にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

『チェイサー』を見た!

私事だけども、というかここに書いてあることなんて100%私事なんだけども、休職することになってしまった。

いわゆる心の風邪というやつになってしまったらしくて、ほとんどの日を部屋で過ごしている。
何するにしても疲れ切っておりまして、一事が万事「へぇ・・・へぇ・・・」と息を切らす始末。
その癖、友人と会うと楽しくなるもんだから、友人の前では「どっひゃー」と騒いで「あー元気そうやん」と言われ、あーそうかなーと思うも、いざ仕事だよーとなると体が重くなる。
非定型ほにゃほにゃと言うてしまうのは簡単ですが、いわゆる屑です。はい。
皆様、耐えることができるものに耐えることができず、そのくせ遊ぶときは人一倍。
なんていうか難儀な人間で。
というわけで、私は会社に行くこともできず、一日横になり続けている。
何にもできないので、植物のような生き方をしている。
そんな僕を見かねて今度母がやってくる。
申し訳ないと思う。
この間実家から帰ったばかりなのに。

 

『チェイサー』の感想。


ナ・ホンジン監督の「チェイサー」を見た。

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「チェイサー」を見るにしても、疲れ切っているので15分に一度休憩を取る始末。
もう、体がついていかない。映画見るにしても。集中力が持たない。それよりも体力がない。
でも、見た。一日かけて見た。

 

デリヘルの元締めをやっている元刑事の男。
その男の悩みは所属しているデリヘル嬢が次々と消えることであった。
てっきり金を持ち逃げしたか、嫌になって逃げたか、そして本部へ送るお金が消え頭を抱える日々。
そんな頃、客から電話がかかるも、出勤できるやつは1人もいない。
仕方ないので熱で寝込んでいるミジンを怒鳴りつけて出勤させる。
ミジンはシングルマザーで7歳の娘を持つ。
仕方なく出勤するミジンを娘は心配そうな目で見ていた。
そして客と出会うミジン。
ポロシャツを着たどこにでもいるような普通の30代の男に見えた。
しかし、そいつこそ頭のねじがぶっ飛びまくった快楽殺人犯であった・・・


というのがあらすじ。

で、まあ、これくらいの前情報で見ていたのですが、それでよかったなと。
いや、まさかこんな展開に、あんな展開に・・・。

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というのも犯人は開始30分で捕まってしまうのですよ。
あらあらあら!とびっくりしてしまった。
開始30分で犯人は警察署の中。
おいおいどうすんだい。と思っていたら、ここから消えてしまったミジンを追いかける話になるのです。
というのも、犯人は「どこで」犯行を行ったかがわからない。
どこにミジンはいるかわからない。
そしてミジンは既に瀕死の状態であることが観客には知らされている状態で話は進んでいきます。
そんなミジンを探す元刑事の男。
そしてひょんなことからミジンの娘もつれていくはめになってしまった。
最初は「なんでこんな目に」と思う男であったが、ミジンの娘と共に捜索するにつれ彼の中の眠っていた良心も火が点く。
「なんとしてでも、ミジンを娘の元に送り届けねば!」
そして男は走る、足で走ったり、車で走ったり、とにかく走る。
探せミジンを!助けろミジンを!

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そんな男の前に立ちふさがるのが快楽殺人者の男、そしてもう一つが地形であります。
この映画の舞台になっているのはソウルのプクアヒョンドンという場所。
この映画を見た人すべてが印象に残ると思う地形なんですよ。
何しろその坂と路地の数!
街一つが巨大な迷路のようになっている。
道は狭く細い。
そして坂はあちらこちらに伸びている。
そもそもの元刑事と犯人が出会うきっかけになったのも、この細い道のせいでもあり、そして元刑事の男を悩ませ続けるのも、そして犯人が逃げおおせるのもこの地形のせいでもあるわけです。
坂道サスペンスもしくは路地サスペンスもしくは入り組んだ地形サスペンスが見たい方は絶品な映画ではないでしょうか。

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ナ・ホンジン監督の映画は「哀しき獣」を以前に見て、その際も感じたのですがよくよく考えるの「なんだそれは」というツッコミどころ(この言葉は嫌いですが)があるのです。
しかし、そのツッコミどころってのはどうも監督自身は100も承知な気がするのです。
むしろスタッフには「ここおかしくないですか?」ってつっこみを入れられたとしても、多分ナ・ホンジン監督は「でもこっちの方が展開もやばいし映画的にも面白くなるやろが!!」とビンタしていると思うです。
勝手な想像だけども。でも、ナ・ホンジン監督は手は早そうな気がする。
ビンタとかうまそう。
というかフィジカル暴力シーンがマジ多め。
ありとあらゆるフィジカル暴力が詰まりまくってる。
殺人鬼が使うノミと金槌を使った殺人は身の毛がよだったし、コミュニケーションの一環かよってくらい主人公は何かにつけてすぐ人をたたくし、何より最高なのはパイプ椅子ノックアウトシーン。
あのムーブの華麗さは一見の価値ありなので是非見てほしい。

最初の方で15分に一度休憩を入れなきゃ見れなかったってのはそれほど体力を使う映画だからってのもあるんですけども、逆にいえばそれほど力強い映画なのです。
打楽器のビートが印象的な音楽に走りまくる登場人物。ぶれまくるカメラにテンポのいい編集。殴る蹴る当たり前!痛みが伝わるようなフィジカル暴力の数々。スタッフ・キャスト全員がハイ状態で作られたような映画でした。

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終盤、あまりの展開に声を失ってしまいました。
結末も決して甘いものとは言えません。
ラストシーン、そっと子供の手を握る男の向こうには街が広がっています。
その街は殺人鬼の男が狂気を垂らし、広がっていった街です。
そして元刑事の男はその街で屑のような生き方をしていた。
しかし、走り回り、失い、それでも戻ってきた男は狂気から脱出できたようにも思えます。でも、目の前にはあの街がまだあるのです。
あの闇と狂気が広がった街が。
脱出できた安堵感と、空っぽになってしまったような虚脱感を抱えながら映画は終わっていきます。
僕が思えるのはこんなことに巻き込まれたくないなと考えることだけだったのでした。

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