朝である。
そりゃもう朝である。
朝にも関わらず、私は先日の夜から起き続けていた。
最近、私は寝ても寝てもいい夢を見ることがない。
今日の夢は突然宝塚に出る夢であった。男なのに。
私は恐怖のあまり、ちかくの紀伊国屋書店に逃げ込んだ。その数秒後には床が抜け私は数千の書物と共に地中深くへと落ちていくのであった。
不安からか寝れない。
スマートフォンのアプリはそんな寝れない時間も一切退屈しないように、時間をただ潰すためだけのゲームを私に提供してくれる。
数枚のパネルを一枚にまとめるパズルを私は数十分やり続け、そして虚しさに襲われた。
私は何をやっておるのだろうか。
寝れないから時間を潰し、そして虚しさにおそわれる。この見事なまでの独り相撲に私は苦笑いをこらえることができなかった。
私は妄想する。
いつの日にか、猫が売り物の豆腐に爪を立てて行く場面を。
私は妄想する。
いつの日にか、風鈴の音がする部屋の中で、そうめんを茹でている自分の姿を。
私は妄想する。
にゃあと鳴く猫に豆腐を分け与えている自分の姿を。
私は妄想する。
そんな姿をみた奥さんが「猫好きね」とぽつりといって、肯定するでも否定するでもなく、「うう」と声をもらすところを。
私は妄想する。
そして二人で茹でたそうめんを食べることを。
こんな妄想が何の役にたつのだろうか。
いやたつことは無いのだとおもう。
それでも私にはこんな時間の方が本当は愛おしくて大事なのではないかと、考えている。