にゃんこのいけにえ

両目洞窟人間さんが色々と書き殴ってるブログです。

短編小説『ロマンティック消滅』

 私のロマンティックは数年前に死んでしまった。音もなく死んでいったから、当分の間は気がつかなかった。私は気がつかぬ間にロマンティック未亡人になっていた。ロマンティックは私の元から去ったのだ。

  「井上さん、彼氏いないんですか?」はいはいはいーきたよこの手の質問。と、会社の後輩の高木さんから言われた時も「うん。まあねー」と受け流す。ロマンティックが死んでしまった私には彼氏なんていない。というかそもそもいない。

 好きな人は昔いた。笑い声がロバート・デ・ニーロそっくりだったデ・ニーロくんのことが好きだった。大学時代のことだ。後輩の男の子だった。私はデ・ニーロくんのことが好きだったけども、デ・ニーロくんは私のことが好きではなかった。

 「井上さんは違うんです。お姉さんって感じなんです。彼女じゃないです」と二、三回抱かれた後に言われた。じゃあお姉さんを抱くんじゃねえよ。何、タブー侵してんだよ。神に背いてんじゃねえよって思ったけども、あっはい、わかりましたーって引き下がってしまった。

 だってデ・ニーロくんのことが好きだったので、好きな人のことは一番優先したかった。それが、私のことが嫌いというのが一番優先すべきことなら、そうしましょう。はい、しましょう。ってことで、私はデ・ニーロくんから身を引いた。

 あの頃まではまだロマンティックは生きていた。でも、あのらへんから、ロマンティックはだんだん息しなくなっていって、就活を経た頃には完全に心肺停止。

 そして、就職してからは消えてしまった。

 宇宙の藻屑になった私のロマンティック。

 ロマンティックが完全消滅して早数年。私はロマンティック無しでも生きてはいける。

 

 

 

 高木さんに彼氏がいないということを伝えると、高木さんは「えー!もったいないー」と勝手に損得を図られて、絶対作った方がいいですよー!とわいわいやられて、気がついた頃には合コンの頭数に入れられていて、私はつぎの土曜日には合コンに向かっている。

 嫌だなあ。という思いが浮かぶ。

 でも、断らなかったのは、私だってロマンティックを生き返らせたいという気持ちがあったからだ。

 ロマンティックが消えてから、それでも生きていけたけども、それはなんとか一人でやっていけてるって意味で、本当は私だってロマンティックでドラマティックな世界に浸りたいのだ。

 私の今の生活はロマンティックでもドラマティックでもない。

 何にもない生活。 

 空気。

 生活というより空気。

 それを楽しむのには限界があった。

  だから、あわよくばって気持ちがあった。誰かにロマンティックを蘇生してもらいたい。

 誰かとドラマティックな日々を作り上げたい。

 


 「杉山先生知ってる?そう。ハイゾーーンの。アニメ見てた!?詳しいねえー!えっ、ファン?まじで!?俺さ、杉山先生の編集で。そうまじで。ハイゾーーンの1話から関わっててさ。杉山先生とは、もう編集者と作家って関係を超えて、友人、いや、親友かな?もうそんな関係なの。杉山先生がいい話が書けた時は俺も嬉しいし、杉山先生が煮詰まってる時は俺も悲しい。だから、俺って、もはや杉山先生なの。うん、同化しちゃってんだよね。ははは」

 と目の前で週刊マンガ雑誌の編集者だという男は早口で話し続ける。私はずっと引きつった笑いを浮かべながら、聴き続ける。

 高木さんともう一人の一緒に来た女の子はずっと「すごーーい!」「えー!本当ーー?」と相槌をタイミングよく入れ続ける。

 そのタイミングがあまりにリズミカルなので、編集者の話は熱気を帯びていく。

 ぶわわわわわわわ。

 ぶわわわわわわわ。

 昔、羽の綺麗な鳥はその羽を広げてメスの鳥に求婚すると聞いた。

 じゃあ、編集者にとって綺麗な羽は「ハイゾーーン」と「杉山先生」なのだ。

ぶわわわわわわわ。

ぶわわわわわわわ。

 私たちは今、求婚されている。

 編集者はちらりと私を見る。

 品定めをするような目。

 しばらくして、彼は私を見なくなる。

 私は彼のように綺麗な羽を持っていないので話す事もない。だからただただ彼の綺麗な羽を見続けた。そしてそれからはみんなの綺麗な羽を。

 どこかへ行った旅行の話。過去にやった凄い出来事。こんな人が友人にいて。凄い景色。遠い夢。こんなことを思ってる。渾身のジョーク。

 全てが私の向こうを通り過ぎていく。

 私はどの話もできなくて、ひたすら聴き続けた。私は透明人間になった気分だった。

 この場にいる誰もが私のことなんて必要なくて、この場にいる誰も私のことなんて気にしてなくて。

 いてもいなくてもおんなじだ。

 形式的に連絡先だけ交換して、形式的に挨拶だけやってきたけども、でも、何も起こらない。

 私のロマンティックは蘇生されることない。

 

 

 

 


 次の日、高木さんが昨日の合コンの感想戦を私に話しかける。あの人はああでしたよね。こうでしたよね。あの編集者の人、暑苦しかったですよね。

 沢山溢れ出る他人への評価の数々に私は気圧されてる。

 他人のことをどう思っているかのグラデーションが高木さんは細かいなと思った。

 私はそんな風に思えないから、高木さんは凄い。

  高木さんはロマンティックが死んでなさそうだ。どうやったら死なずにすんだんだろう、私のロマンティック。

 


 

 それから相変わらずロマンティックが死んだ日々が続いて、それでも生活は続いていた頃に突然デ・ニーロくんから連絡があって「久しぶりに会いませんか」なんてきて、私は悩むがそれでもかつて好きだった人だったから私は再び会うことにする。

「お久しぶりです」

 デ・ニーロくん。かつて私が好きだった人。

 


  久しぶりに会ったデ・ニーロくんは相変わらずのロバート・デ・ニーロみたいな笑い方をして、相変わらず私のことをちゃんと見て話してくれる。

 私はそれが楽しい。私は透明人間になってない。

 自分の羽を見せびらかすような話をしないから、デ・ニーロくんの話が好きだったことを私は思い直す。 かつて好きだった人。

 だから私はこの前の合コンの話をする。

 デ・ニーロくんなら、わかってもらえると思ったからだった。

 一通りの愚痴を言う。

 後輩の女の子に誘われて行ったこと。

 でも羽の見せびらかし合いに疲れ果てたこと。

 私のロマンティックは死んだままだということ。

 

 


 「井上さん。それはどこかで選り好みしてるんじゃないですか?」

 一通り話を聞いた後のデ・ニーロくんからの強いパンチに私はよろめく。ロマンティックが死んだなんて言って、私はただ選り好みをしていただけだったの?私は選ばれる立場だってことを忘れて選り好みしていただけ?

 ロマンティックが死んだ、それでもドラマティックな日々を過ごしたいとか言いながら、本当に遠ざけていたのは私自身だったの?

 はあ?え?わけわかんない。え?理解できない。

 


 落ち込み混乱する私の手をデ・ニーロくんが繋いでくる。無言で私を見つめるデ・ニーロくん。

 「井上さん…」とデ・ニーロくんは私を見つめて呟く。

 

 あ、気持ち悪い。

 デ・ニーロくんが気持ち悪い。

 手を離してほしい。

 かつて好きだったデ・ニーロくん。

 でもそんな人に手を繋がれても、もう気持ち悪いとしか思えない。

 これも選り好みしているの?

 違う。

 単純に気持ち悪い。

 このタイミングで手を繋いできたデ・ニーロくんが気持ち悪い。

 手を繋がれてもロマンティックは復活しない。蘇生しない。

 かつて好きだった人は、"かつて好きだった人"に本当になってしまった。この瞬間なってしまった。

 私は「あー、だめだ」と言って、手を離して、立ち上がってお金を置いて立ち去る。

 後ろからデ・ニーロくんの呼び止める声が聞こえるけども無視をする。走り去る。

 私は逃げ去る。

 ロマンティックなんてどうでもいい。

 とにかく気持ち悪いから逃げる。逃げる。逃げ去る。

 


 

 「昨日はすいませんでした。」ってLINEがデ・ニーロくんから入ってるのを既読スルーして、私は私の生活に戻る。

 もうロマンティックは蘇生しないんだ。って私はさとる。

 私のロマンティックはどこかで死んだのだ。本当に死んでしまってたんだ。

 そしてそのロマンティックは誰かによって復活するとかそういうことじゃないのだ。

 選り好みでロマンティックが復活しないのなら、もうそれはそれでいい。

 私は見知らぬ誰かによってロマンティックを蘇生させなきゃいけないほど、ロマンティックに困っているわけじゃない。

 羽の見せびらかしも、かつての好きな人も、私には必要ない。

 

だから、生きてる。まだ生きてる。ロマンティックがなくても生きてる。

私にはロマンティックは必要ない。

ありがとうロマンティック。

かつての私の生活をドラマティックにしてくれて。

 でも、今はさようなら。

 復活することはあるのかな。

 多分ないでしょう。

 誰かに復活してもらえるのを待つなんて、それはとても悲しいことだ。

 私はロマンティックなんて、もう追い求めずに生きていく。

 ロマンティックもドラマティックもない世界を生きていく。

それがなくても生きてやる。

私は私で幸せになる。

もしその過程で、ロマンティックが復活したらその時はこころよく受け入れよう。

でも、それまではさようなら。

 もう二度と帰ってこなくてもさびしくない。

 私のロマンティックは消滅してしまった。

 私はロマンティック消滅以降の時間を、生きている。

 さようなら。さようなら。

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短編小説『愛なき世界』

 私は私の地獄を生きている。という言葉を思いついてほえほえほえとなった私は、布団の中から動きたくなくて、布団というドリームホームから動きたくなくて、それでも朝はやってくるので動き出さなきゃいけない。
 目覚めた45分後には電車に乗っている。イヤホンを耳にぶっさして大音量でマイ・ブラッディ・バレンタインのラブレスを聞いている。があああああああとギターの音がまるで夢の続きのようで心地よい。つり革を持ちながらでももう一度眠れそうだ。がああああああああ。
 さらにその45分後には私は会社のデスクに座っていて、パソコンを開いている。頭の中ではまだマイ・ブラッディ・バレンタインのギターの音色ががあああああああって鳴っているけども、私はそんな顔を一つ見せずにメールチェック。
 おはようございます、だの、ありがとうございます、だのをうまく使いこなして、発注業務をいちにさんしと朝からこなす。
 もう3年もやっていれば、ちょいちょいちょいとできるのだ。頭の中でラブレスを流すことだってたやすい。お気に入りの曲はsometimesって曲。がああああああってギター。クローズマイアイズ。フィールミーナウ。がああああああああ。
 すると、隣の席の杉山さんがいつまで経ってもやってこない。
 私は私の仕事で夢中になっていたから、というかラブレスに夢中になっていたから気がつかなかったけども杉山さんがやってこない。 すると、突然、上司各位がざわつきはじめる。
 そして私の元に山野さんがやってきて「杉山さん、飛び降りたんだって」って連絡がはいる。ほえ。となって、さすがにラブレスを流すのをやめる。


 まさか自殺するなんて、とか、あんないい人が、とかおきまりの言葉をみんな並び立てる。
 山野さんも「なんで、杉山さんがなんで」と今にも泣き出しそうに私に言う。
 私にはわからない。
 私も杉山さんが死んで悲しい。
 しかしまさか自殺するなんて、なんてそんなのどうして言えるんだって思う。
 私はラブレスを頭の中でがあああああって流しているから耐えることが出来ているけども、ラブレスを聞いたこと無い人が、どうやってこの時間を耐えているのか私にはわからない。
 だから杉山さんが飛び降りたことに私は全く疑問を持たない。
 私は私の地獄を生きている。杉山さんも杉山さんの地獄を生きていたのだ。多分そうだろう。そうに違いない。


 私はいつも通り昼ご飯を食べている。
 でも山野さんは全く食べる気がしないという。「だって杉山さんが亡くなったんだよ」と言う。杉山さんの死と山野さんの食欲に何の相関関係もないはずだ。だから食べたらいいのにと思う。
 でも、山野さんは食べない。だって杉山さんが亡くなったから。
 みんなの顔も暗い。その顔を、杉山さんが生きているときに向けておけば良かったのにと思う。
 私は、杉山さんと隣の席だから喋るくらいで、仲がよかったわけではない。杉山さんが死んだのは悲しい。とても悲しい。
 でも杉山さんが死んだからって、自分の心の一部が死んだように振る舞うのはどうかしている。
 それはエゴだ。エゴダンス。エゴ踊り。えらやっちゃえらやっちゃよいよいよいよい。と私は私のエゴを踊る。

 その日、一日、社内は葬式みたいな空気が流れていて、電話の音はその空気を引き裂く。後は笑っちゃだめな空気が延々と流れている。
 息苦しい。
 私はトイレに入って、個室の中で、目一杯の笑顔を作る。
 不思議なもので、笑顔を作ると心が軽くなる。
 そのことにきがついたのは浪人生の頃で、私は意味も無く勉強中ずっと笑っていた。
 そうじゃないとやっていけなかったし、そうすることで心の負担を減らしていたし、あの予備校の空気に対抗するにはこうするしかなかった。
 そうだ、あのときの予備校の空気もこんな風だった。
 だから、私は目一杯笑う。杉山さん見てる?私、今目一杯笑ってるよー。


 定時がやってきて、それから30分ほど残業をして私は帰る。
 外に出るとちょうど夕日が沈みかけていた。
 私は今日も私の地獄を生きた。地獄を生き抜いた。
 杉山さんは自宅のマンションから飛び降りたそうだった。
 もう、耐えれなくなったとか。
 山野さん経由でいろいろ聞いた。どこから情報を仕入れてくるかわかんなかったけども、山野さんは杉山さんの死について興味があるようで、たくさんのことを私に話した。
 でも、そんなのはどうでもよかった。
 私は業務を終えて、外にでて、夕日を見ながら、今日も生き抜いた。
 イヤホンを耳にぶっさして、ラブレスを流す。
 再びやっとラブレスが頭の中で鳴り響く。
 がああああああああああ。
 杉山さんにはラブレスがなかったのだな。
 杉山さん、ラブレスを探そうよ。
 愛無き世界だとか言うけれども、同じ邦題がついた音楽はこんなにも美しい。
 「死ななくてもよかったのに」
 私は気がつけば呟いている。
 死ななくてもよかった。
 そう。何にも死ななくてもよかった。
 杉山さんは死ななくても良かったし、山野さんは杉山さんの死について興味を持つべきじゃ無かったし、みんなは悲しんでいる様子を過度に見せなくてもよかった。
 なんでも、やりすぎだ。
 深く、深く、のめりこみすぎた。
 私は、私の地獄を生きている。
 もし、ラブレスがなかったら、私も死んじゃうのだろうか。
 死ぬのは嫌だな。痛そうだし。でも痛みって一瞬なのかな。そしたら死ねるのかな。なんて考えている。


 朝が来る。また地獄が始まる。私は布団から抜け出したくないななんてまた考えている。マイスイートホーム。行きたくないななんて思って。ああ、この瞬間を杉山さんは耐えることができなかったんだなって思い当たる。
 それから私は45分後には、電車に乗るはずだけども、まだ布団の中にいる。
 それからさらに45分後には会社についているはずだけどもまだ布団の中にいる。
 それから、3時間後には山野さんと昼ご飯を食べているはずだけども、布団の中にいる。
 それから、それから、たくさんのそれからを過ぎ去っていって、私はずっとずっと布団の中にいた。
 私はその間ずっと頭の中でラブレスを流していて、私は私の地獄を生きていて、杉山さんずるいなあと思いながら、それからを通りすぎていって、私は会社に行けなくなって、私は休職することになって、私は死を何度か考えて、私はそれでも生きねばと決意したりして、それからそれからをずっと通り過ぎていく。


 私はずっと地獄を生きていることに気がついていたけども、ラブレスを流すことでなんとか耐え抜いてきたはずだった。
 でも、だめなようでした。布団の中でがああああああって鳴り続けていても何の効果もありませんでした。
 杉山さんのことでみんな騒ぎすぎだなんて言っていたけども、私が一番、一番ダメージを受けていたみたいだった。
 なんで、先に降りちゃったんだろう。
 杉山さんずるくないですか。
 それじゃ、ラブレスを頭の中で流しながら頑張ってる私が馬鹿みたいじゃないですか。
 そうだ馬鹿だ。私は馬鹿なんだ。
 馬鹿だから杉山さんが死んだ日も平然を装うふりをした。馬鹿だもの。
 馬鹿だから私は達観できていると勘違いしていた。馬鹿だもの。
 馬鹿だ。馬鹿。馬鹿。
 ということにやっと気がつけたのは布団の中で3ヶ月がすぎたくらいで、髪の毛はぼさぼさで、化け物みたいになっている。
 それからさらに三ヶ月はあっという間にすぎる。

 「杉山さんって同僚がいて、その人が飛び降りたんですよ」ってカウンセラーに話す。
 カウンセラーはうんうんとうなずく。
 そこで私はやっと涙がぽろぽろと溢れてきて止まらない。
 杉山さん、杉山さん、すぎやまさあああんと泣く。
 それほど仲良くなかったけども。
 それほど話していないけども。
 それほど好きじゃ無かったけども。
 それでも、死ぬことはなかったよ、杉山さん。
 私まで、地獄に耐えきれなくなったじゃないか、杉山さん。

 というわけでまだ、当分の間は布団の中で過ごしている。
 がああああああってラブレスを流している。
 ラブレスに収録されているsometimesという曲を口ずさむ。
 クローズマイアイズ。フィールミーナウ。
 瞳を閉じて、思いを巡らす。
 杉山さん、どうして地獄から降りちゃったの?
 何も死ぬことはなかったじゃない。
 杉山さん、私は今、凄く寂しい。
 仲良くなかったけども、寂しい。
 とても寂しい。
 なので、ずっとずっと、あなたのことを考えている。
 そんな人がいたっていいよね。
 そんな風に思ったっていいよね。
 クローズマイアイズ。フィールミーナウ。
 があああああああああああああああああああ。

 

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エモめな写真を見てほしい 神戸編

 BABY~君だけを見て~君だけを見てえっへ~導かれ~導かれっえ~なななな。とtofubeatsのBABYを口ずさみながらやってきたのは神戸。
 1年前の星野源オールナイトニッポンで神戸を代表するトラックメイカーtofubeatsがゲストでやってきたときに「イスズベーカリー」のミルクフランスがめっちゃ美味しいという話をしていて、うわっ絶対に食いてえ!!となって早1年。
 その間に休職やらになってしまった私は関西の実家でぼんやりと過ごしていた。
 その時に「あっ、今日は体調いいし、神戸に行こう」と神戸はイスズベーカリーに行くことにしたのでした。

 イスズベーカリーの本店はJR三ノ宮駅から徒歩5分ほどの場所にあって、昼時もあり結構な人で賑わっていました。
 さがすとミルクフランスはそこにあり、あっという間に確保して、会計を済ませて適当なベンチに座って食べてみると、うわっおいしー。ミルクの優しい甘さに舌鼓をYOSHIKIのドラムのごとく打ち鳴らしてしまいました。

その後も、ぶらぶらと神戸を探索したり、8番館という喫茶店に入って、一緒に行った後輩と生きづらいの~って話をしたり、最後は海を見に行ったりとなんだか休日(休職しているので休んでいる日々は休んでいる日々ですが)のような一日でした。


そんな日のエモめな写真です。

 

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そして相変わらず動き回った翌日は死に絶えていました。
体力ゲージがすぐに0になる日々、終わって欲しい。

 

シンドロームからのセンチメンタル過剰状態

 佐藤哲也の「シンドローム」を読んでいたら、昔の、本当に昔の片思いを思い出す羽目になってしまって27歳男性は喫茶店で気がついたら煙草を3本を吸って、頭がくらくら。
 昔のことを思い出すと基本的にあのときああしていれば、となってしまうのが世の常だけども、昔の片思いに関しては未だに何をどうしていれば正解だったかなんてわからない。


 片思いという状態は熱病に浮かされたも同じで、苦しみとダンスっちまうものだけども、その上、たまにとてつもない多幸感が押し寄せてくるもんだから、たまったものではない。

 たまったものではないのは、そんな熱病の相手をしてくれた当時の片思い相手の方々だと思うけども。
 だいたい、毎回、たわいもない会話で恋に落ちては、非精神的な状態に入って迷妄を繰り返していた、とシンドロームからのインスパイア文章。
 あの当時に戻ってもうまくやることなんて多分できないんだろうなと思ったりもする。
 過去は思い出の中ですら、修正は不可能だ。
 だから、物語の中で過去に戻りたいというのがはやるのかもしれない。あのときに今の自分で戻れたらうまくやれるのになんて。

そんなことないのにね。

 


 私が好きだった方々、今元気になさっているだろうか。
 27歳男性みたいに、疲れ果てて闘病中とかじゃなきゃなんでもいい。本当元気でやっていてほしい。
 月曜日から、喫茶店に逃げ込んで本を読んで虚無に陥るみたいな人生だけは送って欲しくない。
 その上、こんな惨めな文章をぽちぽちと打つこともやらないで欲しい。
 私は今、何をやっているんだろうって気持ちでこの文章を打っています。


 にしても、好きだった人たちはみんなどこか掴みようがない人らばっかだった。
 でも、そんな人を掴めた人達もいて、どうやって掴んだろうってことを少し思ってしまった。
 ライムスター宇多丸さんは「俺みたいな人間は30歳からだから!」と言っていたらしい。
 私の人生も30歳までは助走期間だった~なんてネタばらしがあったらいいな。
 でも、そんないざ飛び立つ瞬間に何にも持ってなかったみたいなことになったら嫌だから、今のうちに少しでも多くのことを貯めておく。お金は貯めておけないから、なんか別の物で。

 

 何を書いているんだろう。
 とにかく本のせいだ。
 本のせいで、私は私の恥部を見つめることになっている。
 本は怖い。本を読むとき、同時に自分も読む羽目になってしまう。 隠していたこととか、見ないようにしていたこととか、こんな風な思い出のこととか、あーって叫び出したくなることとか。
 だから読むことって体力を使うんだな。
 使っちゃうもの。本は。

 

 30歳まであと、2年と少しです。
 それまでに変わることできるかな。
 少しでも貯めることできるかな。
 力をつけることができるかな。
 人生を進めることってできるかな。
 好きだった人たちに顔向けできるような生活が送れるようになっているかな。
 変わったねーなんて言われるようになれているかな。

 そんなことを喫茶店で思っています。
 センチメンタル過剰状態だ。
 よくないよ、これじゃ。本当。

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佐藤哲也『シンドローム』を読んだ!

 佐藤哲也『シンドローム』を読んだ!

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 突如、山に隕石が墜落!しかしその隕石は見つからない!もしかして地球外生命体なのか!徐々に高まる緊張感!覆い尽くす不安感!でも高校生の主人公は後ろの席の女の子のことが気になって気になって仕方なかった!!!!!
 というような小説です。

 

 思春期って時期はとにかく考えすぎる。とにかく考えすぎてしまう。これが片思いとなると、もうブレーキなんて効かない。
 相手の一挙一動、相手との距離感、メールの文面、全てが全て気になって仕方ない。
 とにかく相手の子と、僕との関係性が全てで、それこそが世界の全て。しかし世界の方が壊れ始めたらどうしよう。
 それも自分のあずかり知らぬところで壊れ始めたらどうしよう。
 その上、同級生はかっこいいところを見せ始めるし、どうしよう!

 この考えすぎる主人公の姿に僕は何度も「うわー」と叫びだしたい気分になった。考えすぎといっても彼は「やれやれ」系と言われるような精神的に高みに立つわけではない。(すぐあいつはだめだと考えたりするけども)だから余計にもう!となってしまう。ほんとうに考えすぎちゃうのだよ!徹底してもうとにかく考えすぎる!

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 久保田葉子という後ろの席の女の子のことが気になっているのに、最初は恋に落ちるのは非精神的だなんだの言って、全く僕は気にしてませんよ~みたいな顔もする。でも、そんなことを考えている時点で、恋に落ちてるんだって!気がつけよ!と思うけども、そんな私の気持ちは知らずに考え続ける。
 そして世界の崩壊も徐々に徐々に進行する。ゆっくりゆっくりと進行する。それでも主人公は女の子のことが気になって仕方ない。同級生の行動が気になって仕方ない。自分と女の子の距離が気になって仕方ない。僕の方が久保田と距離をつめたと勝手に思い込んだりしている。
 おい、それは一人相撲ってやつだ!って思うけども、思春期で考えすぎる主人公は気がついていない。
 気がつかないうちに、ある日、世界は決定的に崩壊してしまう。

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 後半、世界が崩壊してからの100ページ超は、もうめくる手が止められない。なにせ、触手をしゃーっとやる宇宙人VS高校生だ。
 高校生なので、なんの力もない。宇宙人を倒す能力なんてない。
 右往左往するのみだ。
 そんな時でも、主人公は久保田さんのことが気になっている。
 そんなときでも、気になっている。
 もうそんなときじゃ無いよ!って思うけども、気になってしまう!
 だって思春期だから!そんな時期だもの!


 でもそんなときに決定的なことに、主人公は気がついてしまう。
 僕は主役になれないってことに。
 タイタニック号だったら二等客室の人間だと。
 一等客室でも、三等客室でもない、二等客室。
 B級映画だとすぐに殺されてしまうその他、大勢の人物だと。
 そのときに、あ、これは私のための小説だと感じた。
 ずっとずっと思っていたけども、ついに思った
 だって、私は主役になれない。
 迫り来る宇宙人を撃退することができない。
 好きな子を振り向かすこともできない。
 ずっとずっと考え続けているだけだ。
 そして同じ思いをする人がこの世界には沢山いるだろう。
 そんな人に向けて書かれた小説だ。


 作者の佐藤哲哉さんは不勉強ながらこの小説で知ったのですが、こんだけ刺すような若々しい小説を書いてらっしゃるので、めっちゃ若い作家さんかと思ってたら現在57歳と知って驚いた。
 もうなんで、思春期の頃の思考回路を描けるんだろう。覚えているんだろう。
 私がすっかりわすれかけていたあの混乱と自己弁護に満ちた思春期の頃の思考をこの小説で思い出してしまった。
 思春期の頃、混乱し続けていたって人に渡してあげたい。
 そして一緒に、そうだったよな!そうだったよなあ!!って言いたい。


 この不穏と思考に満ちた小説で、一瞬、ほんの一瞬だけ、自己弁護も混乱もなく、その場をありのままに描く瞬間がある。
 久保田さんと一緒に歩いて、一緒に昼ご飯を食べるシーンだ。
 本当に他愛もない会話、そして何かがあるってわけじゃないけども、でも、このシーンの特別感はなんだろう。
 好きな子とご飯を一緒に食べるってことの特別感をこんな風に描かれたら、私はもうノックアウト。
 私、忘れてたなあ。こういう感情忘れていたなあ。
 ロロの三浦さんが好きだってのも納得。ここはロロです。端的に言えばロロのいつ高です。
 なのでいつ高好きにもぜひ読んで頂きたい一冊です。

 西村ツチカさんの挿絵も素晴らしい。(そういえばロロのいつ高のビジュアル担当は西村ツチカさんだ!!)
 もう素晴らしい以外に何も言えないタイプの挿絵。
 久保田さんがまあかわいいんだ。線がすくないのにかわいいんだ。 そしてはっとする瞬間に差し込まれるビジュアルの良さったら。 この小説の良さを相当ぶち上げてると思うの。

 映画で言えばスピルバーグ版『宇宙戦争』のような雰囲気がありますので、あの映画が好きな人もぜひ。あとは『クローバーフィールド』とか。要するに全貌がわかんない系が好きな人にはたまんないものがあります。

 

 この小説は私が書きたかったと何度も何度も思った。
 だって宇宙戦争を高校でやるってアイデアに、その上笑えて、心にぶっ刺さって、心底はらはらして、とにかく超フレッシュでって、嫉妬するしかないじゃないか!
 あーもう、超面白い青春SF小説でした。
 本当大好き!!

 

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)