の女をたぶらかすTVプロデューサーの風が素晴らしい。なんというナチュラルボーンプレイボーイだろうか。10人の女と関係を持つという、普通に考えてあまりに嫌らしい役柄なのに、全く嫌らしくないどころか、憎めない。こいつなら10人とそりゃ関係を持ってしまうだろうなと思わせる人間力がある。演じているのは船越英一郎のお父さんである船越英二。風というキャラクターに出会えただけでもこの映画を見て良かったなと思えたほどだ。

 そしてなにより伝えたいのは10人の女達のかっこよいこと。今見ても、現代的、いやむしろ現代よりも現代的な女性の描き方をしている。予告編では生活力溢れる女性と評されていたけども、今見る方がこの女性達の描き方はしっくりくるものだと思う。

 10人の女達の間には嫉妬や愛憎が渦巻いているのに、気がつけば奇妙な友情が芽生えていく様なんて「女子~!」となってしまった。女子が10人もいるので妙なきゃっきゃ感があるのもよい。特にいちばんきゃっきゃしているのが、中村玉緒。あの中村玉緒である。もう、この映画の中村玉緒ったらとにかくかわいらしいのだ。もう素敵。めちゃ素敵。俺も思わず勝新太郎の目線になってしまって「玉緒、めっちゃかわいいやん」って思ってしまった。

 岸惠子の美しさや骨折した岸田今日子のかわいらしさなど女優陣が軒並み魅力的に撮られているのも素晴らしい。黒い十人の女というタイトルだ、女達を魅力的に映さなくてどうする!って話だけども、この女優陣の美しさを見ているだけでほれぼれしちまいます。

 先日の『日本のいちばん長い日』でも使った言葉になってしまうけども、今作もグラフィカルな画面とテンポのよい編集に見ているだけでただただ心地よい。岡本喜八監督の暴力的なまでの編集テンポと比べると、もう少し流れるようなテンポ感というか、市川崑監督の編集のテンポ感ももう少し見ていってこの心地よさはなんだろう!と調べてみたいなーと思ったりした。

 モノクロの映像なんだけども、全編とにかく陰影の付け方が絵画的で画面をみているだけで多幸感。白眉は中盤のTV局でのシーン。がちゃがちゃとした機械がリズミカルに映し出される編集に、シンゴジラの編集を思い出したりした。こんなところにも源流があったのだなあ。

 さて、物語はTVプロデューサーの風を殺害する話になっていくのだけども、どうやって”殺す”かが肝になってくる。思わず膝をうってしまった。なるほどこうやって殺すのか!あまりに現代的な殺人に「うおお!」と唸りました。

 ここで問いかけられる「現代人」の問題はほぼ50年以上経つ「現代」でも通用する。いや、むしろ今の方が納得するのではないだろうか。「働く」ということ「社会」に属しているその手足をもぐという恐ろしい結末・・・。といいつつ、なんか現代だと「ええ生活やんけ」となってしまうのかもしれないのは、この時代よりももっと忙しくなってしまったからかもしれないというまた別の社会側面が出てきそうだけども。

 でも、まああまりに現代的な結末には感嘆致しました。凄いよ脚本の和田夏十さん!

 今見ても遜色全くない、ブラックコメディの大傑作。途中、ゲストで出演しているクレージーキャッツのシーンですら超かっこいい。全シーン、決め絵の連発。そしてテンポのよい編集。これ以上何をもとめようか。いや何も。男と女と車があれば映画は撮れると言ったのはゴダールだったか。男が一人に女が十人いればこんな映画が撮れてしまう!素晴らしい映画でした。

 個人的には邦画ブラックコメディとして団地ブラックコメディの大傑作『しとやかな獣』と二本立て上映でぜひとも見たいと思ってしまいました。

 この映画もぜひまた見返したいな。

 大好き!

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