読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

にゃんこのいけにえ

映画と音楽と本を中心にいろいろと。

マンダムでも男の世界でも北斗の拳の作者でもない「ブロンソン」

ニコラス・ウィンディング・レフン!!(挨拶)

このとても長い名前の監督が撮ったドライブ(2011)はとても妙ちきりんな映画であった。

全編美意識に溢れていて決めに決まった映像、そして唐突に始まるえげつないバイオレンス。BGMは80年代っぽくて、主演の男は変なサソリのジャケットを着こなしている。どこを切り取っても変な映画で、見終わった後はなんとなくどんな顔をすればいいのかわからないの状態に陥ったのですが、不思議なもので時間を経るにつれてこの映画のことを何度も思い返していた。


Kavinsky - Nightcall (Drive Original Movie ...

↑この音楽が流れるOPのかっこ良さよ。

なんだかんだでレフン監督作品のことが気になっていたのだ。やだ・・・最初は全然気になっていなかったのに、何この感情…恋?それとも心筋梗塞

 

そんな中久しぶりライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルの映画評論コーナー「シネマハスラー」のドライヴの回を聞き返していると、レフン監督作品だと「ブロンソン」がいい!と宇多丸さんが大絶賛していたのでついつい借りてしまったのでした。

というわけで「ブロンソン」のお話。

 

ブロンソン [DVD]

ブロンソン [DVD]

 

あらすじ

子どもの頃から粗暴だったピーターソンは19歳の時、郵便局強盗をして施設に入れられる。そこでも彼は何かと看守たちに喧嘩を売り、その度に独房に入れら れることを繰り返す。やがて出所した彼は、同名の俳優にちなんでチャールズ・ブロンソンなるリングネームを名乗るボクサーになるが、またも事件を起こして 刑務所へ。34年間の刑務所生活のうち30年を独房で過ごし、いつしか“英国で最も有名な犯罪者”として知られていく。(引用元 wowow)

       
       
       

ここから軽いネタバレあり。

 

英国で一番有名な囚人の悲喜劇!有名になりたい!という漠然とした思いを持ち、何の考えもなしに暴力をふるう男。それがブロンソン。まあ本当に何の考えもなしにどんどん暴力を振るう。学校で、街中でそして刑務所で・・・。そんなブロンソンさんですが、刑務所暮らしを苦だと思っていないんですね。

「刑務所はホテルや!」と言うてるくらいなんで肌に合ってるのでしょう。

まあ、肌に合っていても暴れまくるのがブロンソン。もう内なる衝動に突き動かされまくってます。

なんでそんなに暴れまくってるの?なんか訴えたいことがあるの?とずっと見ているのですが、どうやらそんなこともない。

野心も中身もない男であると劇中でもばっさり切られています。それが元でブロンソン氏フラレてしまう上に、せっかく出れることになった刑務所に逆戻りしてしまいます。

看守を人質に取って、要求はなんだ!と聞かれても答えることが出来ない。ただ暴れたいだけ…。なんなんだブロンソン!もうブロンソンも自分自身が見えなくなってもがき苦しみます(そして看守をしばく!)

そんな中、刑務所の活動の一環で芸術と出会い自らの内を絵で表現することを覚えるのです。ブロンソン氏意外なことに絵で表現するということに才能を見出すのです。

正直僕は「なるほどここで芸術を通じて、暴力でしか社会とコミット出来なかった男が、芸術という言葉を持つことで社会とコミットするのね!いいはなシーサー!」と思っていたらそんなことなかったぜ!

結局その芸術的な才能を見出してくれた芸術家の先生もしばく。最後はその芸術家をしばりあげ、ピエロのように色を塗り、その姿を見てブロンソン氏(全裸黒塗り中年男性)は「俺の最高傑作だ」と言い、ふるティーン姿で看守たちと戦いボコボコにされるのでした…

この姿にブロンソンはどうしようもない暴力衝動に突き動かされる自分自身こそが、この俺なんだ!と認めたんだなーと思いまた無謀にも看守に挑む妙に美しい姿に見入ってしまったのでした。

しかしその後、この一種感動的にすら感じられる物語のクライマックスの後、独房というには小さすぎる格子の中で傷だらけになり、みっともない姿を晒しながら笛の音のような息を吐いているブロンソンの姿、そして看守が扉を締めて映画は終わるのです。まるで少しでもブロンソンに感情移入した観客を突き放すように。

あまりにも強烈な男の人生であった。ブロンソンどうかしてるぜ!とレフン監督に突き離された私はエンドクレジットを見つめながらそう思うのでした。

 

 

見終わった誰もが言う事であろうがトム・ハーディが凄すぎ。

トム・ハーディは「インセプション」と「ダークナイト・ライジング」のノーラン作品でしか見たことなかったですが、そりゃ今ブレイクするわ…と納得してしまうほどの演技でございます。

特に「ダークナイト・ライジング」のベイン様は確実にこのブロンソンを意識している。ブロンソンから妙な明るさを取り除いたのがベイン様だと思う。

というかベイン様ビギンズですよ!多分あの後に中東で何やらするんですよ。影の軍団と。多分。

映画好き!と言いながらまだキューブリック監督の時計じかけのオレンジ見てない…。いろんな評を見ていたらどうやらその作品っぽさもあるらしく見てみようと思ったのでした。

シンメトリカルな画面構成好きにはたまらんと思います。あといちいち画面が決まってるのもいいですね。なんでスピーカーの上で待機しているだけの看守をここまでかっこ良く見せることができるんだって話ですよ。

 

ドライブのレフン監督らしく全編通して異常な美意識と選曲のセンス。

80年代ディスコなサントラもダサいのかそれとも超クールなのかその境目でタップダンスしているようで素敵。


Pet Shop Boys - It's a Sin - YouTube

 

ペット・ショップ・ボーイズが流れる精神病棟。奇妙なダンスに脳がゆらゆら。

 

 

正直、全編乗りきれたかといえばそうではなく、手放しで褒めて人に勧める作品かと言えばそうではない。

ただドライヴと同じく唯一無二な作品であることは間違いなく、この作品が大好きで大好きで仕方ないという人がいるであろうことも想像出来ます。

ので、ドライヴが好きだったもしくは気になって仕方ない、そんな人は勿論おすすめですし、トム・ハーディが好きって人にもおすすめ、とにかく変な映画が見たいっていうサブカル女子にもおすすめ、うん、なんだかんだでみんな見ればいいんじゃないかな。好き嫌いわかれる作風だけども、好き嫌いわかれるなんてのは見ないとわからないですし。

というわけでおすすめです。