にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

『人狼』、『日本のいちばん長い日』を見た!

人狼沖浦啓之監督

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 見ている最中ずっと心の中のたかじんが「男と女・・・」とつぶやき続けていた位には渋めの男と女の悲しい物語。赤頭巾の話をモチーフに、描かれるのは獣としてしか生きられない男と愛を求める女のラブストーリーで、そしてその愛は初めから「悲劇で終わる」と観客に告げられているという残虐安心設計。昭和30年代の東京舞台に(ドイツ統治下という架空の歴史線を辿った日本らしいけども)男と女、暴動と鎮圧、地上と地下、弾薬と爆弾、暗躍と内戦が描かれる。

 原作・脚本が押井守なので、端々に押井守節が出てくるけども、それほどアクが強くないのは監督が沖浦啓之だからなのかもしれない。演出には神山健治も参加している。

 プロダクションI.Gが最後に制作したセルアニメとのことだが、作画のことに詳しくない私でもはっとさせられるシーンの連続だ。冒頭のデモのシーンの群衆の動きの違いや、火の生きているかのように燃える動き。後半では撃たれた人間が、ある一線を超えた瞬間に「魂」が抜ける瞬間を描写していて素晴らしいと感じた。

 愛とかどうとかわからないけども、ここではないどこかに行きたいという感情はわかるものであるし、その思いを感じるのがデパートの屋上遊園地のが胸に刺さる。どこかに逃げて変わりたい。しかし若者達の愛は大きな組織の内戦に潰されてしまうのだ。

 昭和30年代の風景の描写の素晴らしさ、そして対照的なほどかっこよすぎるデザインのプロテクトギア。語りどころは人それぞれに変わってくるのだなと思うほど、噛み応えのある映画だった。

 

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『日本のいちばん長い日』岡本喜八監督。

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 シンゴジラの元ネタ映画とも言われるこの映画を、シンゴジラ公開から2年経ってやっと鑑賞。素晴らしい映画だった。玉音放送が流れるまでの24時間を舞台に、様々な人々が交錯する。前半は会議に会議を重ねていき、後半はクーデターの発生と鎮圧が描かれる。1945年8月15日に終戦したことは知っていても、何がそこで起きていたかは知らない。終戦するということだけでもこれほどまでに大変だったとは。まさしく日本のいちばん長い日だ。延々と終わらない討論と玉音盤を巡る攻防に手に汗を握った。

 登場人物も多く、一度では把握が難しい物語であったが、それを一気に見ることができたのは岡本喜八監督の演出力によるものだろう。グラフィカルな構図にコマ単位でカットされたという編集力。スタイリッシュな演出によって、今でも新鮮な気持ちで見ることができる、言い方は不謹慎だが、そんなかっこいい映画であったように思える。

 史実を元にしているとはいえ、結構血みどろな展開もあり驚いてしまった。特に三船敏郎演じる阿南陸軍相が切腹するシーンは目を見張る。

 玉音放送が録音されている最中、飛び立っていく特攻機。クーデターを起こす若者が持っている書物。誰もいない中ばらまかれるビラ、それを拾う親がいない子ども。細かな描写であるが、戦争という狂気の世界に潰される者達の目線が見終わった後では強く残る。

 始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しいといわれる戦争。その戦争が終わる瞬間を描いた2時間半の力作。これから毎年夏になったら見たいと思うような作品だった。

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